第98話 次の日
「ふぁぁぁ、、、久しぶりに良く寝た」
体を起こすと、部屋の窓から日の光が俺を照らす。昨日俺達はトラストに部屋を借り泊まらせてもらっていた。
「ふぅ、、、て、何故?」
俺の横にはセフィーが寝ていた。一人でベッドに入った筈なんだが、、、決してセフィーがいた記憶は無いんだが、、
「それにしても、、、」
俺は起こさぬようにベッドから出ると、自分の体を闇で包む。そして解いた時にはいつもの服に変わっていた。
「セフィー、、朝だぞ」
俺が耳元でそう呟くと、耳をピクリと動かし目を開けた。
「エ、エド!」
「おはよう、セフィー。」
「お、おはよう。エド、、こ、これには訳が、、、」
「別に何でも良い。さあ、早く準備してしまおう」
俺は昨日早く寝たので片付ける物はない。まあ、片付けるとしてもベッドの毛布くらいかな。
「じゃ、じゃあ私は着替えてくるね!」
「あぁ。」
俺はセフィーを見送ると、自分の準備を始めた。
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昨晩、、、、
「セフィー、、おぬし、エドの所へ行ってみてはどうじゃ?」
「えっ!?」
「慕っておるのじゃろ?」
「、、、」
「行ってくるのじゃ!」
長はどうやら私とエドを応援?しようとしているらしく、ほぼ強引にそう言うと私をエドの部屋へと向かわせた。
「セフィー!?」
「う、うん、、、」
もう凄くドキドキする。耐えられないよ。
「、!」
「うん、、」
私はドアノブに手をかけ中へ入る。長は扉の外にいるらしく、部屋の中には私とエドだけ。けれどそのエドは、、、
「寝てる?」
既にベッドに横になり寝息もたてている。
「これ、、私はどうしたらいいの?」
エドも寝てるし、扉の外には長がいるし、、、
「エド、、私、どうしたらいい?」
私はエドの布団の中へ潜り込むと、エドの横で目をつぶった。こんな機会、なかなかないもん。
「あーー、、私何してるのよ!」
部屋に戻ると一人私は布団の中を転がりながらそればかり叫んでいた。すると、転がり過ぎてベッドから落ちてしまった。
「痛っ、、、ふぅ、、」
エドはどう思ったんだろ。朝起きたら旅仲間の女の子が一緒の布団にいる、、、驚くよね?
「あーー、、」
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「ふぁぁ、、、おはようリア。」
俺が昨日通してもらった部屋へ入ると、リアが既にソファーに座って紅茶を啜っていた。
「おはようございます。セフィーさんはどうしたんですか?」
「着替えるって言って自分の部屋に戻ったが、、、、まだ来てなかったのか?」
「はい。起きてるのはボクとエドさん。あとセフィーさんのお母さんだけですよ。この紅茶もセフィーさんのお母さんが淹れてくれましたし。」
「そうなのか。トラストはどうしたんだ?」
「昨日、あれから近所のお友達とお酒を酌み交わし合ってて、、まだ寝てますよ」
「分かった。ここの親子は何してるんだか、、」
俺はひとまずはソファーに座ると、魔法陣を刻んだ剣をリアに渡す。
「んっ!もう出来たんですか?」
「あぁ、、魔法陣を刻むだけだし、すぐに終わったぞ。あとは刃の手入れをしたくらいだしな。」
「ありがとうございます!」
リアは剣を受け取ると、結晶化させてネックレスに通す。
「あらら、、、エドさん起きていらしたのですか?どうです?紅茶はいかがですか?」
「良いんですか?」
「はい。客人ですもの!」
「では、頂きます!」
ニコニコしながら部屋を出ると、少しして紅茶を運んできた。
「はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
俺は淹れてくれた紅茶を一口啜り、、
「美味しいですね。えーと、、」
「セリーナですよ。私の名前は長トラスト・リグライトの妻、セリーナ・リグライトです。」
「セリーナさんですね。分かりました!」
「ふふ、、」
「エドさん。昨日の夜、何してたんですか?」
急に周囲の雰囲気が変わり、張り詰めた雰囲気があたりを支配した。
「き、昨日は妙に眠くてな、、部屋に入ったらすぐに寝てしまったんだ。だから、セフィーがいることも知らなかったんだよ」
「そうなんですか、、、、」
「、、、、」
「あっ、、そうだ。セフィーさんが自分から行った訳じゃないですからね!」
「そうなのか?」
「はい!」
「昨日、夫がお酒の勢いで、セフィーに行ってこいって強引に向かわせたんですよ。一発、喝でも入れて行ってはくれませんか?」
「分かりました、、、」
「それはそうと、、御二人はどういう関係なのですか?」
リアは不安そうに俺を見ると、下を向いて俺の返答を待っていた、、、
「そうですね、、、恋人、ですかね?」
リアは俯きながら肩を震わせ、セリーナさんは目を細め僅かに笑みを浮かべている。
「そうですか。では、セフィーはお邪魔になるのでは?」
「そうですかね?問題は無いと思いますよ。日中からイチャつくようなことはしませんしね。それに、、、、」
俺はそう言うとリアの方へ片目を向けた。
「?」
「少し前に事件、がありまして、、今はお互いそのような気分ではないのです」
「そのようですね。とりあえず、これからもセフィー、娘をよろしくお願いしますね。」
俯いているリアを見てそう答えたセリーナさんは、そう言うと深く頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」