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第95話 怒り

バタンッ、

「長!」

セフィーは倒れた長を抱えあげると、そのまま長の屋敷へと運んでいく。俺達はその後を追う。

「お母さん!長が!」

「まあ、、アナタ、しっかして!」

長は未だに身体中から血を流していて、意識もない。生憎俺の能力は自分を治療することはできるが、他人を治療することはできない。

「セフィーさん、長さんをここへ」

「う、うん」

聖剣ライフ。リアの宝物であるこの剣は自分のみならず他人までも治療できる本当の宝剣だ。

「ぅ、、、っ、、」

「血が、、止まった、、」

「そうみたいだな。」

「あ、ありがとう、リア。」

「は、はい。ボクも出来ることは全力でします!」

「お母さん、長を治療してくれたし、中に入ってもいいよね!?」

「んー、、、」

「いいでしょ!?」 

「はい、いいでしょう。お二方、いらっしゃいませ」

セフィーのお母さんの切り替えの速さには驚愕だ。今渋っていたかと思うと、認めた瞬間笑顔になり俺達を客人として迎えてくれた。

「は、はい。」

リアはこのかわりようにビックリしているようで、緊張気味だ。

「ここが客間だよ。長はお母さんが寝かしに行ってるから、、少しここで待ってて」

そう言われ通されたのは素朴だが高貴な雰囲気も漂う部屋だ。広さは十五畳程で、真ん中にはソファーが2つ。客人と家の者用だな。

「お待たせ、、二人共どうぞ」

セフィーは紅茶を俺達の前へ並べると、真ん中へ茶菓子を置く。そしてそのままトレイを直しにいこうとすると、、、

「セフィー、、客人に紅茶は出したの?」

「うん!」

「まあ、、、お二方、どうもいらっしゃいました。セフィーも、早く座りなさい。」

「う、うん」

セフィーがどちらに座ろうか悩んでいるので、少し横を開けると目配せする。するとその意図に気付いたようで、俺の横に座った。

「、、、セフィー、貴女はこっちじゃないのですか?」

「ちょっとね、」

「?」

その頃、部屋の扉が勢いよく開くと、身体中に包帯を巻いていまにも倒れそうな長が剣を引っ付かんで俺に向けてきた。

「おぬし、いや、お前。ここに何しに来た!この平和な竜渓郷に災いを降らせに来たか!」

「ふっ、、、さっきまで気絶寸前だったクセに、よくそんな大口が叩けるな。」

「お前の応答などどうでも良い!今すぐ出ていけ!」

その声と共に、長の頭には拳が振り下ろされた。

「アナタ!命の恩人になんてことを言うの!」

セフィーのお母さんは、流れるような手際で長を跪かせると、頭を下げさせる。

「ふう、、、長、俺がここに来たのは他でもないこのセフィーの為だ。」

「!」

「!」

「お前はこんなまだ成人して間もないような娘を追い出したようだな。俺達がいたから助かったものの、一つ間違えば死んでいたぞ!お前はそれを分かって追い出したのか!?」

「、、、」

「そもそもな、セフィーの言ったことは間違ってなかった筈だ。お前等の策で嵌められた俺等を心配した娘を何故追い出す!?」

「、、、、」

「先に災いを引き入れたのは誰だ?お前じゃないのか?わざわざ俺達を確実に殺す為に引き入れたお前の行動は軽率だ。息子を叱る資格も無く、自分を戒めるべきだ。」 

「、、、、、」

「お前のような奴には分からないかもしれないがな、自分の娘を嵌めようとしている相手に差し出すか?お前は生贄にでもするつもりだったか?もし俺がセフィーを連れていき、ついで俺が封じれ無かったとしよう。俺は死に、リアは死に、フォンセも死んだ。しかし娘であるセフィーも死ぬ。お前はそれを理解していたのか?理解していたのならお前は自分の策の為に娘を売るような最悪最低の愚か者だ!」

「わしとて、、、」

「、?」

「わしとて好きで娘を売ったわけではないわい!わしとてな、娘のセフィーが大好きなんじゃ。そんなセフィーをおぬしのような者についていかせるのは苦汁の決断じゃったわ!仕方無かったんじゃ!」

「だからどうしたら。俺からすればそんなことはどうでもいい。それを仕方無かったで片付けるお前はやはり愚か者だ!」

「、、、、」

「エド、、そろそろ止めて。」 

「分かった。」 

「ありがと。」

セフィーは俯く長に向き直ると、、

「長、、私ね、、エドについて行きたいんだ。いいかな?」

「、、、」 

「セ、セフィー、なんてこと!?折角戻ってきたというのに!」

「ごめんね、お母さん。けど私、やっぱりエドについていきたい。気持ちを伝えたりするのは苦手だけど、それだけは伝えられる。いいかな?」

「、、、、」 

「、、、、」 

「、、、、」 

その場所では静寂が流れ、静かにそれぞれが自分の気持ちを整理する。俺とリアはそれを一歩引いた場所で見守る。

「いいでしょう。母として、貴女を束縛したくはありません。けれど、一つ確認させてくれますか?」

セフィーのお母さんは俺に向き直ると、俺の目をしっかり見て、、

「娘を、セフィーを、任せてもよろしいのですか?」

「はい」

俺はそれだけ伝えると、それに込められた意思を読み取ったのか、満面の笑みを浮かべると、、

「それでは、お願いしますね。」

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