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2話 女の子の想い人

そこはある街にある中学校。

三階建の校舎の中には一年生から三年生までの生徒が詰め込まれて、今日も授業を受けている。

二階にある一年生の教室を覗くと教室内の後ろ側の席に座る女子生徒咲良(さくら)が、斜め前の席に座る同じクラスの凛子(りんこ)を眺めていた。

咲良は、女子平均の身長を持つ、おかっぱ髪で、勉強や体育は中くらいの成績の平均的な女の子である。

面倒見の良くやさしい姉を持ち、甘え上手なところがあり、年相応に可愛らしい顔つきをしている。

咲良に眺められている凛子は、高い身長と美しく長い髪持つ女の子。勉強でも体育でも学年トップクラスのクラスの中心的な存在である。

年齢よりも大人びた顔つきはしているが、その中に可愛らしさもあって、同学年からも上級生からも人気があった。


咲良は凛子を眺めながら、今日こそは告白すると決めていた。

咲良と凛子は中学校で初めて出会った。そして、咲良は凛子を初めて見たときに今までにない感情が芽生え、戸惑った。

凛子を見ているだけで、鼓動が早くなり、ただただお近づきになりたいと思ったのだ。


その後、二人はタイプは違っていたが、運良く席が近かったこともあり、時折放課後に一緒に遊びに行ったりする仲にはなっていた。

そして、仲良くなるにつれて、咲良は徐々に自身が持つ想いの正体に気づいていった。

咲良は想いを伝えるか迷ってはいたが、夏休みが終わった時に伝えることを決心していた。


しかし、夏休みが終わってすでに9月も半分が過ぎていたが、咲良は未だに凛子に伝えられないでいた。

毎日のように今日の放課後こそはと誓い、懸命に思いを書いた手紙(ラブレター)を握りしめる。

想いをどうやって伝えるか迷ったすえに、持っている漫画からの影響もあり、口下手で自信がない自分は手紙で伝えることにしたのだが、渡せなければ意味がない。


その日も、凛子はいつものように落ち着いた表情で授業を受けている。

その表情を見ているだけで、咲良は胸が高鳴ることを感じる。


そして、放課後になった。凛子は帰宅準備し終えると、スッと立ち上がり帰ろうとする。

咲良はその姿を見ると声をかける。


「あの、凛子ちゃん、」

「何?」凛子は何か訝しんだような顔をして答える。

「あのね、もし今日時間あったらなんだけど、付き合ってもらっていい?」

「ごめんなさい。今日はちょっと用事あるの。」

「そうなんだ……。」

「じゃあ、また明日ね。」

そういうと凛子は足早に教室を後にした。

咲良はその姿を見送り、今日もまた伝えられなかったことを残念がった。

どういうわけか、九月に入ってから凛子は用事と言っては足早に帰ることが多くなっていた。


咲良も凛子を見送った後に学校を出た。

凛子から誘いを断られ、気分的にも晴れなかったので、少し遠回りして、川沿いの道を歩くことにした。

まだ明るい時間なので、川に光が反射し、鮮やかに光り輝いている。

川を眺めながら、咲良はぼんやりと考え事をしていた。


私の誕生日までに想いだけでも告げたいのに。

いっそ靴箱に入れておいて。でも凛子ちゃん少し鈍感そうなところあるかもだから、冗談と思っちゃいそうだし。

でももし、気持ちが伝わって、本当に凛子ちゃんと付き合うことになっちゃったら。ふふっ。


咲良は、口元緩んだ。

そして、付き合ってからのことを妄想しながら、歩いていると気づくと知らない住宅街に入ってしまっていた。


咲良は立ち止まり、ここはどこかなと、信号についている地名の標識を見る

あれ、ここって?

地名を見て、咲良は驚いた。なんとそこは凛子の住んでいるマンションのある場所だったのだ。

咲良は、夏休み前に暑中見舞い出すからと凛子に住所を教えてもらっていて、いつか行こうと思っていたのでマンションの部屋番号まで覚えていたのだ。

ここまで来た以上は凛子の住んでいるマンションが気になり、探し回ることにした。


しかし、以外と範囲が広く、歩き回っていも見つからない。見つからないかもと思い初めていると、公園が目に入った。

歩き回り疲れたので、公園のベンチで一休みすることにする。

ベンチからふと顔を上げると、十数階はあるような一際豪華なマンションがあった。

そして、マンションの名前を見た。


「あっ、見つけた。」 咲良は呟いた。


咲良は公園のベンチに座りながら迷っていた。

ここまできたら凛子に会って、この公園で告白しても良いのではないかと思ったのだ。

しかし、事前にマンションに行くことを話してもいないし、そもそも凛子が部屋にいないことも考えられた。

さらに、夕方になり、暗くなり始めていて、もうそろそろ家に帰らないといけない時間にもなり始めていた。


咲良はカバンの中にある手紙を見た。それは夏休み前から書き出し、何回も書き直した想いの詰まった手紙だった。

その想いを胸に、咲良はマンションの入り口に向かった。

入り口の扉を開けると中はオートロックのドアがあり、ドア横のモニタの下にある鍵穴に鍵を指すか、数字キーから部屋番号を押して呼び出し住人に開城してもらうか

でドアが開くようになっているようだった。

咲良は勇気を出し、震える手で凛子の部屋番号を思い出し、入力する。

そして、呼び出しボタンを押そうとして、手が止まる。


凛子ちゃんは、私の想い迷惑じゃないかな。

受け止めてもらえなくて、振られたら今の関係ですら壊れちゃうんじゃ。


そう思うと頭が真っ白になってしまった。


「どうしたの?」咲良は驚いて後ろを振り返ると、仕事終わりの女性と思われる人がいた。

咲良が入り口の前にいると入れないのだろう。咲良はすぐに入り口から離れた。

するとその女性は鍵を鍵穴に挿れるとドアが開いた。

女性は入り口を通ると咲良に振り返った。


「もしかして、凛子ちゃんのお友達?」


咲良は気づけばうわーとマンションの外に逃げ出していた。

マンションの外に出ると、走って川まで戻ろうとした。


「ちょっと、どうしたの?」気づけば女性もマンションの外に出ていて、咲良の手が掴まれてた。

咲良はあわあわするしかなかった。

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