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ムーヴ・べイン  作者: オリハナ
【2・魔法の流星群 編 (後編)】
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4・頑張る①

 

「ティムちゃん逃げてええええッ!」


 叫びに近いミントの高い声が、スクリーンを越えてティム達のいる部屋に届いた。だがその必死な声が耳に入る前に、ティムは一足先に背中から伝わってくる悪寒を感じ取っていて、反射的に振り返った。見上げた先にいたのはミジュウル・バイ・シュリープ――ティムが一番会いたくない相手だった。


 ――縺�縺励※縺上l窶ヲ窶ヲ縺溘�繧€縲√%縺薙°繧俄€ヲ窶ヲ……


「ひ、ひ、ひゃあああああッ!」


 ティムの恐怖心は一気に上昇。仲間がいることに安心していた矢先だったので、尚更だった。

 シュリープはティムを恐怖の深淵に陥れようと、ドロドロの手を出現させた。のっぽがジールにやったような、ちょんと軽く触れようなどという生易しいものとはワケが違う。獣が得物を狩るような勢いがあった。


 しかし幸いにも、背の高い亡霊と小さな獣人(ジュール)の間には随分と高低差があった。上から振ってきた攻撃はティムとベリィには当たらず、鼻の先スレスレのところでスルーしていった。


「ひええええッ!」


 ティムはビックリしてバランスを崩し、尻もちをついた。それがまた功を成して、液体飛ばしの攻撃を回避。ティムは震えて覚束ない手足に無理やり力を入れ、転びそうになりながらも扉の前から離れ、暗闇の世界へと飛び込んでいった。


「ハァー、ハァー。な、何とかティムちゃん、逃げる事が出来たようね」


 心臓を飛び上がらせた四人のうち、いち早く立て直したミントはひとまず安堵の溜息をついた。


「でも、どうしましょう。ティムちゃん、魔法も武器も持ってないから危険な事に代わりはないわ。相手はシュリープだし、分が悪い――って、もうっ! あんた達、いつまで引きずっているの! さっさと切り替えなさいよ!」


「うるせーうるせー! こちとら本気で心臓が爆発するかと思ったんだよ! お前と一緒にすんじゃねえ!」アッシュは(わめ)いた。


「――ッハァ、優兎(ゆうと)、ここはお前にパスだ。こっちからどうにか働きかけられないもんか試してみろ!」


「わ、分かった。やってみる」


 優兎は胸元を抑えながら立ち上がり、スクリーンに触れてみた。

 リモコンやスイッチの類いが出て来たらいいのに、と思いながら手探りでいろんなところを触ってみる。すると、それは期待から飛び抜けた反応を示した。


 なんと、画面上で指を滑らせる動作をすると、スクリーンが広がったのだ。


「な、何これ? どうなってるんだ?」


 動作に合わせて横にも上下にも広がる。触れる指を変えてみたり、二本・三本に増やしたりすると、また別のアクションを見せる。反応の仕方が突飛すぎて困惑する!


『レwェnエy3リアェレニーqゥアド→ラLawェイフェDmカュ←タeリャTマジォmyu……』


 手の平を当てると、今度は扉の飾りだと思っていた鳥が喋り出した。


「何か言ってるけど、これ以上やってもダメかもしれないな。言葉が通じないんじゃあどうしようも――」


 見限りかけたその時、魔法陣の形をした読み込み中のゲージみたいなものが表示された。ゲージが百パーセントまで溜まると——


『――サーチ、完了。記録内から近い言語を検索・採用しました。追加設定完了。もう一度やり直してください』


「ウソ! 会話が通じるようになったの? ()()()、凄いじゃないの!」


 ミントは画面に向かって褒めた。機械音声というより肉声に近いからだ。一方で優兎は、逆にこの適応能力の高さに不気味な気持ち悪さを感じてゾッとした。


「ねえ、開けて欲しいのだけれど、あなたどうにか出来ないかしら?」


『非常用エネルギーの残量が20%に低下しました。残り時間を計算しています』


「え?」


「は? 答えになってねえぞ。さっさと扉を開けろって!」


『記録内に、あなたのジュツモンと一致するものがありません。カンリシャの了承が必要になります。カンリシャの認証もしく、認証、認証、ニンショウもしくハエイショウコード……上書きしますか? 失敗しました』


『ジュツモン・バルテリックス・モラ。カジャダワラナセッツ・モラ。リベーティファ・に、失敗しまシタ。キ……トウ……ェにありまセン。もうワンリペート、やり……して……サネ……だサイ』


『ジュツモン・バルテリックス・モラ。カジャダワラナセッツ・モラ。リベーティファ・に、失敗シマした。記録に、あなた……ありマせせせん。もうワンリペート、……直ししししして……しネ……だあああああぁ~~いーーーー……』


「おいおい何だよこいつ! 通じてもこれじゃあ、ポンコツも同然じゃねーかよ」


 優兎の両脇からミントとアッシュが話しかけてみるも、返答は一方通行。一時は事態が好転するかもしれないと沸き立ったのだが、突破口を潰されただけだった。

 優兎の頭の中にクックックと(さげす)む笑いが響く。


『苦戦しているようだな優兎?』


(うえっ、ユニ……) 優兎は苦虫を噛み潰したような顔をした。(おかしな症状は治ったの? もしそうならユニも手伝ってよ)


『貴様らがカルチャーギャップにあくせくする姿は喜劇ちっくでなかなか見物だ。最後にはむしゃくしゃしたあげく爆破してみせれば上出来なのだが……おっと、ここの亡霊にも劣る魔力の持ち主に期待するのは酷か』


(ちんぷんかんぷんな説明を延々と語られるのもうんざりだけど、こっちはこっちで普通にムカつく……。楽しんでないで協力してってば!)


『知的生命体と傲り高ぶる存在がこのザマとは笑止千万。単細胞な考えしか思い付かんのか? うん?』


(それ、どういう事?)


 優兎は何か良いアイデアでもあるの? というふうにパッと明るい表情を咲かせた。ユニはフンッ、と笑みを含んで鼻を鳴らす。


『貴様らを取り囲んでいる壁を壊すという発想はないのかと言っている』


 次の瞬間、優兎はありったけの声で叫んだ。


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