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3/6

早速パーティーを結成してみた。

 遅くなりましたが続きの投稿です。


 彼らのとんでもなさの一端は徐々にでてきていますが、今回はあまりありません。


 次話から徐々に出てくる予定です。


 市場にエメラルダの姿があった。


「誕生日・・・だものね。もう十五年か」


 今日はエメラルダの息子――ヴィノンが生まれ、十五年がたった記念の日。


 誕生日なのだ。


「…早い物ね。もう成人だなんて」


 この世界では十五歳で成人と認められる。大人の仲間入りとなるのだ。


「・・・あなた」


 エメラルダが思うのはそのヴィノンの父親――すなわち彼女の夫のことである。


「もうすぐあなたのことを話す日がくるわ」


 彼女の夫はヴィノンが生まれたからすぐに行方不明になってしまった。


―――――必ず帰る。だから、ヴィノンのことを頼んだ。あの子は皆の希望になる。


 その言葉を書き残して。


「・・・覚悟、しないといけないわね」


 エメラルダは己の長い休暇が終わろうとしていること悟っている。


「・・・まずはあの子の誕生日を祝うか。あの子の友達も来ているし。まあ…あれだけ親し気な男友達は初めて見たけど。…どこで知り合ったのかしら?」


 エメラルダは首をかしげていた。ヴィノンとその男友達はそれだけ親しい様子だったのだ。それこそ・・・幼馴染と言われて、納得するレベルの。


「まあ、そのあたりは夕食の時に聞けばいいか」


 エメラルダは野菜を見て回る。


「思えば、五年の間にいろいろな食材が増えたわねえ。」


 街の市場は今日も活気がある。そして、近年世界のあちこちから今まで見たことの食材が良心的な値段で回るようになってきたのだ・


「調理の幅が広がってこちらは助かるわ。さてと・・・いい感じの野菜は・・・うん。これね」


 とある屋台で売っているトマトを手にするエメラルダ。


「エルフとして、野菜や果物の良し悪しをたがえないわ!!」


「へえ・・・。なら、そのコツをこちらにも伝授してもらえませんか?」


 そんなエメラルダの背後にいつの間にか彼女はいた。


―――・・・背後を取られた?この私が?


