第101話 修行
「とりあえずは魔力保有量を上げなきゃな。」
「魔力保有量とはなんですか?」
「魔力を体の中に持てる量のことだ。魔力保有量は魔力を使えば使うほど多くなるが、一度に使いすぎると魔力さえ使えなくなる可能性がある。これだけは注意だな、、」
「では、ひとまずは魔力の行使ですね!?」
「そうだ、、アーロンは魔法を使えるか?」
「はい。五大属性全部使えます。光と闇だけは使えませんけど、、」
「そうか。じゃあ、とりあえずは俺に炎魔法でも使ってくれ。」
「良いんですか!?」
「ああ、大丈夫だ。」
「分かりました。いきますよ。炎よ集いて燃え盛れ」
アーロンの手を中心に炎が渦巻くと、俺へと真っ直ぐに飛んでくる。
「闇技、闇ノ閉鎖」
闇の薄い壁が形成され、炎は壁に当たった瞬間消失した。余談だがこの前まで無詠唱だったのを何故わざわざ名前を唱えているかと言うと、理由は簡単だ。闇の権能によるごり押しではなく闇技を使っているからだ。
「っ!?」
「良い忘れていたな。俺は闇魔法が使えるのと、無詠唱も可能だ。」
「本当ですか!?」
「ちなみに光魔法もな。」
俺は光弾でアーロンの後ろの木々を撃つ。光弾は狙い通り落ちかけの葉に当たり吹き飛ぶ。
「エドさん、一つだけ質問してもいいですか?」
「なんだ?」
「本当に人ですか?」
「、、、、。どうだろうな。アーロン、お前がリアとまともに殺り合えるようになれば教えてやる」
「、、、頑張りますよ!」
俺はそのやる気に満ち溢れた瞳を確認する。これで破滅することはないだろう。
「まあ、俺だって頑張れと言って放置するような鬼じゃない。とりあえずは戦闘の感覚を掴んで、俺と一緒に魔物でも狩りにいけばいい。」
「はい!」
「じゃあ、リア。審判を頼む。セフィーはセリーナさんに会ってこい。絶対に直行でここに来ただろ?」
「えー、、分かったよ。すぐに戻ってくるからね!」
「アーロン、、まずは肉弾戦でいくぞ。格闘術だな。」
「エドさん、、、本気、ですか?」
「いや、、言ってしまえば悪いが、今の俺の本気ではアーロンは数秒ももたない。だから力は抑えるが、、、アーロン、本気で掛かってこいよ」
「はい!」
俺達二人の会話が終わると、辺りは静かな静寂に包まれる。やはり戦闘経験が浅いとはいえ、アーロンも目付きは武人そのものだ。
「では、、、、、始め!」
今回の試合は権能や魔法無しの肉弾戦。俺も当然神力や魔力は使わない。だからと言って俺が遅れをとることはない。
「っ!」
左側からの真っ直ぐな拳、、俺はさっきと同じように手を添え逸らそうとするが、添えた手を掴まれる。
「学習だな、、けれど、」
手首を回し拘束をほどくと逆に手を掴み、投げ飛ばす。
「すぐに対応出来ることは感心だが、それからの行動には若干遅れが出ているな。」
「、」
アーロンの戦意は衰えないようで、次に放たれた拳は的確に急所をつく軌道だ。
「当たれば確かに有効だが、当たらなければどうってことはない」
吸収した魔物の能力。加速で急速に移動すると、アーロンの後ろへ回る。
「相手がどんな奇想天外なことをするかなんて分からないだろ?」
俺は軽く背中を押すと、前へ移動し体を受け止める。
「っ!」
アーロンが肘で俺を打とうとするが、俺は手を引いただけで避ける。
「この試合の目標は俺に一発当てることだな」
俺はそう言うと、両手を前にして構えをとる。
「っ!」
アーロンの右手から繰り出される拳を左手で受けるとがら空きの胴へ手を当て衝撃を叩き込む。
「っ、、」
「防御面も鍛えなければな、」
俺は伸びたままの腕を掴むとそのまま投げ飛ばす。そして飛んでいったアーロンを先回りし捕まえると、もう一度投げ飛ばした。
「どうだ?力が入りにくくないか?」
「はい。力一杯握っても満足な力が出ません。」
「だろうな。それは俺があげたネックレスの効果だ。これは上限を超えた力を抑える能力があり、肉体には行使しきれなかったアーロンの力を抑える魔法具だ。」
「そうなんですね。なら、この魔法具が外れると能力は戻るんですね」
「そうだ。けれど、アーロンの力は十分体を破滅させる程の力があった。少し間違えば自分の力で体をボロボロにしてしまう。くれぐれも外さないでくれ。」
「はい!」
「そろそろ魔法戦に変えるぞ。肉弾戦ばかりだと疲れるからな、、」
「はい!」
「リア、、魔法戦の方は頼めるか?俺の魔法は威力が高過ぎるからな、、」
「はい!分かりました。魔法はボクの得意分野ですからね♪」
「と言うことだ。リアはこんな見た目だが、光や闇を合わせた全属性の魔法が使える。油断したら数秒持たないぞ。」
「ちょっと、こんな見た目ってなんですか、こんな見た目って!」
「まあまあ、、こんか可愛らしい見た目だが油断しちゃ駄目だぞって意味だ。」
「!」
「じゃあ二人共準備しろよ。いくぞ!」
「、、、」
「、、、」
「始め!」
ドカーーーン!!!
「龍って、魔法の方が得意なのか?」
炎や氷が吹き荒れる中を見ていると、二人の魔法技術の高さが伺えた。