第36話 重罪
「ただいま、、」
「フォンセちゃーん、、帰ってきたよお。」
呼び掛けても出てこない、不審に思った俺はゆっくりと中へ入る。真ん中には誰もいない。俺の部屋にも、リアの部屋にも、、
「誰かいるな、」
フォンセの部屋にだけは魔力を感じられた。それも、知ってる魔力だが、
「フォンセ、入るぞ」
「う、うん。いいよ、」
案の定フォンセの声が聞こえるが、何故か少し声が小さい、、
「フォンセちゃん、どうしたんですか?その格好、」
「フォンセ、隠せ。俺に闇は通じない、防御系の使用は全部自動で看破されるから、」
「えっ、、」
フォンセはそれを聞いた瞬間、近くにあった布団で体を包む。
「ふぅ、、これでいいか。とは言え、どうしてそんな格好なんだフォンセ?」
「もう勘づいてるくせに、」
「はぁぁ、、」
「どうしたんですか?二人とも、、」
「いや、、フォンセがな、」
「ちょっとやらかしちゃった。」
「一応聞くが、何した?」
「殺人、」
「えっ、、、」
「やっぱりな、」
「ちょ、エ、エドさん。なんでそんなに冷静なんですか!殺人ですよ!犯罪ですよ!」
「それは分かってるんだが、元々俺達には法律なんて適用されないし、そもそも俺達の間では殺人なんてよくあることだ。」
「そ、そんな、」
「けどフォンセ、それは理由があったんだろうな、」
俺は真面目な顔に切り替えると、真剣に尋ねた。答えによっては対応が物凄く変わるからな、嘘は言わせない。
「うん、、スラム街に行っちゃったんだよ。そこで、、ちょっとね、」
「ス、スラム街、」
スラム街と聞いてリアが後ろに下がるが、俺は背中に手をおいて、こう呟く。
「大丈夫だ。今のリアには俺がいる。」
「は、はい。」
「、、、」
「フォンセ、しかし、スラム街の話と服の話は直結しないんじゃないのか?」
「実はスラム街で酷い量の帰り血を浴びちゃって、、ここに戻っても服がないし、闇で隠してても主様には簡単に見られるし、、」
「まあまあ、いいじゃないですか。服ならボクが貸しますよ。」
「なら頼む。買ってきたのは後で渡すかな、」
「そうですね。皆がどんなのを買ったか、見てみたいですもんね。」
「だな、、じゃあ俺はフォンセの服の修復でもするかな、」
フォンセの服は特別製の闇の繊維質で出来ており、この闇の繊維は並みの魔法は無効化、闇が相手なら魔力を吸収してしまう。
「ありがとう主様、、」
「まあな、、一応保護者にあたるからな、」
「へへ、」
「で、どれだ?」
「じゃあボクは服、とってきます。」
「ああ、頼む。」
「主様、こっちです。」
「ん、どれどれ、、、」
見てみると服のあちこちに真っ赤な血の跡、そして所々が破れかけてしまっていた。
「、、、、」
「主様、なにしてるの?」
「修復だよ、、手でするより神力でする方が繊細だからな、」
「そうなんだ、、フォンセも頑張らなきゃね。」
「ん、なにをだ?」
「綺麗な殺り合い方、」
「はぁぁ、」
俺は一旦修復の手を止めると、フォンセの肩にしっかりと手を添えてこう話始める。
「フォンセ、人を殺すってのはな、重罪なんだよ、フォンセはそんな奴になりたくないだろ?」
「うん、、けど、殺られちゃったら意味ないよ。」
「そうだな、だから、抑えられる時は抑えろ。けど、本当にフォンセの身に危険が及んだら、迷わず相手を討て。相手がたとえ俺とかでもな、ためらわずに討て。」
「そ、それって、」
「絶対に敵にはならないが、それくらいの覚悟はもてよ。」
「う、うん。」
「ほら、出来たぞ。」
元々闇の物質なので、一度分解してしまえば汚れなんて関係無くすぐに修復できる。
「ありがとう、て、前より強力になってる、、、」
「まあな、デザインも変えてないし、能力だけ上書きした。まあ、使い勝手が悪かったら言ってくれ。」
「うん、、ありがとね主様。もっと怒られるのかなって思ってた。」
「何故怒らないのかは自分で考えてみろ。」
「へ、、うん」
俺は一言だけ言葉を伝えてから部屋を出た。