第54話 騎士
「エドさん大丈夫でしたか?大きな魔力を感じましたが、、」
「大丈夫だ。少しイライラしてな。」
「お、おぬし、、イライラしたとは、ギルド長に何かしたのか?」
「んー、、、魔力の塊を投げつけました。」
「な、何してるんだ!あの方が本気なら、おぬしなどは直ぐに消されるのだぞ!」
「?」
「分かっているのか?今すぐ謝りにいけ。消されるぞ!」
「手合わせをお願いしてもいいですか?」
「おぬし、そんなことよりも早く謝りに行かぬか!とんでもないことになるぞ!」
「いえいえ、、一度、手合わせをお願いします。」
「分かった分かった。そのあと早く謝りに行けよ!」
「はい。」
幸いここは大量の素材を運ぶ倉庫だった。なので、俺達がここで剣を打ち合っても邪魔にはならない。
「では、ボクが審判を勤めます。では、、、始め!」
「はあっ!」
相手は騎士。槍を真っ直ぐに放つ。
「!」
刺さると確信している槍を、紙一重で避けると、分厚い鎧に包まれた騎士の胸に手を当てる。
「!」
魔法陣発動!騎士は炎に巻き込まれながら倉庫の壁にぶつかった。
「っ!、、、くっ、もう一度。」
今度は槍を捨て、剣を抜いて振り上げた。
「はぁぁぁっ!」
この軌道なら俺の体が真っ二つだ。しかし、これの軌道を変えれば問題ない。
「、」
短剣を取り出すと、振り下ろされた剣の軌道を刀身にのせて反らす。
「なっ!」
剣が素振りに終わったのを見て、騎士は今度は走りながら突きを繰り出す。俺はそれを少し動くだけで避けると、左手で騎士の顎を打つ。
「!、、はぁっ!」
騎士はもう剣も捨て殴りかかってくる。
「!」
右手でうたれた直線的な手を、左手でしっかり受け止める。
「くっ!」
騎士がどれだけ抜こうとしても抜けない。騎士はもう片方の手で手を抜こうとするが、やはり抜けない。
「うわっ!」
俺は拳を離す。すると、手を力一杯引いていたので吹き飛んでしまった。
「どうです?私なら大丈夫ですよ。あの部屋にはもう一人いましたが、私には敵いませんね。」
「な、なんだと。くっ、もう一勝負だ!」
「はい。」
騎士は捨てた剣を拾うと、剣を構えたまま突っ込んできた。
「はっ!」
落ち着いたことで剣筋は整っており、真っ直ぐな斬撃だ。しかしそれも俺には通じない。斬撃を紙一重で避けると、腰を屈め力を込めると、隙のできた脇腹へ蹴りを放つ。
「っ!」
分厚い鎧で守られているせいか、騎士には蹴りの威力は通らない。騎士は俺の足を脇に挟んで動かないようにした。
「俺の勝ちだ!」
騎士は剣を俺に向け振り下ろす。しかし、、、
「なにっ、、うわぁ」
俺は足に魔力を纏わせて、腕を魔力の流れで引き剥がす。そして、指を騎士に向けると、、
「私の勝ちです」
俺は足に渦巻いていた魔力を指先に集中させると、騎士の左胸に放った。
「がはっ!」
左胸の鎧は砕け、魔力の衝撃はしっかりと体に届いていた。
「おぬし、強いな。」
「分かって頂けましたか。では、」
「少し待ってくれ。俺はヴァランク。覚えておいてくれ。」
「私はエドです。」
俺はそれだけ言うと、検問所を出た。ちなみにリアもフォンセも俺の後ろを歩いていた。
「ここが今日の目的地だな、」
冒険者街についた。作りは超シンプルで、右側がギルド、左側が戦闘用品などを専門に扱う店だ。ギルドの入り口は街の真ん中にあるのだが、門から出口まで、5キロメートル程しかない。なので、ギルド入り口のまわりには素材買取りをしてくれる店が多く並んでいる。そしてこのギルド等の逆側には冒険者用の剣や盾、鎧などが売ってあり、その他にも闇業者が商売などをしていることもある、、が、今はどちらでもいい。
「今日はフォンセの冒険者登録だな。俺達もランク上昇を目指すぞ。」