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16話 山小屋の恋話

私と凛子が無事に山小屋に到着したときには、

夜ご飯の時間になっていたこともあり、二人とも空腹だった。

腹ごなしをするために、山小屋にあったコンロで米を炊き、お湯を沸かしてレトルトカレーを湯煎して食べることにする。

幸いにも山小屋は設備が整っており、よく姉のいない時に料理していたおかげで特に問題なく、調理できた。

カレーをお皿によそい、私と凛子はテーブルに着いて夕食を取る。

夕食をとりながら、他愛もない会話をした。


「こんな山小屋があるっていいですね。美月さんの家のなんですか?」

「えっと、うん、そうだよ。」私は本当はどうなんだろうか?と思いながら返答した。

「へー。すごいです。」

凛子は感心したように話す。


カレーを食べ終わり、お皿を洗い終えると、当初の目的である星を見に行くことを提案する。

「じゃあそろそろ、ご飯も食べたし、星を見に行きますか。」

「はい、行きましょう。」

私と凛子は懐中電灯を手に山小屋の外を出る。

そして、昨日散策した時に見つけた近くの平地に向かった。

山小屋の周りは木々で囲われていたが、平地の周りは囲われてなかった星空一面を一望することかできるのだった。


平地に到着し、懐中電灯を消す。

すると、あたりは星の光で照らされた不思議な感じのする景観になった。

そして、見上げると数えきれないくらいたくさんの星々が一望できた。


「綺麗!こんなに星がたくさん見えるなんて。」

凛子は可愛くはしゃいでいて、私は星空よりも凛子の喜んでいることの方が嬉しい気がした。

二人で静かに星空を眺めていると、凛子が何か疑問を感じたのか、うーんと声を出す。

「そういえば、美月さんって星の種類に詳しかったですよね?」

「え!?」

「あの天の川を通っている三角形を構成する星々って何って言うんでしたっけ?」

「えーと、」

美月さんは詳しいかもしれないけど、私は詳しくないよー。

確か夏に出る三角形なら理科の教科書に書いてあったはずだけど。あれでも、今は秋だよね。それならー

「秋の大三角かな。」

「……。あー、そうだった気がします。」

私がそう答えると、回答に満足したのか、凛子はそれ以上聞いてこなかった。

なんとか誤魔化せたかな、私は思った。


その後も私と凛子は星空を静かに眺めた。静かな空間が二人を包んでいるようだった。

「星空を見ていると、何だかロマンティクな気持ちになります。」

凛子がポツリと呟く。

私は胸か強く高鳴ることを感じた。

凛子の側に近寄り、凛子の手を握る。

凛子は抵抗しないで握られていて、私を見つめてくる。

私はドキドキで頭がぼんやりしてくるのを感じる。


「キスしていい?」

あれ、段階飛ばしてないかな、私は言ってしまってから、そう思った。

「それは、、美月さんでもダメなんです。好きな人じゃないと。」

「凛子ちゃんに好きな人っているの?」

「いない、って言うと嘘になりますね。私本当は好きというか気になっている人がいるんです。」

私は息を大きくつき、心を落ち着ける必要があった。

凛子に好きな人がいたことに驚いたからだ。


「それは誰なの?」私は凛子に聞くしかなかった。

凛子は答えるべきか一瞬迷ったようだったが、返答した。


「咲良です。この前は逃げ出して、今日にも告白してくれた。」


……なんだってー。

「それはいつから?」

「あの子と出会ったのは中学生からですけど、多分初めてあった時にはもしかしたら。かわいいなって思ったんです。仕草とか顔つきとか。」

「へー。」えっ?私の顔が凛子ちゃんの好みだったの?

「ただ、そのあとに性格がちょっと合わないかなって思うときがあったんてず。

自信はないし、おどおどしてるしで。何より夏休み入る前くらいから明らかに私のこと好きで意識しちゃってたのに、我慢してそれを隠そうとしていたところとか。」

ゴホッ、ゴホン。私は噎せて、咳をする。


「美月さん、大丈夫ですか!?」

「うん、大丈夫。続けて。」

「それで、腹が立って、咲良に冷たく当たってしまってたんです。

咲良から遊びに行こうと誘われても、無下に扱って断って。本当は行きたかったくせに。

何でそうしてしまうのか、よくわからないんですけど、正直になれないんです。」

「そうだったんだ。」

今までの凛子の咲良に対しての行動を思い浮かべる。

そして、凛子から無下に扱われていたのは、凛子が素直になれなかったからだということを知った。

凛子ちゃんは私のことを好きだったんだ。私は私のままで良かったんだ。


星空を十分堪能した後、山小屋に戻る。

帰り道に私は美月として、凛子に謝ることしかできなかった。

「ごめんね、いきなり変なことしようとて。」

「いえ、でも、さっきの美月さんって、結構やばかったと思いますよ。」

「いやね、雰囲気がね」私は誤魔化すことしかできなかった。


山小屋に戻り、時間を確認すると、バスの終電時間に近づいていた。


「あの、そろそろいい時間なんで、私帰ろうと思うんですけど。」

凛子は美月にそう言うと帰宅する準備をする。

「そ、そう。」私は心寂しくそう言うしかできなかった。

「美月さん、バスまでの道がわからないんで送ってもらえますか?」

そう言うと急いで凛子は玄関に向かう。


「行かないで。」

私は気づけば、凛子の背中に抱きついていた。

「美月さん!?」抱きつかれた凛子は驚いた声を上げる。

「凛子ちゃん、お願い行かないで。私を一人にしないで。」

私がそう言うと、凛子は振り返り、私をじっと見つめる。

私の表情は暗く、涙ぐんでいるに違いなかった。


「あの、美月さん、聞かれる意味が伝わらないかもしれないんですけど、一つ聞いていいですか?」

私は小さく頷く。

「美月さん、あなたは本当に美月さんですか?」

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