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ムーヴ・べイン  作者: オリハナ
【4・金昏の遺産 編(前編)】
231/238

11・ナタリアの正体③(前編/終)

 

 ナタリアが去った後、学校は一時休校となった。ナタリアについての身辺調査が行われたところ、旧職員寮にて意識不明の副校長が発見されたのだ。


 学校側は生徒に不安を与えぬよう、「命に別状はない」、「不審者の犯行である」などと、事件の詳細をかなりぼかして伝えた。だがアッシュやジールが嗅ぎ回って入手した情報によると、副校長の体には無数の刺し傷と、無理やりくっつけたと思しき傷跡が残されていたという。ナタリアが教師として働く為に、利用されてしまったのだろう。癒しの魔法を悪用する事で、許可がいるような手続きをすっ飛ばし、堂々と新任教師として入り込んだわけだ。


「あの時の僕、間違ってたのかな」


「え?」


「こんな大きな事件が起きるくらいなら、僕、地球にいる時に大人しく捕まっておけばよかったのかなって。そんなふうに考えちゃうんだ」


 学校の屋上で、柵に腕を突いて語らう優兎(ゆうと)とシフォン。ちょうど金昏(リンド)が訪れているタイミングで、昼前の空は黄金に、暗い影を纏っていない広大な庭の植物や遠方に見える海面もまた、燦然と光って見えた。


「副校長先生の身に起きた悲劇は聞いたでしょう? 優兎君だって抵抗しようものなら、きっと無事では済まなかったわ」


「だとしても――」


「あら、魔法界で出会えた人達との縁を(ないがし)ろにするつもり? そんな気はないんでしょう。考えてもいいけど、(とら)われないで」


 風がふわりとシフォンの搔き上げた髪を(さら)った。空の色を絡め取って波のように揺蕩(たゆた)うそれに思わず見とれて、悩みがどこかへ飛んで行ってしまった。


「――これ以上、悪い事が起こらないといいな」


「そうね」


 再び景観の美しさに浸り始める二人。優兎は不安も何もかも忘れて、大切な人と過ごす今を大事にしようと思った。




 ――【4・金昏の遺産 編(前編)】 終――


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