 エメラルダは戦慄する。殺気を見せずに、いつの間にかその存在は彼女の側にいたのだ。


「ええ。なら教えてあげるわ」


 手にしたトマトを後ろに軽く投げる。ちょうど、背後にいる何者かの目をふさぐような高さで。


 そして、それとともにエメラルダは素早く回り込む。


 ただ速いだけではない。軸足を素早く切り替えつつ、踊るように回りながらその背後の誰かの背後を取とり、懐から抜き放ったナイフを首筋に当てようとする。


 その背後を取っていた謎の存在もトマトを受け止めつつ、手にした何かでそのナイフを止めたのだ。


「・・・鋼糸?」


 それはまるで蜘蛛の巣のように手の間で編まれた鋼糸。


「腕は鈍っていないようですね」


 それを見て喜ぶのは銀髪にメイド服を着た褐色肌のエルフ―――ダークエルフだった。


「あなた・・・メイサ」


「お久しぶりです。生きて・・・くれていたのですね」


 その目が少し涙で濡れている


「・・・そうか。私、世間から死んだことになっていたわね。ずっと普通の町娘として暮らしていたから忘れていたわ」


「あらあら」


 メイサはそんな彼女と親しげに話す。


「どうしてあなたがこの街に?」


「仕えている主様が遊びに来ていまして。今日は夕食もいただくという話を。だからこちらも、少し暇ができましたので遊びに・・・」


「主様って・・・あの人は今行方不明じゃ・・・」


 メイサの主のことをエメラルダはよく知っていた。


「はい。今は・・・その息子が・・・」


「息子?!」


「あなたのおいになります」


「・・・そうか・・・ヴィノンにいとこができていたか」


「・・・えっ?いとこ?」


 いとこという言葉にメイサは目を丸くする。


「私もいるの。最愛の息子が」


「・・・・・・そうですか。一度会いたいのですがいいですか?従弟ってことは間違いなく」


「ええ。父親は察しの通り。あっちも行方不明でね」


 二人は互いにため息をつく。


「とりあえず、私は夕食の用意ができたら暇になるから、そのあとで飲まない?いい店知っているし、買い物帰りに予約しておくわ」


 互いに話したいこと、話さないといけないこと、聞きたいことも含めてたくさんあるが故の誘いだった。


「いいですね。私も暇ができていましたので」


「・・・うん。どうやら、互いに長い話になりそうだわ」


『!?』


 そこの何かが近づいてくる気配がする。それも猛烈な速度で。


 二人はとっさに構えようとして捕獲されてしまった。


 抱きしめられる形で。


 勢いよく二人を、まとめて抱きしめるというとんでもないことをやらかしたのは獣人の女性だった。


「みんなの匂いだ・・・。」


 金髪の狐獣人。纏っている衣装は日本の巫女服である。


 少し野性味と神秘さが同居する美しい顔が今・・・涙で濡れている。


「うう・・・ううう・・・」


『アリーシャ!?なんで!?』


 それは本来ならもう会えないはずの彼女たちの仲間。


「みんなが・・・みんながいる。うううああ・・・」


 その名前はアリーシャである。


「なんで・・・なんでみんながここにいるの?!」


「それこっちのせり・・ぐえ」


「アッ、アリーシャ・・・力を、緩め・・・て・・・」


「みんなに会えるなんて夢みたいだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 感極まりすぎて二人を抱きしめたまま締め上げていることに気づけていないアリーシャ。


 彼女はすさまじい怪力の持ち主なのだ。


「ぐあっ・・・ああ・・・やばい」


「相変わらずの・・・捕食ハグ・・・逝ってしまう」


「やれやれ・・・。アリーシャ。落ち着きなさい」


 そこに見かねたもう一人がやってくる。


 それは青空のような髪をした妙齢の女性だった。耳の後ろから鳥の翼のようなものが生えている。


 目が吊り上がり気味で、美人だがきつそうな印象のある顔立ち、だが、その瞳に宿る光は優しい。


「・・・えっ?」


 それを見てアリーシャが二人を放す。


 驚きのあまりにだ。


「たすか・・・った」


「ヒメさんまでいたの?」


「ええ、久しぶり。まさか、みんなと再会できるなんて・・・。でも、泣くに泣けないような状況でもう・・・」


「ヒメ~~!!!」


 だが、そこでヒメは後悔することになる。


「・・・あっ」


 それはまるで獲物にとびかかる猛獣のように両手を広げたアリーシャがヒメに襲い掛かってきたからだ。


「うあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」


 こうして、エメラルダは再会を果たす。


 もう会えないと思っていたかつての仲間たちと。


 エメラルダの肩に小鳥が止まる。


「・・・あら?ヴィノンからのメッセージ?何々・・・って?!」


 そしてそのメッセージを受け取ったエメラルダは別の意味で絶句するのであった。






 昼食を終え、ヴィノン達は冒険者ギルドに足を運んでいた。


「レノン、君はすごく食べるようになったね」


「前世でもそんなもんだっただろ?」


「それがパワーアップしている。軽く二十人前は食べただろ?」


 ガノンの言葉に他三人もうなづく。


「・・・ああ。それでも軽くだ。この後運動するからな。腹八分目にもなっていない。かなり抑えたぞ・・・」


『・・・・・・・・・』


 レノン一人で食費がすごいことになることは確定してしまった。


「・・・母上に伝言送っておこう」


 ヴィノンは手に小さな風の精霊を集め、それで小鳥を作る。


 そして、「二十人前食べて全然満足しないほどの大食漢がメンバーにいるから覚悟して。」とつぶやき、飛び立たせる。


「へえ・・・器用だね。風の精霊をこんな風につかうなんて。さすがエルフといいたいところだけど、日常的に使っているな?」


「便利ですので、母上から教えてもらった」


 ヴィノンがこれくらいは簡単だというが、ガノンはあきれ果てていた。


 精霊の力を集め、疑似生命化。そして、伝言を記録させる。


「普通の精霊術士が卒倒しそうな所業だよ。これを無詠唱って」


 そういいながら皆は冒険者ギルドの前へ。

 

