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第96話 トラスト

「わしは、、、」

「長?」

「わしは認めんぞ。おぬしのような小僧には預けられん!わしを、わしを打ち倒して見せるまでは渡さんぞ!」

「ちょ、お、長!」 

「アナタ、、、」

「いいだろう、、、」

俺は見届け人にセフィーのお母さん、そして相手に長を連れてさっき魔物の進行を止めた門の前へ歩いていった。

「良い風だ、、、」 

「おぬし、、、」 

「それじゃあ、始めようか。」

「おぬしの力、わしに示してくれ!」

ガキンッ!

鋭い金属音と共に金属同士の火花が散った。俺達の速度は既に常人のものを越えており、目で追うことさえ出来ないだろう。

「おぬし、やるのう。けれど、わしには及ばぬな」

長は剣を上段に構えると、身体中に魔力を巡らせ身体能力を高める。そしてそこから俺目掛けて真っ直ぐに振り下ろした。

「っ!」

その間約0.6秒。その間俺は闇裂・改を腰に構え、闇を纏わせる。

「、、」

体には光の権能でスピード、筋力、五感を高め剣と打ち合う構えをとる。

「はあぁぁぁぁ!」

「んっ!」 

ガキンッ!

強力な魔力と魔力の激突は魔力の渦をつくり、周囲の木々や地面を抉る。そしてその原因となる俺達二人は、、、、

「っ!」

「俺の勝ちだ、」

剣は真っ二つになり、刃は長の腹に衝撃を与えていた。

「油断は禁物じゃぞ、」

衝撃により踞った長は意味深な笑みを浮かべると全身から魔力を放出し始めた。

「何をする気だ!?」

俺は取り敢えず離れると、砂煙の上がる長の周囲を確認する。しばらくすると中から高密度の光線が放たれ周囲の山々を破壊する。

「ブレスか、、、」

砂煙の晴れた中には、立派な白銀の鱗をした竜が金色の目を向けてくる。

「おぬし、、竜人ならその人の姿を解いてみよ!」

「、、、、。」

俺は闇の渦と共に体の変化を解く。そして闇に染まった漆黒の翼を揺らすと無駄に漂う闇を払う。ちなみに闇は扱えなければ猛毒だ。

「っ!」

「さあ、、長。俺の姿は確認出来たか?」

「お、おぬし!」

「では行くぞ。」

俺は龍らしい神速で長の目の前へ向かうと右手に魔力を纏わせ斬撃を放つ。そしてそれを避わした間に〔ブレス・暗闇〕を放つ。

「俺は確かに龍だが、今は人である方が慣れた。」

俺はそう言うと、高濃度の闇を放出して人に戻る。

「耐えられるなら、、耐えてくれ、」

俺が後ろを向き戻ろうとすると、後ろから手がのびてきて俺の首を掴む。

「っ!」 

「油断は禁物と言った筈じゃが、」

なんと長も使えたか、、、翼、腕、尻尾、所々に竜の特徴があることから竜人化に成功していると見える。

「、」

俺は掴んでいる腕に手を置くと、衝撃で手首を折る。そしてそのまま背負い投げで叩き付けると、、、

「龍神化、、自分だけの物だと思ってないか?」

俺は一瞬だけ龍神化すると、腹へ強力な拳を叩き付ける。

「ぐっ!」

「、、、」

今度こそ気絶したのを確認すると、砂煙やら闇の瘴気やらを吹き飛ばして、そこから歩き出す。

「アナタ!」

セフィーのお母さんも長に駆け寄り声をかける。俺は先に帰ろうと振り返らずに歩き始めた。

「あ、あの、、、」

俺はセフィーのお母さんに呼び止められてしまう。

「どうしたのですか?」 

俺は微妙についた長の血を拭いながら振り返ると、セフィーのお母さんへ顔を向ける。

「セフィーを、お願いします。」

「はい。長にも、よろしく伝えてください」

「はい。」

「それでは、」

俺は長を任せると、先に竜渓郷へ戻った。 


「どうでしたか?」

「大丈夫だ。俺の勝ちだ」

「長は!?」

「怪我は負わせていない。まあ、負っていてもすぐに治るだろうが、、、」

「じゃあ、私はついていっていいの?」

「あぁ。一緒に行こう!」

「やった!」 

俺が喜ぶセフィーを見ていると、セフィーのお母さんの肩を借りた長が扉を開けて入ってきた。

「、、、」

「、、、」

「二人共?」

「セフィー、、お母さん、、嬢ちゃんも、少しわしと二人にさせてくれんか?」 

「うん、」

「はい、」  

「っ!」

三人が出ていくと、俺の前に体を引き釣りながら座る。やはりダメージは相当入っていたらしく体はフラフラとしていて、意識を保つのがやっとだろう。

「おぬし、、名前は、なんと言うんじゃ?」

「エドだ。そう言うお前は、トラストだったか?」

「そうじゃ。一つだけ、頼み事があるのじゃが、聞いてくれるかのう?」

「?」

「セフィーを売ったわしに資格なんぞ無いが、、どうか、幸せにしてやってくれ。」

「そのつもりだ、、」

「そうか、、、」

「お前にも一つ、質問がある。」

「なんじゃ?」

「何故セフィーを止めなかった?」

「ほっ、ほっ、ほっ、、エド、おぬしでも気付かぬことがあるか。それは自分で考えてみると良い。セフィー、わしの娘を見ていれば、おのずと分かることじゃ。」

「?」 

それからは静寂が流れるが不思議と苦痛ではなかった。されから数十分後、ある物音により俺達の落ち着いた静寂は破られた。

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