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伝説級のアイテムボックスとオーク狩り

すみませんでした!!次話の投稿を行おうと思います。

 彼らは街外の森にある薬草の群生地にやってきていた。


「いや~いろいろあってこのあたりの森は僕の庭みたいなもので」


 ヴィノンの案内によって薬草採取はすぐに終わりそうだった。


「さすがエルフ。森はお手の物か。だが・・・すごいな」


 あたり一面…薬草だらけだった。


「取りまくりたいけど・・・・う~ん」


 もてる量に限りがあるのだ。それが問題点で・・・。


「おっとそうだ。みんなに誕生日プレゼントがあった」


 アノンはバックからある腕輪を取り出す。


「なんだこれは?」


 アノンはそれを他四人に配る。


「んん・・・鑑定・・・って!?」


 ガノンが鑑定の魔法を使用し、優れた目の力と同時に使い、その腕輪を調べ逆に驚く。


「・・・いいのかい?こんなすごいものを?」


「うん。自作することに成功したアイテムボックスだから問題なし」


「自作・・・だと?」


 絶句するガノン。


「にししし・・・驚いてくれたようだね」


 アイテムボックスはマジックアイテムの中で割とポピュラーといえるものだ。


 マジックアイテムや武具にはレア度によってランクがあり、最高位が神話級。その次が伝説級、国宝級 遺産級 希少級 とある。


 アイテムボックスの特徴はその利便性である。自在に物を収納し、それを持ち歩けるというものだ。


 その収納容量、そして機能で、そのレア度が変わる。


 最低でも希少品。製造するにしてもかなりの手間がかかる。材料となる金属がまず希少だからだ。


「ちなみにこれは伝説級―――アイテムボックスの中で最高品だよ。」


『伝説級・・・。』


「ああ…間違いない。それを四つも自作しただと。」


 ガノンの驚愕はもっともだろう。


―――どうやって、神の七大金属を手に入れたの?これを作るには必須でしょ?


 アレスフォーレはヴィノンの右肩に降り立ち、その前提となるある金属の入手先を聞く。


 その金属が神の七大金属である。


太陽黄金のサンオリハルコン


天空白銀のスカイプラチナ


大地黒鋼のガイアダマスカス


 月霊蒼銀のムーンミスリル


星光水晶のスタークリスタル


生命海鉛のマリンアダマンタイト


守護緋銅のヒイロノカネ




 伝説、神話級のマジックアイテムは確実にこの金属で作られているとされるくらいの反則的な性能と特性を持つ金属。


 だが、その金属は大変希少な上に、加工も難しい。そのためにこれを扱える錬金術師や鍛冶師は間違いなく超一流となる。


「作った。錬金術で・・・」


―――――なっ!?


だが、アノンの口から出てきた想定をはるかに超える返答。


その驚きにヴィノンの肩からずり落ちてしまったアレスフォーレ。


 すぐに肩に戻るが、その声には焦りがあった。


―――嘘でしょ!?あれを錬金したの!?


「できちゃった。サンプルからその金属の特性や原子構造を調べるのに触りまくって何度も挑戦してやっと・・・。いや~合金にしているのが多くて大変だったよ」


――――・・・また生前の異能ね。まさか神の金属を再現するなんて。でも、錬金術では無理よ?一体・・・


「その辺は企業機密で。額にこれがあることも含めて」


――――・・・そうか。賢者の石。それがすべての答えね。


 アノンの額に輝く赤い血のような石。それを見てアレスフォーレは全てを悟る。


―――彼の弟子・・・か。とんでもないところに転生させちゃったもんだわ。まさか神の金属を錬金できるなんて。


 それは錬金術師として超一流という領域すらすっ飛ばした所業。神の領域である。


「錬金できるくらいにすべての特性を知り尽くしているゆえに、加工も簡単だったわけだ」


 本来なら錬金するなど不可能といえる神の七大金属。それを錬金で作り出す彼はまさにこの世界では異常といえる存在だった。


 ちなみに前世からアノンはこういったアイテム製作は大好きである。仕事もモノづくりで、戦闘も多種多様なアイテムや銃、ボウガン、弓矢などなどのそれを生かせるものを使うのを好んでいた。


