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第118話 グラディオ

俺とリリスが外に出ると、遠くから早いスピードで強大な何かが近付いてくるのを感じた。それも俺達への悪意を漲せた奴だ。

「お主、一人でやれるのか?」

「分からないな。現時点、俺の力量は自分でも計測不可能だ。それに、相手の権能さえよく分からん!」

「そうか、そうか。1つ助言をしてやろう。恐らく、相手の権能は古神による権能じゃ。」

「それは本当か、リリス!?」

「本当じゃ。古神とは古株のことを指すのじゃが、古神の権能の特徴にはその多様性があげられる。そして今回の相手にはよく分からんが深みがある気がしてのう。」

「そうか。もしも俺が危なくなれば、、」

「お主の言いたいことは分かっておる。しかしのう、妾を見くびってもらっては困る。妾とて、旧友一人くらい守ってやろうではないか!」

「頼もしいなリリス。けれど、戦闘中は手出し無用だぞ。」

「分かっておる。やはりそのような所は、昔から変わっておらんようじゃな。」

「誉め言葉として受け取っておく、」

俺は三つの結晶があるのを確認すると、体を巡る魔力を意識して整える。そしてその気配が俺の目の前へ現れると共に、辺りは爆風に包まれた。

「見えんな。」

俺が翼により煙を吹き飛ばすと、緑色の髪をした長身の青年が一本の直剣を片手に立っている。

「お初にお目にかかりまする。私の名前はグラディオ。毒を操る神でございます」

「そうか。そんなグラディオが何故ここに?」

「お分かりでしょう。貴方様の権能を頂戴する為です。ついでにそちらのお嬢様のもね。」

「嫌、だと言ったら?」

「拒否権などございません。」

「なら、、やってみろ。」

「やれやれ、、これだから脳筋は困ります。神でもない貴方が私に勝てる道理などございません。もう少し賢くなられてはどうですか?」

「こっちには現役の神がいるがな、」

「よく存じております。性の神リリス様でございますね。けれどそのリリス様も私には無力です。」

「なにっ!」

「私には色仕掛けは通じません。故にあなた方の勝算はゼロ。権能を奪われ残りカスになったあなた方は路頭に迷う。シナリオは既に完結しております。」

「そのシナリオ、すまんが俺のシナリオじゃないぞ。」

「?」

「俺のシナリオは自分で定めさせてもらう。お前のような者に決められてたまるか!」

「ははは!笑わせますね。貴方は何も出来ないのです。そんな貴方がシナリオは自分で決める?私などには決められたくない?言語道断です。貴方に決定権はございません。」

「ゴチャゴチャと御託を並べている暇があれば掛かってこい。血の気の多い俺達だ。お前ごとき俺が一人で殺ってやろう。」

「かなりの自信ですね。その自信は何処から沸いてくるのやら」

グラディオはやれやれと肩を竦めると、掛かってこいと手招きする。

「久しぶりに本気でやるとしよう。」

俺を自然に取り巻く闇の瘴気は地面を腐食させ、分解させ始めていた。


「毒技・ガス毒、炎痛」

グラディオの赤色をしたガスと俺の闇を含んだ瘴気がぶつかり合うと、それぞれが目に見える範囲を汚染する。

「っ!」

「貴方は私に勝てない!」

グラディオは片手の直剣に毒を同化させ斬りつける。俺はなす術無く右手で掴むと、切り傷は深くは無かった。しかし毒で蝕まれた右手は回復するどころか、ジワジワと痛みを与える。

「私の毒の味はどうですか?」

「お前の性格のようだ。」

「誉め言葉として受けとります」

「っ、」

今度は俺から斬撃を飛ばす。しかし意外と素早いグラディオはそれを難なく避ける。

「だから貴方は勝てないと、」

直剣を巨大化させると、真っ直ぐに振り上げると俺を殺す為振り下ろす。その威力は天地を砕くと思わせた。

「ぐっ!」

武器を取り出していなかったのが不味かった。見事に刃は俺の両腕を切り落とし、俺の胴へ真っ直ぐな深い傷痕を残した。

「だ、大丈夫かエンドルト。」

リリスは全力で駆け寄ってきてくれるが、今の俺は会話できるような状況じゃない。胴につけられた傷は早くも腐り始め、俺の体は毒に侵され始めていた。

「エンドルト、エンドルト。」

「もう死んだのですか?大口を叩いていた割には呆気ないですね。いくら過去の強神であっても所詮古い。私の相手ではありませんね。」

「お主、、、」

「?」

「お主がエンドルトを侮辱することは許さぬ。人の権能を卑劣な方法で奪って意気がるお主にエンドルトを侮辱する資格はない。妾はお主を許さぬ!」

「許さない、許さないとはどういう意味ですか?貴女ごときが私に何か出来るとでも?」

「性の権能を勘違いしておるのう。」

「なにっ!」

「これから見せてやろう。予想を絶する使い方を、、、」

くっ!女に無理させる俺は情けないな。けれど体が動かん。しかし何故か心は折れておらず、心の中では闘志がメラメラと燃えていた。

「リ、リリス、止めろ。」

俺は背の低いリリスの肩を借り立ち上がると、その小さな体を抱き締める。

「お前くらい守らせろ。お前まで失ったら俺は耐えられないぞ。」

「ぅぅ、、」

実はこの権能の本当の恐怖はリリス自身使うのを怖がり嫌がっていた。そんな権能を使わせかけたんだ。俺は謝っても謝りきれない。

「ごめんな。俺が弱いせいだな、、」

「そんなことないぞ。妾を守ってくれたではないか!」

「守った、か、、、、ごめんな。」

俺はそれだけ言うと、グラディオへ向き直った。

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