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動き出す怪傑

大変間があきました。続きの投稿をしたいと思います。



「大量大量・・・・。」


 満足げにヴィノン宅へと向かう五人。


 その手には大量の金貨があった。


 彼らがオークを大量に狩った際の報奨金なのだ。


「しかし・・・さすがに驚かせたか。悪いことをしたな・・・。」


 オークと遭遇したらランク的に敵わないから逃げるようにと受けていたのに、遭遇し、返り討ちにしたという。


 しかもその数…正確に集計したら四百体。しかも、彼らの上位種であるオークキングが率いる群れで、村どころか、一般の街でも全滅しかねない危機だったのだ。


 カレンに討伐したオークの討伐証明のための刈り取っておいた耳を見せた。


 オークキングの分もだ。


 ちなみにオークキングはランクBである。それを含めた群れは大変凶悪で、普通ならランクBのパーティーが複数、または軍や騎士団が動員したうえで。討伐するほどである。


「…あなた達が規格外ということはよくわかったわ」


 カレンはその異常なまでの成果にあきれ果てていた。


 その際に色々と考えていたようで、その考えにヴィノンが首を傾げ、レノンとゼノンは目つきを鋭くさせた。


「…実力だけでもBランク相当は疑いようないか。しかも・・・本気だしていないでしょ?」


『えっと・・・』


 カレンの追及に目をそらす五人。そう…五人ともだ。


 その様子をすぐに見て、皆は驚く始末。


「・・・ねえ。ヴィノン君もそれだけの実力があったの?マリアちゃんもあなたがそんなに強いと聞いていないし、そんなそぶりは見せなかったよね?」


「えっと・・・その・・・。自衛程度には・・・」


 探るような視線にヴィノンは歯切れ悪い返事。


「んん?お前・・・オークを一瞬で五体仕留め・・・」


 ゼノンがヴィノンの実力をかたろうとして、言葉を止めた。


 ヴィノンが視線で止めたのだ。 


 その表情は必死だ。必死で己の実力を隠している。


「えっ?オークを一瞬で五体仕留める?」


 その言葉に驚くカレン


「ヴィノン君・・・?あなた・・・。もしかして、実力を隠して・・・」


「いやいやいやいや・・・ゼノンの見間違えだって!!」


 そして、逃げるようにその場を後にしたのだ。





「・・・すまなかったな」


「まあ、実力を隠していることを教えなかったこっちも非があるから」


 ゼノンの謝罪に対し、苦笑しながら、己の迂闊さを反省するヴィノン。


「だが、みんなの実力は少しだけ把握できた。少なくても冒険者ランクAはあるね」


 ガノンは満足そうだ。


「少なくともお互いにこの十五年…努力してきたわけだ」


 アノンもそうだ。


「・・・ああ」


 互いに備えてきた。十五年後・・・皆でパーディ―を組めるように。


「十五年・・・いろいろあったからねえ」


「うん。本当に・・・」


 遠い目をする皆。


――――ヴィノンは知っているけど、他のみんなも負けじと濃い十五年だったみたいね。


「ああ。濃かった」


「うん。色々ありすぎた。でも・・・この世界の住人になれた十五年間だと思う」


 ゼノンもまた振り返る。


「そうだね。また十五年の間に何があったのか教えてよ」


「そうだな。まあ…まずは飯だ!!楽しみだぞ」


 レノンの言葉に皆が苦笑。


「・・・そうだね。」


 そういいながら、彼らは家にたどり着く。


「まあ、狭いけど入って。」


 ヴィノンが皆を中へと案内すると、エメラルダがいた。


「おっ・・・ちょうどよかったわ。」


 エメラルダはエプロンを外し、ヴィノンに話しかける。


「実は私も昔馴染みがやってきてね。この後飲むことにしたの。まあ…だから申し訳ないけど、後片付けはお願いしてもいいかな?」


「へえ・・・。母上の昔馴染み・・・。あってみたいな」


 ヴィノンはこの世界に生まれ落ちてから十五年の間にエメラルダの昔馴染みにあった記憶がない。


 ハイ・エルフだけあり、おそらく長生きしてきた自分の母親の昔馴染み。


「そうね・・・。また機会があれば・・・ね」


「楽しみにしている」


 そういってエメラルダは出かけていく。


 そして、前世からの友だけの食事会が始まる。


「・・・・・・んんこの味は?」


 だが、ガノンがある料理を食べ、首をかしげる。


「どうしたの?」


「ああ・・・いや・・・」


 考えることを一度中断するガノン


「・・・まあ、とにかく食べよう。何か・・・変なフラグが立った気がするけど」


「その手ならすぐに回収されるだろ。気にしても無駄だ」


「こういう時お前たちの決断の早さがうらやましい」


「まあ、せっかくだし楽しもう」


「料理もまた科学。いただきます」


『フライングはやめい!!』


 アノンに突っ込む他四人。


「…フッ、ハハハハハ…懐かしいわ」


「だな。楽しもうじゃないか。」


 こうして、食事会が始まった。





 



