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12話 凛子攻略

私が、会社の後輩で好意を持っていた優奈の妹である咲良になって二日目の朝。

夜にセットした目覚ましで目を覚ます。

手洗い場で顔を洗っていると寝ぼけ顔の優奈に会う。


「あれ、咲良がこんなに早くに置きてるの珍しい。何か目もぱっちりだし、なんか今日あるの?」

「ううん。学校あるだけ。」

「そう?ならいいけど。」

優奈は不思議に思ったようだったが、自身も寝ぼけており、それ以上は何も聞かれなかった。


優奈も咲良も朝が弱いようだったが、美月は朝に弱い方ではなかった。

どうも、元の美月自身の能力や性質が、今の体である咲良に継承されているようだった。

昨日の授業や体育でも、普段の咲良を超える活躍ができているのは、美月の運動能力が継承されていたからだった。

これが能力はそのままで過去(中学生)に戻るってやつか、と私は思った。


私は朝食を食べると、支度してから、カバンを持ち、玄関に向かう。

「じゃあ、先に行ってきます。」

ご飯をゆっくり食べている優奈に挨拶して、私は学校に向かった。


学校に着くと凛子の靴箱を探す。

凛子の靴箱を見つけると、私は一度は破かれたが修繕した手紙を靴箱に入れ、教室に向かった。


教室には誰もまだ登校していないようだった。

チャンスと思い、クラス内の張り紙や座席表を確認していく。

そして、ぽつりぽつりと他の生徒が入ってくるのに合わせて、席に戻り、凛子の登校を待った。


朝会が始まる数分前に凛子は登校する。

手には手紙はなかったが、何か難しそうな表情をして教室に入ってきた。

私は凛子をじっと見ていると、凛子は唇をキュッと結び、何か怒っている表情で私を睨み返す。


「凛子ちゃん、おはよう。」私は凛子を見つめたまま、穏やかに朝の挨拶をする。

「お、おはよう。」

凛子は私の視線に耐えかねたのか目をそらし、挨拶を返す。


「凛子ちゃん、靴箱の手紙、受け取ってくれた?」

「え!?」凛子はそういうとカバンを抱きしめる。どうやらカバンの中に入っているようだ。

「私、まだ諦めてないから。放課後にもう一度話させてね。」

「!?」凛子は咲良らしからぬ発言と堂々としている様子に驚いたようで、ほおを赤らめ口をポカンとさせていた。

私のその様子を確認すると、机から教科書を出して、一限目の授業の予習をするフリをした。


そして、その後は何事もなく、授業が終わり放課後になった。

足早に帰宅しようとする凛子の目の前に立つ。私は押し押しで攻めることを決めていた。

「手紙の話なんだけど、一緒についてきてくれない?」

「ごめん今日は忙しいの。」素っ気なく凛子は返答する。しかしそれは想定内だった。

「そこをなんとかお願い。とっても大切な話がしたいの。」

そう行って、私は手を祈るように組み、前のめりになり、凛子をじっと見つめる。

私の積極的な行動に凛子は押され後ずさりする。


「お願い。もう一度だけ、これが最後だから。」

「……。わかったわよ。」

渋々とと言った感じであったが、凛子に時間を取ってもらうことに成功する。

凛子はどうも押し慣れていないようだ。


私は凛子の手を取り校舎裏に向かう。お昼時間に屋上と校舎裏を見て回り、校舎裏には基本的に人気がないことを確認していたのだ。

二人が着いた時にも、案の定誰も人はいなかった。

手は繋いだまま、凛子に真剣な表情で振り返る。凛子は頰を赤らめ、困惑したような表情をしている。


「凛子ちゃん、付いてきてくれてありがとう。手紙の中って読んでくれたかな。」

「……。少しだけね。」

「そう。ならもう一度言うね。」

私は手紙に書いてあった内容を迫真を持って凛子に伝えようとした。

昨日に手紙の中の内容は、修繕している時に何回も読みなおしたので、完全に覚えていたのだった。


手紙の中の内容を伝えた後に、私は顔を伏せた。凛子との手はぎゅっと繋いだままだ。

凛子は黙って話を聞いていたが、凛子の手からは、緊張や胸の高鳴りのようなものを感じ取ることができていた。

数刻の沈黙の後、タイミングを見計らい、私は最後の締めをする。


「凛子ちゃん、私は、私は凛子ちゃんのことが大好きなんです。婚約を前提に付き合ってください。」

「こ、婚約!?」

凛子は驚いた声をあげる。

しまった、婚約を前提にするには中学生には早すぎたか、私はそう思い訂正する。

「ち、ちが、違わないけど、えっと婚約は置いといて、私とお付き合いしてくれないでしょうか。

凛子ちゃんと恋人同士になりたいんです。」

そう言うと、凛子と繋いでいた手を離し、目を瞑り俯く。後は凛子の返答を待つだけだ。


凛子はどう答えるのか迷っているようで、しばし沈黙していたが、ふぅーと息をつくと話し出す。

「咲良。一昨日に私が言ったこと、考えてくれたんだね。らしくない感じてきたのでびっくりしてる。」

私は顔を上げると、凛子のほおは赤らみ、微笑んでいた。

「咲良に想いを伝えられて、正直ドキドキしたし、うれしかった。」


「私もね、多分咲良のことが、気になってたところあったんだ。」

「……。」おお、これはもしや。

「咲良ってなんかほっとけなくて、妹のようにも見えるけど、前向きに進もうとするところもあって、目が離せないっていうか。

今日も前の時を反省してくれたんだよね。」

「……。」私はコクリと頷く。

「ふふ。ごめんね、困惑させるかもしれないけど、前の咲良の方が好きだったかもしれない。」

「え?」

「ごめん、返事は少し待ってくれる?ちょっと考えさせて。」

そう言うと凛子は私を残し校舎裏を後にした。

私は去っていく凛子を見送ることしかできなかった。


私は帰り道に、今日の反省をした。

凛子に告白し想いを伝えた後の凛子の反応は悪くなかったので、あの様子だと良い回答が期待できる、とは思った。

しかし、前の咲良の方か良かったと言われたことや、今日に回答もらえないことは心残りではあった。


私は凛子にうまく告白できたが、実際のところ、美月自身は今まで誰かに告白したこともなく、付き合ったこともなかった。

恋愛についての知識は、愛読していた百合漫画や百合小説、百合ゲームから主に得ているくらいだったのだ。

今回凛子に告白するための進行については、学生友達百合の知識を総動員していたのだった。


この調子だと、社会人に戻った時でも、凛子ちゃんのような美少女中学生を落とせるんじゃないかと、私は想像し一人不気味な笑みを浮かべる。

美月の家には社会人と女子小学生や女子中学生間の参考資料と言うなの書物が多数あったのだった。

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