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第114話 リリス

流石にボロボロで武器も砕けたまま放置するのは危ないので、俺達の後ろを後ろ手に縛りながら歩かせる。けれど、いつでも切れるであろう普通の縄を切らない所を見れば、大人しくついて来るつもりなのだろう。

「二人共、この扉を開けた所がリリスの部屋だ。心して掛かれ!」

「はい!」

「うん!」

二人の声を頼もしく感じながら扉を開けると、そこは、、、

「うわっ!」

「エンドルトー!会いたかったのじゃ!何処に行っておったのだ。何故妾に会いに来てはくれなかったのじゃ。」

小さな羽をパタパタと羽ばたかせながら高速で飛んできてはそう言いながら頭を擦り付ける。俺は出っ鼻を挫かれたようで、タイミングを失ってしまった。

「リリス。すまんな、、」 

「エンドルト。妾はお主の為なら何だってしよう。けれど、妾にだけは何も隠さないで欲しいのじゃ。」

「、、、」

俺は隠し持った短剣の切っ先でさえ向けることは出来なかった。こんなにも純粋な目で見られては、俺は何も出来ない。

「やはり、お主は甘いのう。」 

「っ、」

「にひひ!これは仕返しじゃ。」

抱きつきながらトンっと殴ると、俺の持つ短剣を適当にポイッと投げ捨ててしまう。

「お主の目的は分かっておるし、お主のその者へ向ける気持ちも分かっておるつもりじゃ。」

「すまん、リリス」

俺が子供のような体格のリリスに頭を下げると、ちょうどリリスの顔のあたりへと頭がくる。

「そのようなことはどうでもよいのだ。お主が来なければ会いに行こうと思っておったのじゃ。久しぶりに会えて嬉しく思うぞ。」

「やはり口が上手いな。俺の殺気なんぞすぐに消されてしまう。」

「そうじゃな。それも、お主の良い所なのかもしれぬな。それはそうと、お主が従えるおなご二人は何者なんじゃ?」

リリスは俺の後ろに控える二人を不思議そうに見つめると、二人へと歩み寄る。

「お主、名はなんと申す?」

「リアです、、」

「そうか。リアか、、、妾は性の神リリスじゃ。こん幼子のような見た目じゃが、お主達の数千倍は生きておる。」

「、、、」

「おぬし、エンドルトを、、、いや、止めておこう。エンドルト、妾の屋敷へ招待しよう。ここで待っておれ。」

リリスは振り返ると、小さな羽をパタパタと動かしながら何処かへ飛んでいった。ちなみに、リリスには悪魔のような黒い羽と天使のような白い羽を合計四枚生えており、それは男女の両面性を象徴しているらしい。

「エンドルト様、ありがとうございました」

後ろ手に縛られたままだが、エヴァはそう言うと深く頭を下げる。

「どうしてお前達親子は俺の心を揺さぶる?」

俺は後ろ手に縛った縄を切る。リリスもあのようなことを言うが、性根はもっと純粋だ。どうやら俺は人の純粋さに弱いようだ。

「それはエンドルト様が誰より優しい方だからですよ」

「、、、」

「だからリリス様もあのように気安く話し掛けられるのです。それに、信じていますしね。」

「、、、敵わないな。」 

俺が後ろを振り向くと、納得げにうなずく二人がいて俺はやれやれと肩をすくめた。


「エンドルトー、、準備出来たぞ。お主達二人も来るとよいのじゃ。」

俺達三人をエヴァが先導して進む。既にエヴァの封印も解いている。

「リリス、、一応主であるリリスが先導するべきじゃないのか?」

「大丈夫じゃ。エヴァは優秀じゃし、久しい旧友に会えたのじゃ。今日くらいは多目に見てくれようぞ」

「そうだな。久し振りに酌み交わしても良いかもしれんな」

「そうじゃ、そうじゃ。今日の夜は宴じゃ!」

俺とリリスの中では既に今夜の予定は決まっており、二人で今から盛り上がっていた。


リリスの屋敷はそれはそれは広く、全体的に白を基調とした左右対称の形で無駄を省いた洗礼された見た目だ。これはやはり本人の性格だな。

「早く入らぬか。なに突っ立っておるのじゃ?」

「すまんリリス。綺麗だなと思ってな、」

「嬉しいことを言うではないか。おだてても何も出てこんぞ」

「分かっておるさ、」

俺も旧友との再開に気分が高まっているのだろう。自然と笑いが込み上げてきていた。


「一応ここが客間じゃ。夜は二階にある部屋を使ってくれて構わないんじゃが、この屋敷にはエヴァのような妾の僕が数人住んでおる。くれぐれも不祥事がないように頼むのじゃ」

「分かっているさ。リリス、俺はエンシーまでしか知らないんだが、それからは増えているか?」

「あれからは増やしておらん。妾とてもう古株と言われても仕方がない者じゃ。簡単には増やせぬ」

「そうだな。まあ、俺が封印されていた間一切増やしていないのは驚きだかな。」

「そうかのう。そう言えば、お主の僕達も例の場所でお主を待っておる筈じゃ。助けに行ってやるといい。」

「そう、だな。」

「、、、」

「、、、」

「もういいのじゃ。エンドルト、あまり自分を責めてはダメなのじゃ」

「あぁ。もう割りきっているさ。」

周囲を静かな静寂がつつんだ。

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