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15話 凛子に会いに行く

山小屋で寝て過ごした次の日、窓の外から朝日が入り、私は目を覚ます。

その日も同様に特にやる気は出ないでいたが、咲良自身はどうなったのか気になった。

私(咲良)が美月の中にいるなら、咲良の中には美月がいるのではと思ったのだ。


となれば、美月は私を探しているにちがいない。

美月には仕事もあるだろうし、私とは違って早く元に戻りたいに違いない。


公園で、美月と会った日のことを思い出す。

美月は優しく頼りになるお姉さんといった感じで、私は美月に迷惑はかけたくなかった。

そうなれば話は早く、私自身も元に戻るために山小屋を出ることにした。


山小屋を出ると、そこはどこかはわかっていなかったが、開けた道を歩いていけば麓に着くと信じて、前に進むことにした。

道は平坦で歩きやすかったが、体は重く気分もまだすぐれなかったこともあり、重々しい足取りで進んでいく。


しばらく歩くと、舗装された道路が目に入った。

道路の看板に地名が書いてあったが、見知らぬ地名で場所はわからなかった。

さらに道路を道沿いに歩いていると、幸いにもバス停を見つけた。


バス停の停車駅を確認すると、離れてはいるが、知っている駅まで行くバスがあることがわかった。

しばらく待つとバスが到着し、乗り込み、駅まで向う。

そして、電車を乗り継ぎ、無事に咲良の住むマンションに辿りついた。


しかし、咲良の家はオートロックでないから、マンションの中には入れるのたが、

部屋の鍵が閉まっていた。どうやら姉の優奈も、美月が中にいるはずの咲良も出ているようだった。

合鍵は持ってないので、二人のいずれかが帰ってくるまで、しばらく待つことにした。


お姉ちゃんが、今の私を見たらなんて言うのかなー?とふと想像してしまう。

もしかして美月さんは美人さんだし、好きになっちゃったりして、ふふふ。


私は一人笑みを浮かべた後に、ふぅーと息をつく。

そして、ここ何日かでいろいろなことがあったと回想する。

空を見上げると、晴れ晴れとした空に小さな雲が点々とあり、見ているとふつふつと元気が湧いてきた。


元気が出てくると、もし美月が凛子に告白するとどうなるか、を想像し好奇心が湧いてきてしまう。

凛子は何かと美月のことを気にしていたし、憧れてもいたようにも見えた。

私は美月に迷惑をかけてしまうかもと、二の足を踏んでしまう面はあったが、

好奇心と気持ちを抑えきれずに、気づけば凛子のマンションに向かっていた。

それに、正直なところ、私は凛子に振られてしまった腹いせをしたかったのだった。



足早に凛子のマンションに向かったが、マンション前の公園に到着し時計を見ると学校はまだ終わっていない時間だったので、凛子が帰ってきていないことは想像がついた。

美月の部屋で待つことも考えたが、ポケットに美月の部屋の鍵らしきものは入っていなかった。

山小屋の中には鍵は置いてあったはずだが、美月の部屋に入ることを考えていなかったこともあり、見逃したのだった。

ないものはしょうがないので公園のベンチに座り、ぼんやりと凛子の帰りを待つ。

待ちながら、もしかすると咲良の姿の美月が現れるかもしれなかったので、公園で待つ方がが良いこと気が付いた。


そして、日は徐々に沈んでいき、夕方の時間になった。

凛子と咲良の姿はまだなく、私はじっと待つことしかできなかった。

すると、まだ空は明るかったが、街灯は点灯し始めていた。


道を見ていると、凛子が帰宅する姿が目に入った。

表情は何か嬉しそうで、良いことがあったに違いない。


これ幸いとベンチから立ち上がり、急いで凛子の元に向かう。

マンション前で凛子も私に気がついたようで、私に向かって丁寧に挨拶してくれる。

やっぱり美月に対しては礼儀正しいと、ムッとしてしまう。


「美月さん、こんにちは。何かご用ですか?」

「いや、ちょっとね。ところで凛子ちゃん、今日何かいいことあったの?」