 トラップも大好きである。


 その辺が凝り性で、リアルでも技術者をやっている。


「・・・そうか。あとで、そっちに依頼していいかい?お金は言い分だけ出す」


 ガノンもまたその異常さを痛感していた。


 だからこそお願いがあった。


「へえ。何を作ってほしいの?」


「このマジックボックスを妹にプレゼントしたい。もう一つ用意してもらえないか?」


 その言葉に皆が驚く。


「・・・年子の妹ももうすぐ誕生日なんだ。これを送ったら喜ぶかなと」


「ならもう一つどうぞ」


 と気楽にもう一つ渡すアノン。


「っていいのかい?!しかも、まだあったのか?一体幾つ作って・・・」


「まあ、その点は結構な数を作っているから気にしないで。お金も別にいいから」


――――気しないほうが無理よ。伝説級のマジックアイテムを結構な数を製作・・・。


 卒倒しそうになるアレスフォーレ。


「それにこれは通信機も兼ねている。相手に向かって念じるだけで念話という形で会話できるから。他にもウインドウ表示で、何が入っているのか確認できる機能に、他にも色々と仕込んであるから、必要になったら教えるから楽しみにしてね。あと、仲間ができたら配ろうと思っている。多分…今いるメンツ以外にも仲間ができそうだから」


――――――伝説級のマジックボックスに別の機能まで付加。それもいくつも。下手したら神話級じゃないの?なんて子よ・・・。


「ありがたいが、逆に恐ろしくなってくるな。その色々の部分も気になる。それにこんな凄まじいものをただというのは逆に気が引ける。対価をあとで考えさせてくれ」


 ガノンは冷や汗を流しながら、妹の分のマジックボックスを己のマジックボックスにしまう。


「・・・そうか、ならこっちも依頼するか」


 レノンは腰の後ろにさしてあった剣を差し出す。


 それは普通の人が使う直剣と同じくらいの長さと大人の男性の腿が隠れそうなほどの幅広さと頑丈な盾のごとき厚みを兼ね備えたブロードソードであった。


 刀身と刃は黄金である。


 もっともレノンが大きいので、その剣がショートソードくらいのサイズに見えてしまう。


「ええっと・・・その剣を見せてもらえる?」


「ああ。但し、俺は剣から手を放すことはできない。それは理解してくれ」


「なんで?こっちも力はある程度あるから持つことくらい・・・・・・・えっ?」


 剣に触れたアノンが絶句。


「・・・ナニコレ・・・正気なの?」


「・・・んん?何々・・・・・・ッ!?」


 ガノンも気になったのか鑑定と目の力で見て、絶句。


―――――・・・・・・嘘でしょ?


 アレスフォーレに至ってはすでに混乱している。


「お前、なんでそれを平然と持つことができる?…いや、それが答えか。脳筋極まりないな」


「・・・やったことがあるから可能だけど・・・大丈夫?」


「これを手にして全然平気だからこそ、頼んでいる。全然物足りないのだ」


『・・・・・・・・』


 まるで化け物を見るような目でレノンを見る二人と神の一柱。


「わかった・・・。こっちは超一流の鍛冶職人でもある。これを超え、そして君が求める逸品を作って見せよう。お題はいらない。ある意味試せなかった一つの実験をしたかったから、その協力で」


「その過程…見学してもいいかい?呪鍛も手伝えると思うよ?」


 ガノンの申し出にアノンは是非頼みたいといいつつ、剣を見る。


「まさか実在していたとは・・・。こんなイカレタ剣が。普通神でもこんな剣を作ろうとは思わないよ」


―――――ええ。その通りよ。私達でさえ扱えないわ。


 神様もそう断言するのだから、本当にイカレている武器らしい。一見すると何も変わりない剣なのだが。


「それを引き抜いたのが答えだ。やっとこれ以外のまともな武器が手に入りそうだ」


―――――それを扱えるって・・・あなたどんだけよ?


