第18話 矢の雨
「な、なにを!たった一人で何ができんだよ!」
「哀れだな、」
首領の威厳でも見せようとしたのだろう。自分の剣を大振りに振るが、剣が頭上についた頃には頭がなくなっていた。
バタンッ、、
「、、、」
俺は首領の胴を踏み潰すと、近くにいる盗賊に蹴り飛ばす。
「お前ら!リアは俺の仲間だ。リアが欲しいなら俺と勝負しろ!」
そう叫ぶと、周りの盗賊は自分のしてたことを全て無視して俺に襲いかかってきた。
「哀れだな、」
本日二回目の「哀れ」だった。どれだけ襲いかかってきても、変化を解除した手には人ごときがダメージを与えられる筈もなく、俺が右手を振るうだけで、俺に群がる盗賊達は切り裂かれる。
「化け物が!死ねぇぇぇ」
「、、、!」
これでも懲りないか、、、丁度、俺に切っ先を向けて突っ込んできたのだが、俺が指で摘まむだけで切っ先は止められてしまう。
「化け物が!」
盗賊は俺に止められた剣を通して魔法を発動するが、当然普通の魔法など意味はなく、俺が頭を潰して終わった。
「まだ殺るか?」
問いかけるが返答はなく、その変わり周りにいた盗賊達が集まって戻っていくのを確認した。
「さ、フォンセ、大丈夫か?」
「主様!大丈夫ですよ、、それより主様は?」
「俺も大丈夫だ。早く戻ろう」
「そうですね!」
俺は権能を解いて、野営地の中へ入る。
「エドさん!大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。それよりリア、どうだ?人と戦えるか?」
「、、、」
「仕方ない。簡単にはその一線を越えられない。俺達は人じゃないからマシだが、リアは人だもんな、」
「、、、、」
俺が手を人にして、戦闘モードを解いた時、、
ガサ、ゴソ、
草村から音がして、咄嗟にリアとフォンセを庇った。
「お前ら、殺れ!!!!!」
その掛け声とともに、空から大量の矢が飛んできた。恐らくは俺達全員を射殺す気だろう。
「やったか?」
誰かが首領の役割を果たしているのだろう。その声とともに、矢の雨はやんだ。俺はフォンセとリアを解放する。
「大丈夫か二人とも?」
「はい、フォンセは、、」
「、、、」
「リア、どうした?」
よく見ると、体に数本、矢が刺さっていた。
「、、、」
俺はリアの体を無言で地に寝かせると、、
「下等な人間共が。神に楯突くでない!」
完全に変化を解くと、濃厚な殺気を込めた視線を盗賊達に向ける。それだけでショック死した盗賊もいたが、ほとんどが意識のないまま硬直している。
〔ブレス・神炎〕
いま思い付く最高の炎ブレスを吐く。盗賊達は跡形も残らず、森も大部分が消滅してしまった。俺はこれでも自我が残ってる方であり、まだ加減している。地面は炎で溶けきっていたが。
「リア、大丈夫か?」
龍の姿ではどうしようもないので、人の姿き戻るとリアの所へ戻る。
「エドさん、、ごめんなさい、。」
「謝るな!」
俺はリアを抱き抱えたまま矢を全て抜くと、アイテムポーチから何かを取り出す。
「ダンジョン産のポーションだ。」
「エドさん、、ボクなんかの為に、、勿体無い、ですよ、、」
「そんなことない。リアが死んだら意味がない。」
矢の刺さった場所は下手をすれば即死もありえた。しかし、リアの元々の素質とギリギリ急所を外れてるおかげだろう。しかし、このままでは助からない。
「エド、さん、、」
「飲め。リアがいなければ意味がないだろ!」
「、、、、」
「リア、飲め!」
中々断固として飲まない。
「くっ!」
俺は仕方ないので、ポーションを口に含むと、
「!!!」
口移しで飲ますことにした。かなり強引で謝ろうとは思うが、リアを失うよりはマシだ。
「ふぅ、、」
流石ダンジョン産のポーションだ。効力は絶大で、傷は瞬く間に塞がっていく。
「ごめんな、リア。」
頭を下げて謝るが、リアは顔を伏せている。
「、、、」
「、、、」
リアは無言で頭を下げると、テントの中に隠れてしまう。そしてその後、
「主様、やっちゃったね!」
「ああ、、まあ、リアが生きてさえいればいい。俺は神。結果は変わらない」
「主様、、、」
俺は一人で適当に飛んでいった。