第30話 涙
「目覚めが悪いな、、」
ベッドの上で目を覚ましたのだが、なんとも疲れが抜けない感じだ。昨日の会話のことも続いてるのかもしれない。俺はもう絶対じゃない、俺はもう公平ではいられない、、
「俺はなんなんだよ、」
無駄に感情を持ってしまったせいで、俺は公平なことも出来なくなったし、絶対であり続けることでさえ出来なくなった。
「感情、こんな権能、なければいいのにな、」
俺は封印し続けていた。いや、無視し続けていた。俺は何も知らない、持っていないと、あたかも元から俺には感情があったかのように、、
「けど、、もう無理だ。また失わなきゃ、隠せないな」
感情、それは生きるだけでつきまとうもの。俺が人として、何かを感じ思うことが有る限り、この権能は消せない。それに、忘れることもできない。
「まあいいか、、俺には元から感情なんて無かった。残酷に振る舞えば公平に裁ける」
自分で呟いたのに、その時、頭の中にはリアが思い浮かんだ。俺は、リアが何かしたときこの手で殺すことが出来るか?裁きを下せるのか?無理だ。俺には裁けない。
「そろそろ起きてるかな?」
俺は外に出る。誰も居なかった。その代わり、各自の部屋にはそれぞれがいた。
「はぁ、、」
俺は床に手を当てると、真ん中に大きめの机とその横に椅子を一脚つくりそこへ座る。
「感情の権能、どんなんだったかな?」
長らく使いも認知もしてなかった権能のことなんて、俺は全然覚えていなかった。〔真実の根源〕を使って調べてみると、人の感情の、操作、認知、誘導が出来るらしい。当然自分の感情も、、そして、感情の発現と、、
「反則的だな、邪魔なのがついてるが、、」
待てよ。感情を操れるってことは、自分の情も操れるのか?その頃、
「エド、さん?」
「リアか?どうした、そんなところで、、こっちにこいよ、椅子も用意したし、」
俺は机に手を当てながら椅子をもう一脚つくるとリアを呼ぶ。
「ありがとうございます。エドさん、、エドさんから見ると、ボクは何?」
「ん?急にどうしたんだ?」
「エドさんからしたら、ボクは何なのかなって、、、」
「仲間だ。大事な俺の仲間だ。絶対に失いたくないな、」
「好き、ではないんですね、」
「ん?何か言ったか?」
「はい。言いました。エドさんは、ボクのこと、好きじゃないんですねって言いました!」
「!」
「もう一度聞きます。エドさんにとって、ボクは何なんですか?」
「仲間だ。失いたくない大切な仲間。これは変わらない。」
「、、、、、そうですか。分かりました。これで、スッキリしましたよ」
リアは笑いながらも、目からは涙を流していた。そして、そのまま自分の部屋へ戻っていった。
「俺だって、、好きなんだよ。けど、、、」
俺は自分の中の喪失感を拭おうと、アイテムポーチに唯一買っておいた酒を飲み干した。神だって、酒は欲しい。
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「ねえ、なんでよ。なんで、なんで、」
ボクは、エドさんの前じゃあ笑顔を作れたけど、部屋に入った瞬間泣き崩れてしまった。
「なんで、、なんで、ボクじゃダメなの?」
エドさんは、誰だったらいいの?ボクじゃダメなんだって、、
「ボクは、ボクはどうなるんだよ。」
コン、コン、
「誰!?」
「フォンセだよ、リアさん」
「入って、」
ボクは袖で涙を拭うと、扉を開ける。
「リアさん、なんで泣いてるの?」
我慢してるんだけど、泣いちゃってたみたい。もしくは、フォンセちゃんにはバレバレなのかも、、
「さっき、エドさんと話したんだ」
「!」
「その様子だと、フォンセちゃんも知ってたんだね」
「、、、」
「別にいいんだよ、、ボクの一方的な気持ちで、それに答えてくれなかっただけだなら、、」
自分で言って情けなくなってくる。そして、止めようとしていた涙は後から次々と溢れだしてくる。
「答えてくれたよ、」
「えっ、、」