第97話 オルガド
バキンッ!
「何の音じゃ!?」
「トラスト、行くぞ。嫌な予感がする。」
「そうじゃな。急がなければ」
俺とトラストは、トラストは隣に置いてある剣を掴むと扉を出ていった。嫌な予感がする、、色々な意味で。
「何があった!?」
「エドさん、セフィーさんが、、」
「アナタ、オルガドが。」
「なにをしているのじゃ。実の妹を牢につなぐと言い出してからおかしいとは思っていたのじゃが、、」
「二人はいま何処にいる!?」
「お、恐らくは処刑場かと、、、」
「リア、ついてこい。奴には喝を入れてやらねば。」
「はい!」
「わしもついていくぞ。息子の不祥事は親の罪じゃ!」
俺達は処刑場へと急いだ。奴の正義感は犠牲にするものが多い。野放しにしては危険だ。
「先に行く!」
龍人化、、流石に俺も焦っている。奴ならその場で殺しかねないから。
「お前、自分のしていることを分かっているか?」
処刑場に到着すると、中心では後ろ手に縛られたセフィーと剣を持ち俺達を待つオルガドがいた。
「ふっ!貴様のような余所者には関係無い。俺達竜人の恥であるこの者を殺すのは当然だ。」
「関係が、無いか。セフィー、、お前は俺についてきたいか!?」
「へ、、」
「貴様、何を言っている?」
「セフィー、今一度問う。俺についてきたいか!?」
「うん。」
「そうか、、、、」
「貴様ら、、茶番はやめよ。この者を処刑するのに変わりは無い!貴様も動けば今すぐこの者の首ををうつ!」
「お前は無知だな、、、」
俺のその呟きと共に俺の体は闇の粒子となり消えた。
「ど、何処へ行った!?逃げたか、恐れをなしたか。セフィー、おぬしの想い人はお前を見捨てたぞ!!」
オルガドは高らかに笑うと剣をセフィーの首へと近付ける。刃を翳された首は一筋の血を流した。
「はあっ!」
「殺らせるわけないだろ。」
剣を振り上げた瞬間にオルガドの首へ手を回すと、そのまま締め上げる。
「ぐ、、、ぅ、、」
「セフィー、、こっちへ来てくれ、」
「う、うん。」
俺は片腕で首を締め付けたまま、短剣で手を縛る縄を切る。そして締め付けている首に闇を回すと、手を離して蹴飛ばす。
「ぐ、、、ぅ、」
「喋れないだろ。取り敢えずはそのまま拘束されていればいい。」
「ありがとう、エド、、」
「?」
「助けてくれたでしょ、」
「あー、、大切な仲間だしな、失うなんてことは二度と御免だからな」
「仲間、か、、、」
「?」
「いいね、、仲間って、」
「そうだな、、、、それに、約束したしな」
「約束?」
その頃、リアが一足遅れて到着した。
「セフィーさん!」
「リア!」
「二人共、無事ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。まあ、奴はあの様だけどな」
俺が言った方には、闇に首を締め付けられ悶絶するオルガドがいる。
「貴方!セフィーさんを殺すって連れ出したからには、それなりの報いがあることは承知してますよね?」
リアは悪い笑みを浮かべると、鞄から何やら真っ赤な粉末を取り出す。
「リア、、、それは、毒じゃないよな?」
「はい!」
その笑みが怖い。リアはその粉末をオルガドの口の中へ大量に流し込んだ。
「!」
「、、」
「、、」
「、、」
「んーーーーーー!!!!!!」
オルガドは声にならない叫びを上げながら、さっきよりも激しく悶絶し、地面を転げ回る。
「リア、、それは、なんだ?」
「これは世界一辛いと言われるスバイシーファイヤーと言われる調味料です。どんな辛い物好きでも二口持たないって言われるくらいの辛さらしいですよ♪」
「それを、、大量に、、」
「はい!」
「エグいな、、」
「ヒドイですよエドさん!ボクだって一応抑えているんですから!」
「抑えている!?」
「はい!これは熱々の水に溶かすと辛さが際立つんですよ。」
「言うな、、、それはしてはいけない。少し間違えば気絶する。」
「そう思います。ボク、悪戯とかしたことないから、、」
「そうか、、まあ、程々にしとけよ。まあ、気絶寸前までなら大丈夫だ!」
その呟きにオルガドは目を見開き、リアは満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます♪」
リアは鞄から他にも色々な調味料を取り出す。俺はそれ以降は何も見ていない。怖いから。
「、、、、」
「リア、気絶してないか?」
「気絶はしてませんよ。悶絶し過ぎて疲れただけです!」
「そ、そうか、、」
その頃やっとトラスト達が到着し、あたりの惨状を目の当たりにした。
「エドさん、ありがとう。我が息子を叱って下さって、我が娘を助けてくださって、」
「いいえ、、セフィーを助けたのは助けたかったから。オルガドを止めたのはセフィーを助ける為。全て自分の為ですよ、」
「それでも、ありがとうございました。」
「わしからも礼を言わせてくれ。ありがとう。」
「こちらこそ、、」
俺はそれだけ言うと、オルガドの拘束を解きトラストに渡す。そして俺はふと思い出したことを聞く為、セフィーの所へ近付いた。
「どうしたの?」
「そう言えばさっき、オルガドが言ってた想い人って、どういう意味だ?」
「!!!」
その瞬間、周囲の時間は静止しセフィーの顔は一瞬で真っ赤になった。