23話 その後の咲良と凛子
四人が山小屋から出て、美月の無罪が証明された後、
咲良と凛子の日常に、平穏が戻ってきていた。
咲良は放課後に、凛子を校舎裏に呼び出していた。
咲良と凛子は校舎裏で向かい合っていた。
「一体何か用?」
凛子はいつものように冷たくも感じる口調で話す。
「凛子ちゃん、私の想いをもう一度聞いて欲しい。」
「ごめんなさい。」
「……。えー、えーーー。山小屋で私のこと好きって言ってくれたよね。」
「あれは……。少し混乱していたの。だってあの時の咲良って、美月さんだったし。」
「そ、そんな……。」
「今の咲良ってやっぱり、恋人っていうより、友達とか親友とか妹って感じで、なんか違うの。」
「……。」
咲良は、今回の告白はうまくいくと思っていたので、振られてしまったことに、
ショックを受け、俯いてしまう。
「咲良、そんなに悲しい顔しないで。」
凛子は慰めるように言った。
そして、咲良に近づき、咲良をやさしく抱きしめる。咲良は急に抱きしめられ胸の鼓動が高鳴った。
「でもね、今は違うんだけどね、大人で立派でしっかりした人になれたら考えてあげる。」
咲良は凛子の胸に抱かれながら、成長することを誓ったのだった。
時間は過ぎていき、気づけば凛子と咲良の二人も社会人として働き出す時が来ていた。
そんなある日、二人は咲良の姉の配偶者から、件の山小屋を借りた。
山小屋の中は、中学生だった当時の頃と変わりなく、
凛子と咲良は中学生の頃のことを思い出しながら、料理して、テーブルで一緒にご飯を食べた。
そして、ご飯を食べ終わると、山小屋の近くにある広場に星空を見に向かった。
広場から見る空には、一面美しい星々が輝いていて、
中学生の頃に二人で見たときの光景と同じようだった。
咲良は星を見ながら、凛子に近づき、手を握る。
凛子も咲良の手を握り返してくれる。
咲良は凛子に振り向くと、凛子も振り向きお高い見つめ合う。
月の光で照らされる凛子は美しい、咲良は思った。
「私と、結婚してください。」
咲良はプロポーズすることを決めていたのだった。
「はい。」
凛子はそういうと咲良に胸に抱きついた。
広場から山小屋への帰り道、凛子はフフッと幸せそうな笑い声をあげる。
「付き合うときは何度も振った気がするのに、プロポーズは一回で仕留められちゃった。」
「ふふー。やったね。」
凛子は山小屋の前に着くと、急に立ち止まった。咲良もそれに合わせて立ち止まる。
「あの入れ替わりって、良いことだったのかな?」凛子は確認する。
「良かったと思う。私はなりたい自分が見つかった気がした。それに、凛子の気持ちもわかったし。」
「じゃあ、もしあの入れ替わりがなかったら、今の私たちはここにいなかった?」
凛子は咲良を見つめる。凛子の不安げな表情をしていた。
「うん、ここにはいなかったかもしれない。」
「……。」
凛子は寂しそうに俯く。咲良はやさしく凛子を抱きしめて言った。
「入れ変わってなかったら、別の場所でプロポーズするだけだよ。」
凛子は顔を上げ、二人は見つめ合う。
「あんたねぇ、本当になんかキザっぽくなっちゃって。」
「ふふ。美月さんに似てきた?」
「そんなとこ、似なくていいのに。」
二人は笑い合い、山小屋の前で強くお互いを抱きしめあった。
その後も、二人はずっと幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。
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