18話 戻りたい
私が凛子に咲良であると正体を明かした次の日、
目を覚ましたときには、凛子はすでに起きていて朝食の準備をしていた。
「おはよう。」私は起き上がり、寝ぼけたような声で凛子に挨拶した。
「まだ、咲良?」凛子は訝しい表情で私を見て聞く。
「うん、咲良だよ。」
私はそう答え、ベッドから出た。
私と凛子は凛子が用意してくれた朝食を一緒に食べる。
食べながら、今日することを決めた。
それは、美月が入っているはずの咲良に会いに、咲良の家に向かう、ということだった。
二人が一緒に会った時に、元に戻れるはずと思ったからだ。
朝食を食べ終わると、使った食器を洗う。
その後に山小屋を使わせてもらったので、部屋の中を二人で掃除した。
そこから、帰り支度をして、帰り支度ができた頃には午後になっていた。
私と凛子は山小屋を出て、麓に向かって降りていった。
山道を出て道路に到着すると、どこからか臨時放送の声が聞こえた。
「県警察です。昨日未明、XX中学校の凛子さんが連れ去られる事件が発生しました。
凛子さんは身長160cmくらいで黒い長髪の女の子で同中学校の制服を着ていました。
似ている人を見かけた方は、警察までご連絡ください。」
私は凛子と目を合わせ、山小屋に引き返す。
そして、ラジオを見つけ出し、ニュース放送を聞く。
放送の中で、凛子が誘拐されたこと、容疑者として美月が上がっていること、
美月はたくさんのおねロリ漫画を持っていたことが放送されていた。
「咲良、一つ確認したいんだけど、いいかしら?」
「凛子ちゃん、何かな?」
「あんた、私の母親に私の外出許可取ったって言わなかったっけ。」
「うん、言ったよ。でもね、取ってなかったんだ。」
「このあほー!」
私の致命的なミスで、美月を警察に追われる身にしてしまったのであった。
凛子も、現在捜索中であり、外に出るに出られない状況だった。
そして、私が町に出て警察に見つかると、美月が入っている咲良に会う前に連行されてしまうので、
美月を信じて、山小屋にいる私を探し出してくれることを信じるしかなかったのだ。