 そして、ある酒場で、エメラルダ達は感慨深いため息をついていた。


「あなたに子供がねえ」


 メイサが酒を手にしみじみとしている。


「うん。何とか生き延びて、自慢の息子を授かりました。でも、もう一つ驚いたのは・・・アリーシャ!!」


「何?」


 豪快に食べまくっている狐耳金髪の獣人に意識が向けられる。


「あんたまで復活なんてビックリよ。」


「あーいや・・・、」


 アリーシャは気まずそうに頬をかきながら、どういうべきか考え・・・。


「封印から出てきたときにいろいろあってねえ」


「だいぶ省略したわね!!」


 エメラルダが優雅に酒を口にしながら告げる。


「…でも、あなたたちが出てきたということは、あれはどうなっているの?」


「封印なら私も確認したわ。まったく誰もいない封印の中をね。龍の巫女―――レイアちゃんもいなくなっていたわ」


 ヒメもまたその話に加わる。


「レイアちゃんまでいなくなっているって・・・それだと、あれが封印から抜け出しているというの?黄金の獣帝と白銀の龍帝が・・・」


 顔を青ざめさせるエメラルダ。


「緊急事態じゃないの!!世界が滅ぶじゃない!」


 封印していた存在はそれだけ危険な存在だった。


「ええ。でも・・・。封印を確認したのは一年前よ?少なくともその時点で誰もいなかった」


「一年前?あれ?・・・。でも・・・」


 一年前にはもう封印から出ていた。その事実にエメラルダは戸惑う。


「そこが不可解なのよ。あれは狂える破壊神。抜け出したら間違いなく大暴れするはず。でも・・・全くそんな話は聞こえない」


「・・・予言の八大破壊神。その中で最強の二大帝か・・・。同じ破壊神としてどう思う?」


「・・・わからないわ。私もどうしてここにいるのかも」


 ヒメは深くため息をついている。


「でも、あの二体の力は私のそれとはまた次元が違う。私はムーンミスリルを司っているけど…あの二体はサンオリハルコンとスカイプラチナを司るから」


「・・・それを聞くだけでもどれだけ鳥肌が立つか・・・。相手は二大最強金属の塊だし」


「勝つどころか生き残ることすら困難な戦闘でしたからね。あれは・・・」


 其の場にいた皆はシミジミと振り返っていた。


「…せめて私の妹がいればよかったのに。あの子の行方がまだわからない」


「深き青――マリンアダマンタイトか」


「うん。他にもまだ知らない破壊神が四体いるわ。予言が正しいならもうすぐ集結すると。」


 それは創造神が示した予言。


「七つの神の金属と伝説の石を司る八体の破壊神揃いしとき、世界の危機が訪れんか」


 八体の破壊神の集結がもたらす世界の破滅とされる予言。


「…行方を追わないとね」


「うん。こっちも旅しながら捜索しようと思っていたし。私の妹と、レイアちゃんの捜索もしないといけない」


 その危険性をこの場にいた四人はよく知っている。その中で最強の二体はまさに破壊神だったのだから。


「私も合流するわ。ヴィノンももう成人。一人立ちする頃合いだし。今日パーティーを組んだ皆と旅に出るつもりだと思う。なら…私も」


「そうか・・・」


「あの子を巻き込みたくないし。このままのんびりと大好きな歌を歌いながら平和に・・・」


 エメラルダは願っていた。


 自身の最愛の息子の平穏な人生を。


 だが、運命とは残酷なものである。ヴィノンは転生者。


 それもこの世界を救うために呼ばれた五人のうちの一人なのだ。


 パーティーを結成したのも、本格始動の時が来たからだと。


 それをエメラルダはすぐに知ることになる。


「さあ、今日はとことん飲むわよ!!・・・!?」


 この街に起きる最大の事件とともに。


 エメラルダは外にある異様な気配を察知し、動きを止めた。


「・・・みんな」


『・・・ええ』


 再会の宴は唐突に終わりを告げる。


 外から感じられたおぞましい気配によって。






 夜…にぎやかな繁華街は大パニックに陥っていた。


 それは突如現れたモンスターがいたからだ。


 それを率いるのは額に赤い紋章を輝かせている緑色の肌の一本角の鬼。


 手には頑丈で巨大な鉄のメイス。


「なんでこんなところに魔印持ちのオーガが?」


たまたま遊びに来ていた一人の冒険者は皆に逃げるように指示を出す。


「・・・ニンゲン・・・イッパイ・・・イッパイコロス。」


