守護星
「そなたが劉明か?」若い男が薄汚れた子供にやさし気に聞いた。子供は小さく頷いた。「私は劉埼、そなたの親戚じゃ」とやさしく微笑み「劉明は幾つだ?」と聞いた。
劉明は指を折り4歳である事を伝えた、「劉明は言葉を喋れぬのか?」と問うと、小さくまた子供は頷いた。
荒れ果てた屋敷の一室に座敷牢のような場所に劉明は居た。時々近くの農民が飯を差し入れる事しか出来ず、鍵もなく、長い間その場所に取り残されていたようである。
牢から出された劉明を劉埼は抱き上げた。「劉埼様がその様な事をせずとも、我々がいたします」と家来が言うと、劉埼は「そなたたちのような怖い顔した者では、劉明が怖がるではないか」そう言って笑い、「誰か湯を沸かせ、私が劉明を洗ってやろう」と言ってまた笑った。
その時劉明は劉埼を見て、牢の奥の方を指さした。
「誰か奥の部屋を見に行ってくれ」
奥の部屋から「ああ・・・これは・・・」という声が聞こえた、家来のものである。
「劉埼様、部屋の奥に女が死んでおります、それも随分前に死んだのではないかと。」家来が伝えると、「劉明、奥の部屋の女はそなたの母上か?それとも・・・」劉明は母上か?という所で頷いてみせた。
そして劉埼の腕から滑り降り、指で「医家」と書き、奥の部屋を指さす。
「劉明、文字は書けるのか・・・だが、母上に最早医家は必要ない、悲しい事だが母上は亡くなったのだ。」とまた劉明を抱き上げその腕でやさしく包み込んだ。