第105話 相談
「あれ、、、トラストがいるな、」
玄関をくぐると、客間に入っていくトラストが見えた。その後ろ姿はどこか小さくなっている。
「昨日は、そこまで酔わなかったのでしょうか?」
「どうだろ?二人も恐らく客間にいるだろう。本人に聞けばいい。」
「そうですね!」
俺達はそのまま客間へ入る。すると、片方のソファーには若干機嫌の悪いセリーナさんとシュンとしているトラスト。もう片方には苦笑いを浮かべるセフィーと緊張で固まっているアーロンが座っている。やはりトラスト、何かあったな。
「んー、、セフィー、どういう状況だ?」
「えーと、、、長がなかなか起きてこないからお母さんが怒って起こしに行ったんだよ、、」
セフィーはセリーナさんの方へ一瞬目を向けると、そうやって小声で説明する。
「当たり前でしょう。御客がいらっしゃるのに主である長が起きないなんて失礼にも程があります」
「そ、そんなことを言っても、わしは昨日酒を飲んでたんじゃ。仕方なかろう。」
喧嘩が始まるな、、、、俺達は知らない。
「では何故御客が泊まってらっしゃるのにそんなにもお酒を飲むんですか!」
「そ、、それは、」
「セフィー、、アーロンはどんな調子だ?」
俺は二人の喧嘩を無視し、セフィーに入ってからのアーロンについて尋ねる。二人の喧嘩は日常茶飯事なのか
「この通りなんだよ。長に会って緊張しちゃって、、」
「そうか、、おーい、アーロン、アーロン。」
「は、はい!」
「これが竜人達の頂点だ。特に緊張するような相手でもないだろ?」
「は、はい。」
「長さん、奥さん。一応客人の前ですよ」
「失礼しました、アーロンさん。エドさん。」
「は、はい!」
「セリーナさん、謝らなくてもいいですよ。実質、起きてこなかったのはトラストですし。」
「エ、エド!」
「そ、そうですか。ありがとうございます、エドさん、」
「、、、、」
「まあ、、ダメージを受けてるトラストには悪いが、アーロンについても相談しなくてはな」
俺はそう言うと、ソファーに座らせてもらう。それと同時にセフィーは俺達の後ろに立ち、リアも同じように後ろへ立つ。
「アナタ、、取り敢えずはおいておいて、エドさんの話を聞いて下さい。」
「仕方ないのう。どうしたのじゃ、エド。」
「早速だが、この子供をここで預かってほしい」
「唐突じゃな。それは、何故じゃ?」
「強くなりたいんだと、」
「?」
「だから、強くなりたいから教わりたいんだと」
「それだけか?」
「そうだが、」
「その為に、長のわしにか?」
「あぁ。何か問題でもあるか?」
「いや、、、そう言う訳ではないが、」
「なら、頼む」
「仕方ないのう。」
「ありがとう、」
「はっ、はっ、はっ、、エド、おぬしに礼を言われるとはな」
「あと、もう一つ。」
俺は長の耳元へ寄ると、、
「このアーロンは、俺達、、いや、長が知っている伝説上の龍の末裔だ」
「っ!」
「頼む、」
「男に二言はない!」
「そうか。なら、改めて任せる」
トラストはこれからの事を考え込むような仕草を見せたが、それもすぐに止めると俺に向き直り、それからアーロンへと目を移した。
「おぬしがアーロンじゃな?」
「は、はい!」
「緊張などせずによい。わしは確かに強いがもうただの老い耄れじゃ。それよりも、おぬしは強くなりたいのじゃな?」
「はい!」
「良い覚悟じゃ!」
トラストは満足気に頷くと、俺に向き直り、、
「わしが責任を持ち受け持たせてもらおう。おぬしは目的を果たしてくると良い」
「ありがとうトラスト。」
俺はそう言うと、一度話を断ち切ることにした。
「さあ、、、ひとまず話は終わりだ。もう一戦、セフィーはあと少しだけつきあってくれ。」
「うん。約束だしね!」
「ありがとう。アーロンも、しっかりとやってくるといい。」
「はい!」
「俺とリアは昼食の準備でもしようか。セリーナさんはトラストさんとアーロンのことについてお願いしますね。」
「は、はい!」
「エド、、手際が良いな。」
「まあな。俺達は今日のうちにここをたつ。それまでにアーロンに対し出来ることはやる。」
「一つ聞いてもよいか?」
「?」
「何故、あの子供にそこまで拘るのだ?」
「、、、、、」
「言えぬのか?」
「理由なんて簡単だ。あの子供、アーロンの目を見ると、手伝ってやりたくなった。それに、龍だしなら」
「同種だからか?」
「そうだな、、、、そうしておこう。」
「、、、」
「、、、」
「、、、」
「リア、、行こう。セリーナさん、、キッチンは何処ですか?」
「あそこの扉をくぐってすぐです。キッチンは広く、棚等の量も多いので分からなければなんでも言って下さいね」
「分かりました。では、アーロンのこと、お願いします。」
「はい。」
俺はリアと二人でキッチンへ向かう。アーロンとセフィーは外で戦闘訓練。セリーナさんとトラストはアーロンについて相談。俺達も自分の仕事を完遂させなければな。