第113話 五匹目・エンダーヴァルキリア
ここのボスであるリリス。リリスへと向かう道にはあと一匹だけ敵がいて、絶対に合間見えなければならない。
「この階段を登れば、、」
そう。この階段を登ればリリスの部屋だが、その前の部屋にはここ最強の敵であるエンダーヴァルキリアが待っている。
「行くか、」
俺達は敵の思惑通りと分かりながらも、その階段を登り始めた。
「来ましたね。エンドルト様。」
「久しぶりだな。エヴァ。」
「その呼び方は止めて下さいませんか。私とて、もう子供ではないのです」
「そう言うなよ。俺はお前が小さい頃から知ってるんだからな」
「それはそうですけど、、、、しかし、エンドルト様は我が主に危害を加えるつもりなのでしょう?」
「、、、」
「それならば私はエンドルト様、貴方を通すことはできません。時に主の盾となり矛となる。それが私。エンダーヴァルキリアの務めです!」
エヴァは大剣を構えると、高らかにそう叫ぶ。その姿は神々しく、まさに神の守護者と言えた。
「それならば俺達も挑もう。俺達は人として、お前達神へと挑む!」
「!」
俺達三人はそれぞれの得物を手に、エンダーヴァルキリアへと挑む。
「はあっ!」
「ふっ!」
エヴァの大剣と俺の両刀がぶつかり合い、ガキンッという金属音が響く。
「っ!」
その瞬間、俺とエヴァを闇の魔法が襲う。光の天使であるエヴァにとって闇は天敵であり、大きなダメージを与えた。そして闇の神である俺にとってこんな魔法は薬にさえなりえる。
「エンドルト様、出来ることなら私は貴方を傷付けたくはない。どうか引いては下さいませんか?」
「それは無理な相談だ。」
「そんなっ!」
剣と刀のぶつかり合う音が響き、魔法の嵐が俺達を包む。
「貴方が私達を好きで傷付けようとしているとは到底思ってはおりません。どうか、」
「俺だって考えたさ。リリスには世話になったし、お前だって可愛い娘のようにさえ思える。しかし、、俺が優先できることには限りがある。すまん、」
俺は刀を地へ突き刺すと、銃口をエヴァへと向ける。
ドンッ
「俺だって傷つけたくはないさ。けれど、俺も助けたい者がいる。」
ドンッ、ドンッ
俺は続けて銃弾を放つと、そのまま刀を抜き斬りつけた。
「エンドルト様。私も決意しました。私もエンドルト様のことはお父様のように思っておりましたが、主を守ることこそが私の役目です。エンドルト様、覚悟してください!」
エヴァはその真っ白な翼を広げると、とんでもないスピードで俺に迫ってくる。
「忘れてませんか。ボク達だっているんですよ。」
俺の後ろから闇の弾丸が飛び、エヴァを襲う。
「小賢しい!所詮人である貴女達は私に勝てない!」
「それはどうだろうな。」
俺は闇弾に惑わされていたエヴァを蹴り飛ばすと、それに追い打ちをかけるように闇裂・改を振り下ろす。
「エンドルト様は何故人であるその者達を従えるのです。最高神である貴方が何故!」
「それが分からなければ、お前は成長できない!」
ガキンッ!
「そんなことはありません。あの者達を従えるエンドルト様は何を考えているのですか!?」
「さあな。考えてみろ。」
俺は再び蹴り飛ばすと、、
「闇技・闇ノ刃嵐」
刃のように鋭利な先をした闇弾がエヴァを包み、切り傷を与える。
「ぐっ、、」
俺はその苦しそうな声に若干力を緩めてしまった。しかしそれが俺の汚点だった。
「はあっ!」
「っ、」
真っ直ぐに振り下ろされた剣を受け止め、弾き返す。そして追い打ちをかけようと足に力を込めたが、、「ぐっ、」苦しそうな声を思い出すと、どうしても刃を向けられない。
「っ!」
「、」
エヴァの光による魔法を闇で相殺するが、そのあとの反撃が俺には出来なかった。結局、魔法を盾にしたエヴァに吹き飛ばされてしまう。
「エドさん、何故攻撃しないんですか?」
急いで駆け寄ってきたリアは俺に被さる瓦礫をどけると、そう言いながら俺を起こす。
「ごめん。俺には、、」
「それなら、ボクがやります。エドさんが出来ないのならボクしかいませんから、」
俺は出来ればリアには剣をとってほしくない。けれど、剣を持たなければならない以上、強くなる方法を教えるつもりだ。しかし、俺のせいで剣を持つことは許せないんだ。
「エンドルト様、これ以上私は傷つけたくない!」
「、、、」
エヴァの声が聞こえる。俺は誰よりも知っている筈だ。この世に全てを得る者なんていないことを。助けたい者の為、俺は娘ともいえる者に剣を向けよう。
「エンドルト様っ!」
俺は神龍・闇帝へと変化すると、闇裂・改を斬りつける。
「っ!」
エヴァは俺の変化についてこれていない。これならまだやれる。
「ぐっ!」
俺は変化したことにより上乗せされた身体能力で蹴り飛ばすと、追い打ちをかけるように銃弾を浴びせる。
「はあっ!」
「っ!」
ガキンッ!
「はっ!」
「っ!」
ガキンッ!
ついにエヴァの大剣にヒビがはいり、砕けてしまった。そしてがら空きになった体へと闇裂・改を、振り下ろせなかった。
「エンドルト、様?」
「これ以上、俺の邪魔はしないでくれ、、」
俺はエヴァに闇による封印を施すと、先を急いだ。