 その時、ちょうどメッセージの返信がやってくる。


 風の精霊でできた小鳥がやってきたのだ。


 それが消えると同時にヴィノンの母・・・エメラルダの返信が再生。


――――わかった。覚悟もできた。ちょうど目の前に知り合いたちがいるから、みんなに手伝わせるわ。任せておきなさい。


 と、なにやら色々とあったらしい。




 そして、冒険者ギルドに。


 そこのカウンターに冒険者ギルド指定の制服を着た十代後半の少女がいた。


 茶色の髪をポニーテールにくくり、物怖じしない強かさをその目に宿していた。


「あら?ヴィノン君じゃないの!!そして、そちらの方々は?」


 この街の冒険者ギルドの受付嬢―――カレンとは顔見知りであるヴィノン。よくギルド内で吟遊詩人として歌っていることが多いからだそうだ。


「パーティ―登録したい」


「えっ?ヴィノン君がパーティー登録?」


「正確にはパーディー結成かな?」


「えっと・・・マリアちゃんはいいの?」


『・・・・・・・。』


 受付嬢の言葉にジト目になる他四人。その視線の先にはヴィノンが・・・。


「さっ、さっさとやってしまおう!!」


 と手続きを急ぐことに。


 ヴィノンがとっとと登録用紙を受け取る。


 そして、カレンは他四人に小声で話しかける。


「もう大体わかっていると思うけど」


「・・・安心してください。責任は取らせます」


 ガノンがいい笑顔。皆もうなづく。


「うん。これでさらに外堀は埋まったわ」


「・・・あんた。やるな」


 冷や汗を流すゼノン。


「ははははははは!!そうか・・・それはまた面白い」


「はあ・・・。まあ手を出すことはしないほうがいいみたいだ」


「ちょっと!!そっちで何話てんの!?しかも結界を張って!!」


「声が聞こえない様にしたのを見抜くか」


 ガノンが指を鳴らし簡易結界を解除。


「・・・えっ?いつの間に」


「簡単な防音結界です。ヴィノンは耳がいいから。でも、この程度じゃだめか。改良しないと」


 カレンはその言葉に驚く。何しろ言われてから初めて結界の存在に気づいたのだから。


「・・・もしかして、君達とんでもない?」


「さあ?」


 ガノンは不敵に笑いながらその場を後にする前に、ふいに彼女に聞いた。


「あっ、そうそう。このギルドに登録されているS級冒険者の情報ってどんな感じなの?」


「・・・このギルドに登録されているS級冒険者と言えば一人だけです」


「そうだね。怪傑ムーンバードのこと。何か情報は?」


 その名前に他の皆も押し黙る。


 怪傑ムーンバード。この街を拠点に活動する。その正体は不明。


 わかっているのは凄まじい実力で冒険者ランク最上位であるS級へと最短で駆け上がったことと、勇者王にして剣聖であることだけだ。


 その二つの称号だけでも世界中が注目するに値する猛者である。


 この世界には最近有名になった正体不明の猛者が何人もいる。


「やっぱり、そっちも興味あるんだ」


 ガノンの言葉にアノンも同感だと言わんばかりである。


「・・・そうだな。こっちもこの街に来た時には意識した。会えるかもしれん」


 ゼノンも興味がある様子。


 レノンもそれなりに興味あるのか、地元民に聞くことにした


「そのあたりどうだ。ヴィノン?」


「あはははは・・・こっちもさっぱり・・・ってことにして」


 ヴィノンはなぜか歯切れが悪いようすだったが。


「?」


 何か知っているのか?そう問おうと思ったが、あとでいいかと思いなおし、彼らは席につくことにした。


 その疑問はすぐに解決されることになるのだが。



 パーティー登録のための紙を中心に皆が一つのテーブルに座る。


 幸運なことに五人とも冒険者の登録をすませており、そのギルドカードを持っていた。


