第73話 老人
「お待ちくだされ!」
俺と竜人を隔てるように一人の老人が現れた。その速さはなかなかのもので、この竜人達よりは遥かに強いことが分かる。
「お前は誰だ?」
俺は闇裂・改の切っ先を今度は目の前にいる老人へ向ける。
「わしはこの愚か者共の祖父にあたる者じゃ。どうか見逃してやってくれませぬか?」
「できん!この竜は俺達の獲物を横取りしようとしてきた。それに殺そうともな!そんなことをして奴等を俺が何故許す必要がある!?」
「、、、、」
「お前の孫かなんだか知らんが俺達を襲ってきたのだからコイツ等にも死ぬ覚悟はあるのだろう。」
「なら、、、」
「?」
「なら、わしを殺して下され。孫を見捨ておめおめと帰れぬ。どうかわしを殺して下され!」
「よかろう。なら殺してやる!」
俺は闇裂・改を老人の首に向ける。
「エドさん!何してるんですか!?」
「殺せと言った者を切り捨てようとしている。」
「そ、、っ、」
「主様、、何故殺す必要があるんですか?」
「俺と奴等は命を掛けて刃を交えた。ならば勝った者が負けた者の首をとるのは必然。それを止める者を切り捨てるのも必然だ。」
「主様、一度落ち着きましょう、、、、、、主様はもう何も背負っていないんですよ。」
「!」
「分かりましたか?」
「あぁ、、やはり権能も万能じゃないな。元の俺に戻ることもあるようだ。」
「そうなんだよね。特に強い魔物とか人との戦闘の時。」
「まあ、、、、」
俺は竜人の拘束を解くと、老人の方へ投げ飛ばした。
「これでいいか?お前の用事も済んだんだろ?俺達は帰らせてもらう。」
「お待ちくだされ!」
「どうした?」
俺が振り向くとさっきまでの緊張したがではなく、片膝をつき忠誠の姿勢をとっている。
「わしはここ一帯の竜人達の長でございます。貴方様のような最上位の竜人様に出会えたこと、この上ない喜びであります。どうかわし等の里へお招きしたいのです!」
顔を下げたまま大声で言うのだが、後ろでは竜人二人が呆気にとられている。この長と言われる竜人だけが気付いているのだろう。
「俺のような人間なんかが最上位の竜人だと。そう見えるのか?」
「はい!わしの目に狂いはございませぬ。皆様方の中にある竜の気が竜の証でございます!」
忘れていた。俺が作り出した龍も竜をベースにしてるから似てる所が多くある。
「、、、、」
「主様、」
「エドさん、」
「分かった。お前の招待を受けよう。しかし、!」
「、」
「お前等が俺達に危害を加えてみろ。この階層が火の海になるぞ!」
「はっ!承知しております!」
「リア、フォンセ、行くぞ!」
俺とフォンセは翼を解くと老人について飛ぼうと翼を広げる。リアは魔力切れらしく俺が抱えている。
「では、行きますぞ!」
「あぁ、」
流石竜人の長だ。そのスピードは二人の竜人が追い付けない程。当然俺もフォンセも余裕でついていっている。
「着きましたぞ。ここが我等竜人の里、竜渓郷でございます!ようこそおいで下さいました」
そこは階段から遠くの山々の間にある大きな渓谷の中にある。渓谷と言っても中は草花で覆われた綺麗な場所だった。そこには普通に竜人達が暮らしていた。
「ここが入り口でございます。」
老人について行くと大きな門があり、老人はその扉を押し開けた。
「この扉は竜の気を持つ者しか開けることが出来ないんだな?」
「ど、どうして分かったんですか!」
「見れば分かる。お前が入る時、魔力では無い何かを流し込んでいたからな。」
「そくまで見抜かれしまわれるとは、流石ですな。」
「それより、早く用件を教えてくれないのか?用事があるんだろ?」
「、、、、、」