『・・・・・・?』


 彼等の会話の意図が分からず蚊帳の外なゼノンとヴィノン。


「一体その剣がどうした?変な力は何も感じないけど?」


「うん」


「それには神の七大金属の詳しい説明をすることになる。サンオリハルコンって知っているよね?」


 アノンがわかりやすくその剣の可笑しさを説明をしようとした時だった。


「その前に客のようだ。」


 ゼノンの目つきが鋭くなる。


 その言葉に皆が構える。


「・・・確かに臭うな。下種な性根の臭いがする」


「悪意が聞こえる」


 レノンもヴィノンも自身の特有の感覚で襲撃を読み取る。


 現れたのは豚のような頭に太った人間の体を持つ醜悪なモンスター・・・オークであった。


 しかも一体だけじゃない。


 森の奥から次々と姿を現す。


「・・・たしかオーク五体の討伐があったよね?それかな・・・?」


 ヴィノンの言葉に皆が頷く。


「だが、これは五体どころじゃない。近くに集落でもできたのか?」


「かもしれない。はあ・・・ここのところ、事件続きで、森のパトロールできていなかったからな」


―――あらあら、これはまたすごい数ねえ。


 彼らの目の前には百を超える数の大量のオーク。


 だが、五人は全く慌てていない。


「まあ、ちょうどいいよ。みんなの力量を見れそうだし」


「おいおい、ガノンは見物するつもりか?」


「肉体労働はあちらの脳筋ズに任せる」


『誰が脳筋ズだ!!!』


 レノンとゼノンが反論。


 本来なら危機的状況なのに暢気に五人は話し合っている。


 しびれを切らせたオークの一体が槍を手に突撃するが・・・。


 その体が何かにぐるぐるに締め上げられる。


「ったく、無粋なやつめ。こっちはいま肝心なことを話してだな」


『・・・・・・。』


 そのオークを縛り付けているのは金色の鞭のようなものだった。ただ、太さが大人の男の腕くらいあり、先端に錨のようなものがついている。


 それがレノンの尾骨あたりから伸びていた。


「なにそれ?」


「何って、尻尾だが?」


「いや、どう見てもマジックアイテムでしょ?!」


「知らん。生まれた時から生えていたから、尻尾としか言えん」


 色々と無茶苦茶なレノンに皆が呆れている。


「伸縮自在に動く尻尾?それだけである程度、神の七大金属のどれを使った合金なのか想像はつくけど・・・。ガイアダマスカス マリンアダマンタイトは確実として・・・まさかサンオリハルコンもか?なんという黄金比率の合金なんだ。これ・・・神話級じゃないの?」