 一から冒険者登録する必要がなかったのだ。


「さて・・提案なんだけど、パーティー名は王の彗星なんかどうだ?」


 ガノンが唐突な提案をしてくる。


「何しろ俺たちが生まれたのはあのノン彗星が落ちてきたときだった。ノンは古代語で王を意味する言葉。彗星とともにこの世界に転生してきた私達にふさわしいと・・・」


 その熱弁に皆もうなづく。


 彼らが生まれた時にその魂がノン彗星と呼ばれるこの世界最大の彗星の王がやってきていたのだ。


 その話に、アレスフォーレが机の中央に降り立ち懐かしそうに告げる。


――――確かにあなた達の転生とともにノン彗星はやってきたわね。それもまた必然なのは仕方ない事よ。何しろあそこがゲートになっているのだし


『ゲート?!』


「ええ。あそこは異世界をつなぐ門なの。でも簡単に入られたら困るでしょ?だから彗星にしてあるの。おかげ龍でも近づけない」


 とんでもない情報をアレスフォーレが明かしてきた。


「もちろん、通るには私達精霊神の許可がいる。そんな封印をしかけているから」


「わかった。だが、いいのか?そんな重大な情報を・・・」


―――――何が起きるかわからないからね。私の権限でその情報は明かしておくわ。まあ、その関係であなた達がこの世界に生まれ落ちたのと、ノン彗星が来たのは必然だったのよ。


「そんなこと、母上もいっていたよね」


「爺さんも同じことを言ってな。ノンの名前がついた名前だと」


「ああ。こっちもだ」


「父様と母様も同じことを言っていたな」


「師匠もそんなことを言っていたか」


 五人も己の名前の由来に聞き覚えはあったのだ。そして、それは必然だった。


 五人の名前に共通している「ノン」という言葉。


 それは彼らの繋がりだった。


「なら決定だな。王の彗星でいこう」


「いいねえ。王という言葉は嫌いではないぜ」


 こうして彼ら―――王の彗星は結成される。


 のちに最強のパーディーとして名をはせることになるとしらずに。


「さて・・・まずは軽くオーク退治でもいきますか」


『おう!!』


 彼らはオーク退治に向かう。


 依頼でオークが五体いたのでそれを退治してほしいというのがあったのだ。


 その話を聞いたカレンが驚き五人を止める。


「って・・・ちょっとまちなさい!!ランクCの依頼よ!!ヴィノン君はまだなりたてのEだから・・・」


『何か問題でも?』


 だが、他のメンツが遮る。


「みんなE、またはDでしょう!!その依頼は許可できません!!」


 カレンは必死に皆を止める。いや、止めないほうがおかしいのだ。


「・・・そうだったね、まずは薬草採取でも始めよう」


 ガノンのEランクと書かれた冒険者カードを見て苦笑しつつ皆に提案する。


「多ければ多いほどいいらしい。たっぷり取りにいこうじゃないか」


「いいな!!」


 その悪魔の笑みにレノンが笑う。


「…なんか嫌な予感がするのですけど。ならこの周辺の薬草をお願いします」


 その光景にカレンは呆れつつ、薬草採取の場所の指定もしていた。




 そして、指定を受け、出ていく王の彗星のパーティーを見て、カレンは思う。


「・・・さて、実際のところはどうなのかな?」


 彼女はすでにヴィノンが組んだパーディ―が各々の持っている冒険者ランクをはるかに超える実力を持っているであろうと見抜いていた。


 カノンの手にはオークの最新の目撃情報が書かれた紙があった。


 それは・・・ヴィノン達が薬草採取に向かった場所と一致していたのであった。


 次が初依頼。彼らの異常さのさらなる一端がわかるようになります。

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