第115話 宴
「皆席につけ。これより宴をはじめる。今宵は無礼講じゃ!」
「やったー。今夜は飲むからね!」
既に時間がたったこともあり、全員が打ち解けていた。そしてそんな全員の顔には笑みが浮かんでいた。
「エドさん、もっと楽しみましょうよ!」
「そうだな。リアももっと楽しめよ!」
セフィーはエヴァとシャバーニュという酒を酌み交わしており、今だけはエヴァも砕けたしゃべり方だった。
「エンドルト、もっと飲まぬか。お主はもっと酒に強かった筈ではないか!?」
リリスには既に酒がまわっており、顔は真っ赤でテンションも最高潮だ。
「リリス引っ付きすぎだ。俺も飲むし、そんなに急かすな」
「良いではないか、良いではないか。ほれ、くいっといけ」
リリスは純度の高い酒をグラス一杯に注ぎ入れると、それを一気に飲みほした。
「飲み過ぎだリリス。もうフラフラじゃないか。」
「ふやぁぁ、、」
リリスはポテンッと俺にもたれ掛かると、寝息をたて始めた。
「あちゃぁ、、寝ちまったか、、。エヴァ、リリスの寝室は分かるか?」
「へ、、エンドルト様、、えーと、二階の一番奥の部屋ですよ~。と言うか、その呼び方は止めて下さいよ~♪」
「おい、エヴァも大丈夫か?飲み過ぎだぞ。」
「大丈夫ですって、まだこれだけですから~」
エヴァはシャンバーニュの瓶を二本持ちながらそう言うと、酒をグッと飲みほした。
「リア、、エヴァがもし酔い潰れたら頼むな」
「はい」
リアは苦笑いを浮かべながら頷くと、エヴァの側へとつく。けれど当の本人であるエヴァは未だにセフィーと酒を酌み交わしている。
「じゃあ俺はリリスを運んでくる。頼んだぞ、」
「はーい、」
俺は両手にリリスを抱えると、リリスを寝室へと運んでいった。
リリスをベッドに寝かせると、その乱れた前髪を直す。言葉遣いや年齢は歳を重ねていても、やはりこの寝顔だけは大昔と変わらない。
「酒に弱いのも変わらんな、」
幼いながら美しいその顔を眺めていると、昔を思い出してしまう。いつも俺達三人で酒を飲み交わしてはリリスがすぐに酔い潰れてこうやって寝かしに来ていた。
「、、」
「エンドルト、、」
俺が戻ろうと腰を上げた時、後ろで俺を呼ぶ声が聞こえた。
「どうした?」
「特になんでもないのじゃ。ただ、少し寂しいと思うてのう。」
「そうだな。いつもなら、ここで第二回戦に入るのだがな、、」
「そうじゃな。あとで妾の部屋へ来てはくれぬか?」
「別にいいが、、、どうしたんだ?」
「少し二人で飲まぬか?」
「分かった。あとでここに来よう。それとも、俺達二人で客間まで戻るか?」
「そうじゃな。もう少しすれば、妾は客間へと戻ろう。それまでに若者達を寝かしつけなければな、」
「そうだな。こんな老人達の話には巻き込まぬ方が良いだろうしな。」
「ははは、そうじゃな。妾達の話には若い者達はついてこれまい。」
「それはそうだ。俺は先に戻っておく。リリスも早く出てくるといい。」
ベッドに入ったままのリリスへそう声をかけたあと、俺は一人客間へと戻った。
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これはエドさんがリリスさんを部屋へと連れていった直後のお話。
「くぅ~、主様達も出ていったことだし、もっと飲みましょう~」
「いぇーい!エヴァー、もっと行こうよ!」
「セフィーさんもエヴァさんも飲み過ぎですよ。もう、十本目じゃないですか。」
既に宴と言うよりも明るい晩酌で、テーブルの上にはシャバーニュの中瓶が大量に転がっていた。
「そんなこと言わないでよリア。私達はまだまだいけるよー。」
「そうですよ~。そんなこと言ってないで、リアさんも飲みましょうよ。まだまだありますよ~♪」
「ちょ、止めて下さいよ、」
エヴァさんは皆のグラスにシャバーニュを並々と注ぐと、グラスを掲げる。
「かんぱーい、」
『かんぱーい、』
流石に乗らない訳にはいかない。ボクもグイッと一息で半分程飲みほすと、一気に体が火照ってきた。
「ねえねえリアさん。リアさんってエンドルト様のことを慕っているのですか~?」
「っ!」
「エヴァー、それはリアには禁句だよ。だって、これでもかってくらいラブラブだもんねー」
「、」
「そうなんだ~。リアさん、頑張ってくださいね~♪」
「もう、二人共!!これ以上止めて下さいよ」
お酒の勢いもありボクの顔はドンドンと赤くなっていくのを感じる。それなら、!
「そう言うセフィーさんだって、!」
「リア、それ以上は!」
「どうしたの~?」
「んー、んー、!!!」
エヴァさんはセフィーさんの後ろへ回ると、セフィーさんの口を塞ぐ。
「セフィーさんだってエドさんのこと好きなんでしょー。知ってるんだから!」
「ちょっとぉ。それ以上は止めてよ!私さ既に諦めているんだから!」
「え~、セフィーさん諦めてるの?まだまだ余裕はあるよ~。頑張って!」
「エヴァまでー、止めてよ」
「セフィーさん、また、お酒のペース上がってますよ!」
「仕方ないじゃない。こんなの、お酒が無かったら耐えられないよ、、、」
セフィーさんは顔を隠すと下を向いて呟く。
「セフィーさん、それは口実でしょ。分かってますからね。」
「あはは、やっぱりリアにはバレちゃうんだ。確かにエドのことは好きだけど、割り込むような無下なことはしないよ。さあさあ、皆もっと飲もうよー!」