第4話 魔法
気持ちいい風がふいて、俺は目を覚ました。火の守りをしていたのだが、少し眠ってしまっていた。焼いていた朝食は焦げ始めている。
「、、、」
まだ眠気が残っているので、近くの小川まで行って顔を洗う。
「リアはまだ寝てるのかな?」
テントの中を覗くと、リアはまだ寝息をたてて寝ていた。
ピッ、ピッ、ピッ、
森の朝は静かだが、動物達も目覚め始める。することがない俺は、魔法を適当に使って遊ぼうとした。
「ん、、何故だ?」
魔法が発動しない。
「炎よ集いて空を燃やせ」
発動しない。いつもと同じように、魔法を使おうとするのだが、全然発動しない。
「そろそろ見付けられたのかもな、、、」
俺が封印されていたのは亜空間だった。当然、そこを支配する神もいて、俺がそこから抜け出したのも近いうちに知られるだろうとは思っていた。しかし、こんなに早いとは思っていなかった。
「これは、不便になるかな、、、」
幸いなのは、俺がいるだけで他の神の権能の能力は下がることだ。理由は、基本的に他の神がいない大昔は、俺が全ての権能を握っていた。なので元は俺の権能であって、他の神に分け与えているに過ぎないのだ。
「まあいいか、、、闇よ弓と化せ」
すると、手のひらから闇が吹き出して弓を形づくる。良かった。権能は使えるようだ。もしかしたら、闇の神もいるのかもしれない。何故なら、闇の権能が少し弱い。これは、神ではないからなのか、それとも、他に闇の神がいるのか、、、
「ま、権能が使えるだけでも幸いか、、」
闇の弦を引くと、自然的に矢がつくられる。矢を放つと、普通の弓のように、矢は飛んでいって木に突き刺さる。当たり前なのだが、命中した木は、闇に侵食されていく。
「はっ!」
侵食されていく木を殴り付けて、闇の部分だけを吹き飛ばす。すると侵食は止まった。当然、吹き飛ばした方の木片は闇に染まったが、、
「可哀想だもんな、、」
木も生きている。「流石に仕方ないから吸収」は可哀想だから。
「ん、?」
テントの中で物音がした。恐らく今の大きな音でリアが起きたのだろう。そして案の定少しすると、、
「おはようござます、、エドさーん?」
「ここだ。顔でも洗ってこい」
「分かりましたぁ、、」
まだ寝ぼけているのかふらふらとしながらも、さっきの小川まで歩いていった。
「エドさん、おはようございます!」
「おはよう。朝から元気だな」
小川へ言った時とは逆に、元気な顔付きで挨拶してくるリアにそう言って呆れたような表情を見せた。
「なんですかエドさん。その顔は!」
「元気だな、、て、」
「もう、、」
「それより食べようぜ。もう、用意してるしな。」
「はーい、ありがとうございます。」
立っていたリアは、俺の隣にチョコンとすわる。そして、焚き火で焼いていた昨日の肉を手に取ると口に運ぶ。
「美味しいですね。これは、、」
「昨日の肉じゃないぞ、」
「ホントですか。」
「そうだ。俺が調達してきた肉だ。旨いだろ?」
「美味しいです。あ、そうだ!」
「ん、どうした?」
リアが鞄の中を覗いて、何かを取り出す。
「それは?」
「おばあちゃんが使ってた物を貰ったんです。美味しいですよ」
取り出したのは黒っぽい液体で、ハケをその液体につけると、肉の表面に塗り受けた。
「どうぞ、、」
「ありがとな。」
口に運ぶと、つけなかった肉とは格別な旨さだった。なんと言うのだろう。スパイシーなのだが、甘さもあり、絶妙な味だ。
「どうです?」
「旨いな。これは、、、、リアのおばあさんって、料理人か?」
「いえいえ、、魔法道具を作ってるんですよ。恥ずかしんですが、この前の町の商店街に店を出してるんですよ。少し不気味なんですがね、、、」
俺はその一言に驚愕しつつも、納得もしていた。