 尻尾となっている変なアイテムをしげしげと観察するアノン。


 そして、その鑑定に表情を引きつらせている。


 そこに別のオークが槍を手に突っ込んでくる。


だが、刃が断たず逆に槍がへし折れた。


驚愕するそのオークの身体をレノンが片手でつかみあげる。


 攻撃を受けたのに、全く平然とした様子のレノンは笑う。


「その程度か?」


 彼の生前。ゲームでは典型的な重装歩兵タイプを主にやっていた。


 圧倒的なパワーと重装甲を追求し続けた戦いをしてきた。


 その防御力はパーティー内のタンク役として十分すぎるものがある。


「せっかくマジックボックスが手に入ったんだ。狩りと行こうぜ。」


「狩り?」


「オークは美味しい。見た目の通り豚肉と同じなんだ。こっちは食べるのでな。大量に確保したい。」


 何やら口元からよだれを流しつつ、レノンはオークの群れを見る。


 その瞳に宿るのは、食欲。


「うまいんだよな。お前たちの肉は。フフフフフフフフフフフハハハハハハハハハ―ハハハハハハハハハハハハハ!!」


『・・・!?』


 恐れるどころか、嬉々として歓迎する姿にオーク達は戸惑う。


 それを見て後方で待機していたのはオーク達を率いる長・・・オークキング。


 オーク達よりも二回りほど大きく、手にしているのも槍ではなく大剣だった。


 彼はその異常さに恐れすら感じてもいた。適当な配下をけしかけてみて様子を見ようと考え、手にした大剣を突き出し、命令を繰り出そうとして・・・。


 その頭上から強襲を受けていた。


 それは上空から飛来し、そのままオークキングの脳天に槍を突き刺したのだ。その兜を貫通し頭を串刺し。


 オークキングは何が起きたのか理解する暇もなく絶命。そのまま仰向けに倒れる。


 それに合わせ、脳天に槍を喰らわせた襲撃者は倒れ行くオークキングの肩を蹴り、倒れたオークキングの後ろに着地する。


「こういう群れは真っ先に頭を倒すに限る」


 いきなり上空から群れのボスであるオークキングを強襲。一撃で仕留めるという所業に敵味方ともに絶句。


 それをやらかしたのはゼノンである。


 手には先ほどレノンの尻尾により拘束されたオークが手にしていた粗末な槍が握られている。


「・・・うわ・・・。」


「相変わらずの・・・速攻」


「容赦ないわ~」


 呆れ果てる彼の友達面々。


 ゼノンのスタイルは高速移動からの執拗かつ予想外かつ一撃必殺の攻撃で相手を仕留めるアタッカーである。


 その上、回復呪文を得意をしており、敵を追い詰めるさまから見てついたのが・・・


「さすが聖なるプレデター」


 である。一応分類としては聖騎士なのだが。


 敵に回したくないとして敵味方ともに畏怖されている。


「懐かしい名だ。今回は狩りなんだろ?なら一撃で仕留めてやるから、かかってこい」


 オーク達は混乱している。前門に仲間一体を尻尾で拘束し、もう一体を軽々と片手で持ち上げ、食欲全開でこっちを狩ろうとしているレノン。


 後門には彼らの長を上空から強襲し、一撃で仕留めたゼノン。


 まともにやって一蹴されるのは目に見えていた。


 なら違う方向に逃げようとし・・・。


 一度に五体が倒れた。


「さて・・・オークは狩っておないとね。被害がまだ出ていなくてよかったよ。問題はないとは思うけど、万が一、母上やマリア達に危害が出たら大変だし」


 その目の前にはヴィノン。その手には鞘に収まった日本刀のようなものがあった。


 飄々としているが、オーク達は、前の五体が倒れる瞬間を見ていた。だが、何があって倒れたか全く見えなかったのだ。


 切断、そしてそれを行ったのはヴィノンの手にした刀であることはかろうじて理解。だが、それしかわからなかった。


 だが、その動作が一切見えなかったのだ。


 気づいたらヴィノンが刀を鞘に納めた状態で、オーク達が切り伏せられていたのだ。


 ただわかるのは・・・ヴィノンもまた化け物だということだけだ。


 ヴィノンは主にスピードタイプ。ゼノンと似ている部分があるが、そこにさらに盗賊などの隠形、そして精霊術を始めとする術で攻撃や補助をこなす魔法剣士タイプ。


 ニンジャや侍に近い部分もある。


 そのため手札は多い。


 残ったオーク達は別の方向に逃げようとして・・・。


「はいはい。ここは行き止まりだよ?」


「そういうこと。確かにオークの肉は美味しい。だが、一体一体がでかいから持ち運びも問題があったからなかなかなあ・・・。だが、今回はアイテムボックスがある。なら・・・。狩りたい放題だね。全部収納できるのだし。助かるよ。今まで持っていたのは希少品で装備とかの収納にしか使えなかったから。」


 アノンが銃のようなものを取り出し、ガノンも手に本を出現させている。


 オークたちは完全に囲まれてしまった。


 彼らは悟っただろう。狩るつもりが、逆に狩られる立場になったのだと。


 しかも、数の上では圧倒しているのに勝てる気が全くしない。


 一人だけでもそんなヤバさを秘めている。


 それが五人もいる。


 おまけに相手はこちらを全滅させる気満々だ。


「解体は任せろ。その辺は知り合いに手ほどきを受けていてな。一体あたり、二十秒で解体してやる」


 レノンは先ほどの剣を逆手で持つ。


「こっちも解体を手伝うよ。解体用のアイテムもあるし、一体あたり十秒で終わらせて見せよう。いや~オークの肝臓や睾丸はいい薬の材料になるからほしいし。骨は骨で出汁になる。無駄があまりない。もちろん、倒す際は損傷を最小限に頼むよ」


「首はねるか、頭をつぶせばいいだろ?この程度の雑兵なら簡単だ。」


「そうだね。首を刈るか。」


 オークを狩る際の注意点を語るアノンに対して、それくらい簡単だと断言するゼノンとヴィノン。


「調理なら、こっちのメイドがいい調理方法を知っている。明日はオーク祭りと行こうじゃないか。」


「母上も確か知っているはず。それならオーク祭りで行こうか。ソーセージも作れるから。」


「ああ・・・生姜焼きやとんかつも捨てがたいぞ。」


 皆が口々に言う。


 みな・・・やる気十分。


 ついでにオーク達は絶望している。


「さあ・・・いただこうか!!」


 レノンの掛け声で、薬草採取のついでのオーク狩りが始まったという。


 返り討ちという言葉すら生ぬるいものだった。




 街中に一人の男がいた。


「・・・くくく・・・これも我が大魔王になるため」


 大きなリュックを背負った行商人に風の恰好をした男は歩きながら何かを落としていく。


 それは…一見すると何も変哲のない黒い小石にしか見えない。


「・・・さあ、もうすぐ始めようか」


 男は愉快そうに歩いていく。


 小石をあちこちにさりげなく落としていきながら。


「パーティーの始まりは近い。くはははははははは!!」


 男は姿を消していく。災厄の種をあちこちに巻きながら。



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