1・シフォン④
「もじもじ君……過去にどれだけの人と接して来たかは分からないけど……もぐ。僕自身に関しては当たってるよな、間違い無く」
現在もぐもぐ君でもある優兎は、シフォンと子供達がボール遊びをしているのをぼんやり眺めながら呟く。昼食を平らげ、中庭に設置された回収ボックスにプレート皿や瓶を入れると、別れた友達二人を探しに行く事にした。手遊びする生徒、複数人で地面に数字を書き、石を置いて何かを競っている生徒、ベンチに座ってスケッチを嗜んでいる子を尻目に中庭を進み、校内へのドアに手をかける。
ノブを捻って半分開けた矢先。ドアの前で白い髪をした、小学生くらいの男の子が佇んでいる事に気がついた。うわ、危ないっ! 衝突すると思ってヒヤリとした優兎は、一度ノブを手放してしまったのだが、尚も開き続けるドアにハッとして、慌てて止めた。
「ご、ごめん! 人がいること、ちゃんと確認してなかった。怪我はないかい?」
片腕でドアを抱き込むという、不格好な体勢から後ろを振り返る優兎。男の子はドアを開けた時と同じ、穏やかな表情と後ろ手を組んだポーズで、体の向きだけこちらに合わせていた。
「怪我はないよ。真っ先に人の心配をするだなんて、お前らしいね」男の子は言う。
「いやあ、別にそんな事ないよ」
優兎はドアを慎重に閉めながら言葉を返す。おかしいなー、開ける前に人の姿なんてあったっけな? と頭を掻きながら、ドアのはめ込みガラスを直視する優兎。
「ん? さっきらしいって言った?」
遅れて男の子の言葉に疑問を抱いた優兎。初対面なはずの男の子は、優しそうな笑みを浮かべて近付いて来た。
「友達を探しているんだろう? 二人はこの先で暇を潰しているよ。行こう」
「この先……図書館にアッシュ達が? ――って、何で僕が二人を探している事を――わっ!」
頭の整理が付かぬまま、優兎は白髪の男の子に手を引かれていった。
ーー1・シフォン 終ーー




