7話 納品2日前
家で仕事を始め、気づけば太陽が昇り、朝を迎えていた。
美月は咲良に会って話をした後に帰ってから、Xの残した作業に手をつけ、自身の置かれた状況が非常にまずいことに気がついた。
なんとXは本当に何もしてなかったのである。そして、その作業量はとても数日で終わるものには見えなかった。
要は咲良にかっこつけてる場合じゃなかったのである。
さらに、自分だったら堂々と告白すると言っておきながら、実は勇気を持って告白をしたことが、美月にはなかったのである。
何カッコつけてたんだ。
しかし、そうは言ってもお客様相手の仕事であり、打ち合わせで遅れは許されないと言われ、上司のZが対応可能と伝えている手前、
何かしたら仕上げないと責任問題になってしまう。
そして、美月はなんとかしようと徹夜で仕事をするはめになったのだ。
しかし、まだまだ鬼のように残項目が残っているため、少なくともその日はX, Zに作業を分担してもらうように依頼することが必要だった。
美月は早めに会社に着き、残項目の分担案をまとめていく。
徹夜のために若干意識が朦朧としていたので、強めのカフェインで眠気を覚ます。
分担案をまとめていると、三人で分担してもまだ厳しそうなので、誰かリソースの空いている人に手伝ってもらうしかないと考えていた。
Zが出社してきて、半時間ほど経った後に席まで向かう。
Zに案件の状況を説明し、リソースを割り当てて欲しいと美月は依頼した。
「うーん。厳しいかな。美月ちゃんだけでなんとかならない?」
「空いてる人いないんですか?」
「うん、今季みんな忙しくて、今はみんな納品対応中だしね。」
「XさんもZさんもダメなんですか?」
「ごめんね。二人とも別案件の納品があるから。」
「結局、私に全て押し付けじゃないですか?」
「いや。昨日の打ち合わせで、美月ちゃんが主担当のように見えてるから大丈夫だよ。」
なんも、何も大丈夫じゃねぇーよ。◯◯。
美月は内心怒り狂っていた。しかし、X,Zの能力的にも厳しいことがわかってきていた。
しかし、他にリソースがないとなると、ちらりと優奈を見る。優奈は自身の成果物対応に忙しそうにしている。
優奈を困らせたくない、美月は思っていた。
そして、美月はその日無心に働いていた。なんとか終わらせる一心で、終わらない分量の仕事に手をつけていた。
美月は徹夜した体に鞭打ちながら、仕事をしているので、だんだんと判断能力が失われていた。
優奈は、無心に仕事をするロボットと化した美月の有様を見て、心配そうな表情をしている。
そして、定時前になっても状況が良くなっていないことに気づくと、優奈は美月の席に行き、助け舟を出そうとした。
「あの、美月さん、いくらなんでも美月さんは仕事を積まれすぎです。微力ですけどお手伝いさせてください。」
「うん、大丈夫だよ。任せて。」
何言ってるんだ私は。今にも潰れそうだろ。何見栄はってんの。美月は思った。
「そうですか。私は美月さんにいつも助けてもらっているから、美月さんの手助けがしたいです。」
そういうと優奈は寂しそうに自席に戻った。
美月は優奈の想いがうれしかった。そして朦朧とした意識の中で決めた。
この納品を無事に終えたら優奈に堂々と告白する。