 そういって、オーガはメイスを振るう。それに他のオーガたちも続いた。


 このような光景がこの街のあちこちで唐突に起きていた。



 ある場所ではミノタウロス。


 ある場所では骸骨の群れ。


 街は…パニックに陥っていた。




 それは閉める直前だった冒険者ギルドにも届いており・・・。


「マスター!!どうしましょう?」


「緊急依頼を出す以外にありません。皆への連絡を急いで!!領主様にはこちらから許可をとります。」


「はい!!」


 カレンはそういいつつ、念話の魔法の発動準備に入る。


 対象者はギルドカードを持っている者たち。


「…それと、彼へ連絡を取ります」


「はい。これは仕方のない案件かと合図の花火を・・・んん?」


 だが、その前に花火が揚がる。


 それはもう動き出しているという合図。正体不明な彼にどうしても力を借りたいときは

花火を上げることとなっている。


 そして、もう動き出しているときは向こうから花火をあげると。


 この街の守護者である彼とギルドマスターとの取り決めである。


「・・・そうか。さすがにもう動いていたか。他の皆にも連絡を頼む。彼も動き出しているともね」


「はい。あの・・・」


 カレンは足元に魔方陣を展開させつつ、申し訳なさそうにギルドマスターに話しかける。


「わかっている。君の使命を果たしてくるがいい」


「・・・すみません。不謹慎なのはわかっていますが、今が最大のチャンスなので。怪傑ムーンバードの正体を知るための」


 カレンは申し訳なさそうに頭を下げる。


 そうしてカレンは皆に連絡を送る。緊急の依頼という形で。





 冒険者ギルドに入った緊急事態。


 それはこの街の内部で突如現れたモンスター。それの遊撃であった。


「クっ…緊急依頼っていってもよお!!」


 念話で依頼を受けていた冒険者たちが目の前にいるオーガと戦いながら人々の避難を行っていた。


 だが、オーガたち数は多い。


「があっ!?」


 盾役となっていた一人がオーガの棍棒の一撃を一度に複数受けてしまい吹っ飛んでしまう。


「ちぃ・・・やばい!!」


 その盾役の冒険者を助けようとした彼だが、そこに無数のオーガたちが襲い掛かってくる。


 並みの冒険者だとパーティーを組んで倒すようなオーガ。ランクCのモンスターが一斉にやってくる光景は悪夢といえよう。


 しかもそれが街の中でだ。


 彼は己の死を幻視した。あれだけ大量のオーガに襲い掛かられ、死ぬ以外の選択肢を思い浮かばなかったのだ。


 それでも、せめて盾役として頑張ったその男だけは助けようと一歩踏み出す。


 それは彼なりの小さな意地。死を覚悟した男の姿だった。


「・・・・・・あなたのような人は死んではいけない」


 その言葉とともに男の前に一人の男が現れた。


 銀色の羽がついた青くつばの大きな帽子。


 なびく青いマント。


 動きやすいレザーブーツを履き、来ている衣装は貴族が狩りの際に着る服。


 腿の部分が大きくなっており、動きやすい。


 そして、その顔の口元以外は舞踏会に使われるような白い仮面で隠れていた。


「・・・あんたは・・・」


 その姿を知らない者はこの街にはいなかった。


 それはこの街の守護者。すべての冒険者たちの頂点・・・S級冒険者にして第五段階の聖痕を持つ勇者王の一人。そして、剣聖の一人。


 怪傑――ムーンバード。


 彼の出現とともに、刀を鞘に納める。


「ここはもう終わった。その人たちを頼む」


「終わったって・・・えっ?」


 彼はオーガたちに背を向けるとともに、オーガたちは全身から血しぶきを上げながら倒れたのだ。


 いつの間に斬ったのか?その瞬間を彼は見ることができなかった。


 本当にいつの間にか斬られていたのだ。


「・・・あなたはこれからも多くの人を助ける。そんな気がする」


「ちょっ・・・!?」


 ムーンバードは空気に溶け込むように姿を消す。


 まるで、幻のように消えていったのだ。


「あれがムーンバード。やべえ、普通に会話しちまった。」


 冒険者はしばし呆けていたが、すぐに気を取り直し。倒れている盾役の男に駆け寄る。


 長い夜、最大の守護者が動き出していた。


 モチベーションんがなかなか保てないのがきつい。本島に皆さんはすごいです。

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