第62話 炎蛇
「エドさん、この死体は回収しなくても?」
「いや、、是非回収してくれ。こいつはかなり高ランクだ。」
「そうなんですか?そこまで強そうには見えませんでしたが、、、」
「いや、かなり強いぞ。恐らくはリアでギリギリだからな。」
「え、、ちょ、それってかなり強いんじゃないの?」
「まあな、、俺も一発喰らったからな。」
剣が首を翔ばす瞬間、死ぬのを確信した魔物は俺に一撃でも入れる為、死ぬ間際に俺の腹へ爪を突き刺していた。
「大丈夫なんですか!?そんな強い魔物の攻撃じゃあ、相当危ないんじゃ?」
「まあ、大丈夫だ。」
しかし、そんな最期の攻撃も龍の俺には効かない。恐ろしく硬い鱗に阻まれ爪は通らず、肌を少し切り裂いただけだった。
「じゃあ、俺は周辺の警戒をする。リア達はこいつの解体を頼む。アイテムポーチは預けとくからな。」
「はい。フォンセちゃん、頑張りましょう。」
「主様、いってらっしゃい!」
「ああ、行ってくる。」
まあ、何も来ないだろうが、今回俺が狙うのはこの階層のボス。恐らくは水中、いや、溶岩中にいるので俺は体の表面の変化を解いて飛び込んだ。当然、翼は完全に解いている。
「シャァァァァー!」
溶岩中には蛇型、いや、竜や蛇などの魔物が多く俺を見つけた瞬間、牙を剥いて襲いかかってくる。
「!」
小さな闇弾を放って魔物を殺すが、これではなかなか終わらないな。そういう時は、、
「、」
全身から闇を漂わせながら進む。魔物は闇に触れると体を蝕まれ近付けない。
「お、見つけた。」
遠くで五メートル近い長い蛇を見付けた。ただし、その背には大きな羽が生えていた。
「はあっ!」
「シャァァッ!」
蛇も気付いた。俺にその大きな眼球をギラギラと向けると、口を広げブレスを放ってきた。低級とはいえ竜だ。ブレスには当然、とてつもない威力がある。しかし、俺がそれに闇裂・改を向けると、、、
「闇裂・改の能力だ、」
ブレスは闇裂・改を中心に砕けると、闇裂・改に吸収された。
「返すぞ、」
俺はその吸収した魔力を一点に集めて放つ。一点に集められた魔力は蛇の鱗を貫いて急所を的確に潰した。
「シャァァー!」
いくら急所を貫いたとはいえ相手は魔物。回復能力も耐久能力も高く俺に襲いかかってくる。
「はあっ!」
噛み付いてくる牙を闇裂・改で受け止めるが、その時、牙から毒を出すように溶岩を発射した。
「熱っ!」
滅茶苦茶熱い。けれど、そんな傷も闇を使えば多少塞がるし防げる。
「シャァッ!」
続けて力を抜いた俺に顎を閉じるが、そこに実体の俺は存在しない。俺は既に蛇の頭の上にいて闇裂・改を振り上げていた。
「はっ!」
俺が振り下ろそうとしたが、その俺の手は尻尾で絡めとられていた。そして蛇は動き出した。それにともない俺は溶岩の中を無差別に振り回された。
「くっ、、」
これは不味い。流石に龍とはいえ呼吸無しで居続けられる訳ではない。
「シャァァァ」
蛇は完全に仕留めたと思っているのか、鳴き声をあげながら泳ぎ続けた。
「、!」
そろそろ限界だな。下手をすればこいつの素材を回収出来ないが仕方ない。俺は絡めとられている手から高濃度の闇を溢れ出させると、蛇の体まで侵食する。
「シャァァ?」
遅い。蛇が気付いた頃には俺の手は尻尾から離れていて、土産に蛇の尻尾は切り落としていた。
「あとは俺の番だよな?」
既に全身を闇で侵食されている蛇は動けない。俺は力一杯蛇を溶岩の上へ投げ飛ばした。
「はあっ!」
俺は投げ飛ばした逆の手で闇裂・改を振り下ろす。すると、なんとそこから蛇が消えた。奴はなんなんだ?
「!」
「真実の根源」によると奴の名前は速翼蛇竜。とにかく素早く空も溶岩の中も自在に動ける炎竜。
「シャァァァ!」
目で追えないなら聴覚、後ろだな。
「はあっ!」
突っ込んできた蛇の右眼を切り裂いた。傷口から血をあげもう片方の視界を一瞬奪った。
「俺の勝ちだ!」
視界の無い蛇に闇裂・改を振り下ろした。
ブシュゥ!
確かに生き物を殺した感覚があり、俺は切り裂いた二つの肉塊を回収するとリア達の所へ戻った。