22話 その後の美月と優奈
そこは、あるビルの一室にあるソフトウェア会社。
たくさんの人が詰め込まれ、今日も業務をこなしている。
その中の一つの島に美月と優奈がいた。
「美月さん、この案件ってどこから進めたらいいんでしょうか?」
「それは、まずは要件定義から始めないといけないよ。」
美月は優奈の席に近づき、手取り足取り、業務の進め方を教えている。
ふっとお互いの手が触れ合う。美月は優奈の顔を見ると、優奈は照れたような顔をしながら、見返した。
美月も少し照れた顔をし、照れ隠しに優奈の腰をポンと叩く。
美月は、左遷されたXの代わりに優奈の指導員になっていた。
美月が無断欠席した日に、優奈は部長にXとZの管理問題を突きつけたのだった。
X,Zが何も進めていない放置していた仕事を美月に任し、責任感のある美月が不眠不休で働いて対応したことを伝えたのだった。
さらに社員の美月が仕事のストレスが引き金となり誘拐犯として指名手配されたときに、
容疑者の美月もだが、他の管理職の責任問題にする必要があった。
その中で、X, Zの二人に白羽の矢が立ち、島流しになったのであった。
その後の彼らの行く末について知るものは誰もいなかった。
当の美月に関しても、本来であれば懲戒解雇されてもおかしくなかった。
しかし、報道中も優奈は、美月は絶対に犯人でなく無罪であると言い続けていた。
また、社内規定で、有罪判決が出るまでは懲戒解雇にできないと規定されていたこともあり、
美月の席は残されていたのだった。
そして、美月、優奈、凛子、咲良の四人が山小屋から出て、凛子の家に向かったその日、
美月は警察に連行された。
凛子も優奈も咲良も、関係者として同行することになった。
四人は口裏を合わせて、真実といくつかの嘘を話した。
凛子を連れ出すといったのは、咲良で、美月はただ単に山小屋に連れてくる手伝いをしていただけということ、
凛子の親に、山小屋に宿泊するという連絡は咲良がするはずだったのに、連絡をし忘れていたこと、
美月はただのやさしいお隣のお姉さんで、犯人と報道されて三人はすぐに出てこれなかったこと
美月の同僚の優奈が山小屋に駆けつけ、状況を整理して、外に出ることになったこと
と伝えたのだった。
誘拐された凛子は無傷で、健康状態も良好で、事件性はなく、被害届を取り下げることになった
結局、美月は厳重注意ではあったが、無罪が証明され職場に復帰することになったのだった。
そして、オフィスには優奈の指導員のXがいなくなっていたので、優奈の指導員には美月がなることになった。
「指導員で、恋人だね。」美月は優奈がうんざりするくらいそう言う。
周りの社員からも、あの二人はできているんじゃないかと噂されていた。
一度、美月は部長から、「優奈さんと本当に仲いいね。」と聞かれた時に、
美月は「付き合ってますから。」と冗談めいて言った。
すると部長は感心したようにうなづくと
「うん、やっぱり最近だとそういう制度も充足させないとね。」
と意味深なことを言った。
あとで、その話を優奈にすると、軽はずみにいうべきじゃないと美月は怒られてしまったわけだが、
次の月に会社が同性パートナーが配偶者として認められるようになっていたのだった。
そして、月日が過ぎ、二人は件の山小屋に来ていた。
そこで、ベッドの上で、二人は過去のことを思い返しながら笑い合う。
「で、結局、あの入れ替わりは幸運の兆しだったの?」優奈は美月に尋ねる。
「うん、もちろん良かった。何よりも大切なパートナーができたから。」
美月は自信満々に答え、二人は見つめ合い、軽く口づけをする。
「ただ、そういえば、一つ問題があった。」
「うん、何?」
「あの報道の影響なのか、周りの見る目が冷たいのが気になるかな。」
美月と優奈は二人笑いあった。
二人の左手の薬指にはめられた指輪がキラリ輝いていた。
その後も、二人はずっと幸せに暮らしましたとさ。