「え!?な、何でですか?」

「歩いている時の表情がすごく嬉しそうだったから。」

「あー。そんな表情してましたか。」

凛子はそういうと照れたような表情になる。

普段の咲良には見せたことがない姿だったこともあり、私はキュンとする。


「ところで、これから時間ある?もし良かったら話を聞くよ。」

「あ、はい。この時間なら大丈夫ですよ。じゃあ、行きましょう。」

私に誘われたことが嬉しいらしくい、凛子は素直に快く付いてきてくれる。


学校で私が誘った時には、まったく時間とってくれなかったのに、と苛立つ面はあったが、

その前に凛子とどこで話を聞くか考える必要があった。

静かに二人切りになれる場所はどこかにないかと考え、良い場所を思いついた。


「近くの河原に行こう。」私は凛子に言い、河原に向かう。


河原に着くと、以前美月がしてくれたように、

自販機で二本のお茶を買い、凛子に一つを手渡す。


「で何があったの?」

「それがですね……。」

凛子は、以前公園で美月と話していて逃げ出した咲良に、校舎裏に呼び出されたこと、

そこで告白されたこと。迷って返事を休み明けに返すことを照れながら話した。

さらに咲良はまるで人が変わったかのように、積極的で堂々としていて成長していることを実感したと、凛子は話した。


私は凛子の話の内容を聞いて、にわかには信じられなかった。

咲良に今入ってるのは美月のはずだ。その美月がなぜ凛子に告白しているのだ?しかも今は咲良の姿で。

混乱しそうになるが、同時にふつふつと怒りを感じていた。


美月は堂々として積極的だったが、美月は私に、咲良には咲良のやり方があってそれで間違いなくうまくいくって言っていた。

ところが、今の凛子の話を聞いていると、結局美月は私の姿で美月のやり方を通して、うまくいっているのだった。

結局は私の性格や雰囲気ではだめなのか?そう思うと悔しさを感じた。


美月と中身が入れ替わるとうまくいくなんて。

待てよ、逆の発想で、今の私なら、外見が変わった今なら逆にうまく行ったりしないのか?


「そうなんだ。咲良ちゃんに告白されちゃったのか。何か複雑だなー。私も凛子ちゃんのこと好きなのに。」

私は気づけば美月の姿ではあるが、凛子を落としにかかろうとしていた。

「え?」

「ふふふ。かわいい妹のようってこと。」

「もう、美月さん、びっくりさせないでくださいよ。」

凛子はまんざらでもない感じで、照れながら返答した。

私は凛子の悪くない反応に、さらに積極的に行動することを決めた。


凛子を落とすためには、まずは二人っきりになれる場所に連れ出さないと。

「凛子ちゃんって、明日って休みだよね。綺麗な景色が観れる場所があるんだけど、

もしよかったら今から私と一緒に行かない?」

「綺麗な景色ですか?すごく興味あるんですけど、今からですか?夜遅くなるなら、母に連絡しないと。」

私は凛子に母に連絡されると断られそうで、なんとなくまずい気がした。


「ああ、大丈夫だよ」

慌てそうになる気持ちを抑え、私は堂々と答える。

「もうすでに、凛子ちゃんのお母さんには伝えてあるから。」

私は凛子ちゃんの母親とはあったことすらなかったが、そう答えた。


私と凛子は電車に乗り、バスに乗って、例の山小屋に向かうことにした。

凛子は戸惑い、不振に思いながらも、美月を信頼していたようで、付いてきてくれる。

ただ、さすがにバスで降りたところが、付近に数件の家しかないような場所だと知ると心配そうな顔をした。


「あの、ここで本当にあってるんですか?ここって山じゃないですか。暗くなってますし。」

「ああ、うんあと少しで着くよ。綺麗な星空が見れるんだ。」

「あー、綺麗な景色って星空なんですね。私星空観測って好きなんです。」

凛子は納得したようだ。私は凛子がこんなにちょろかったことに驚くとともに心配になった。


山道をしばらく歩き、二人は山小屋に到着した。

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