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13話 美月が犯人?

校舎裏で凛子に告白した次の日、私はその日も優奈よりも先に学校に登校した。

教室につき、教科書をパラバラとめくりつつ、凛子の登校を待つ。

私は返事を今日聞きたいと思っていたので、放課後に時間を取って欲しいと凛子に伝えるつもりだった。


しかし、朝会が始まる時間になっても凛子はまだ教室に来ていなかった。

担任の先生も遅刻と思ったのか、凛子の話を朝会の時にせず、一限目が始まった。

そして、お昼時間になっても凛子は来ておらず、その日最後の授業が終わった時も凛子の姿はなかった。

帰りの会になっても、担任は凛子の話はしなかったが、その日は不思議なことに、下校時に不審者に気をつけて、と言っていた。


凛子は単純に病欠か何かで休みだったと思う面はあったが、何か様子がおかしいと感じていた。

凛子から告白の返事を聞くためというよりも、凛子の状況を確認するために、凛子の住むマンションに向かうことにした。



マンション前にはパトカーが数台止まっていた。

私は嫌な予感しかしなかったが、玄関に着くと凛子の家の部屋番号を押す。

呼び出し音がなり、すぐにに通話状態になる。


「はい。」凛子の両親と思われる人から応答がある。

「すいません、凛子さんと同じクラスの咲良といいます。今日凛子さんが休まれていたので、配布されたプリントを持ってきました。」

実のところプリントは凛子の机の中に入れられていたので、わざわざ持ってくる必要はなかったのだが、

家に行く名目上の理由でプリントを持ってきていたのだった。

「……凛子ちゃんに……。わざわざありがとう。今玄関開けるわね。」

そういうと通話は途切れ、玄関のドアが開いた。マンションの中に入り、エレベータに乗って、凛子の部屋に向かった。


凛子の住む部屋の前に着くと警官達が数名ほど、部屋の前にいた。

気のせいか、よく見ると隣の美月の部屋の前にも警官が立っているようだった

こわごわと横を通ると、凛子の家の玄関の扉は開いていて、凛子の母親が立っていた。


「えっと凛子ちゃんのお友達なのよね?」

「はい、これプリントを持って来たんですけど、凛子ちゃんはいらっしゃいますか?」

「……。その様子だと何も学校では話されていないようね。」

凛子の母は苦しそうな顔をして、話すべきか迷っているようだった。

しかし、覚悟を決めたようで、私に向かって話し出す。


「凛子ちゃんは……。連れ去られてしまったようなの。」

私は昨日の今日の話であり、驚くしかなかった。


「そ、そんな、一体いつに?」

「昨日の夜に……。」私が昨日の放課後に会って話をしたあとなんだ。

「そんな、誰が……。」

「それが、まだわからないの。怪しい人はいるんだけど、どこにいるか検討もつかないの……。」

「そんな……。」


私は驚くしかなかった。

しかし一体誰が連れ去ったというのだ。

か弱い中学生を誘拐するなんて、そんな下劣で卑劣な。

まさか、今頃、凛子はとんでもないことに、、

想像すればするほど不安と心配が大きくなり、犯人に対してのイライラを抑えきれずにいた。。


「咲良ちゃん、ありがとうね。わざわざプリント持って来てくれて。」

「いえ。私は何も知りませんでした。」

「帰り道に気をつけて帰ってね。」

私は凛子の母親にマンションの前まで見送られ、咲良の家に戻ることにした。



家に着くと心を落ち着けるためにもテレビをつける。

テレビをつけると、美月の顔写真が出てきた。

「中学生誘拐事件、ソフトウェア会社勤務女性社員の凶行か!?」とテロップが出ていた。

誘拐された中学生の名前が実名報道されていた。それは、凛子だった。


凛子の誘拐犯人として、隣人の美月が容疑者であり、指名手配されていたのだった。


美月の家に家宅捜索したところ、部屋の中から女の子同士の本や、

女性社会人と女子中学生が恋人関係になっている書物やゲームが多数出てきたことも、報道されていた。

また、美月は仕事のストレスを抱えていたことも報道され、

コメンテーターからは、徹夜仕事で正気を失い、本性のロリコン性が現れ凶行に及んだと、コメントされていた。


同じ会社の人にも取材していたようで、声はぼかされていたが、

「とてもそういう人には見えませんでした。ただ仕事中に怒り出すことがあり、怖かった。怒ると何するかわからない人でした。」と話していた。

こいつ優奈の指導員のXだろ。適当なこといいやがって。


私はテレビの報道が信じられなかった。

確かに私はそういった本を持っていて、若干そういう性癖がないとは言い切れない面はある。

しかし、美月は私であり、今の美月に咲良が入っているからといって、咲良が凛子を誘拐するわけがない。

これは間違いなく冤罪だ、一体誰が真犯人なんだ。


私がそう思っていると、監視カメラの映像がテレビに映った。

それは、マンション前にある監視カメラの映像だった。

日の明るい頃に美月はマンション前の公園にふらっと現れ、ぼんやりと公園に座っている。

しばらく時間が経ち、陽が落ちてきて、画面が薄暗くなっても、美月はじっとマンション前を見ながら座り続けている。

そして、凛子がマンションに向かって帰宅しくる姿を見つけると、美月は急いで立ち上がり、

マンション前の凛子に話しかけ、そのままどこか二人で歩いて向かう姿がバッチリと映っていたのだった。


昨日に私が凛子に校舎裏で告白し、別れた後、

美月が凛子を連れてどこかに行ったのは明らかだった。


私が明らかに犯人じゃん……。なんてことになっているんだ……。

今美月の中にいるのは咲良のはずだが、一体二人はどこに……。

もしかして学校?いやさすがにないか。


どこにいるか考えていると玄関のドアが開く音がした。

振り返ると、優奈が帰っててきたのだった。

優奈の顔色は明らかに悪く、不安げな表情をしていた。


そして、リビングに映し出されるテレビ映像をじっと見る。


「美月さんが誘拐犯なわけがない。」優奈は独り言のように呟いた。

優奈は証拠映像を見ても、美月が犯人とは思っていないようだった。

私は優奈の美月に対しての信頼を嬉しく思った。


咲良が中に入っているはずの美月と凛子は一体どこにいるんだ?

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