第6話 緊急事態、ゾーン襲来
それは、全てのオリエンテーションが終わり、授業が始まってから一週間後のある日の事だった。普通に授業を受けていた僕達、そこに何重にもなって響く悲鳴。
キャー!!!
教室内がざわつきはじめる。その悲鳴とほぼ同時に、僕と美咲のスマホが鳴り会長からの着信を知らせる。
「もしもし?」
『雅か!ゾーンだ!ゾーンが現れた!』
「何ですって!?僕達はどうすればいいんですか?!」
『至急、生徒会室へ来るんだ!』
「わかりました。美咲!」
「分かってるわ!行くわよ!」
僕らは教室を飛び出し、生徒会室へ向かった。教室のざわめきなんて知ったこっちゃない。
「会長!」
「来たか。雅、銃は持っているな?」
「はい。もちろん。」
「弾込めはしてあるな?」
「勿論です。いつでも発砲できます。予備マガジンもしっかりと。」
「よし。二人にとっては初陣になるな。奴らは私達を殺しに来る。決して無理はするな。」
と会長。そこに有沙先輩が付け加える。
「敵はゾンビ見たいな動きをする。下級種は少なくともそう。せやけど中級種は動物見たいな形をしとるから一概にそうとはいえへんけどな。」
「まあ人間の心臓みたいに核みたいなものがあるから、そこをバコーン!とやっちゃえば止まるから。」
バコーン!って何だよ。杏樹さんは元気に言った。
「有沙と杏樹は前衛でとにかく敵を狩れ。」
「「オッケー。」」
「美咲と神楽は後衛で取り残された生徒を救出しろ。」
「わかりました。」
「ん。りょーかい。」
「私と雅は遊撃だ。いいか?」
「はい。」
「よし。行くぞ。」
僕たちメンバーは飛び出して行った。この学園と生徒を守るために。
現場に行くと、早速生徒が一人襲われていた。それを少し遠くから見ている僕ら。なぜ遠くから見ているかというとゾーンは新たに接近する熱源に対して攻撃を仕掛けてくるからだ。しかしその熱源を感知するセンサーは万能ではなく草むらなどに隠れていれば熱源感知を避けることができるのだ。
「雅、銃で頭を撃ち抜け。」
「了解。」
遠距離攻撃ができるのは僕だけだ。僕は前に出て、言われた通りにゾーンの頭をリボルバーで撃つ。その弾丸は頭を貫き、敵は足から崩れ落ちるように倒れた。
それを合図に他のメンバーはゾーンの中に飛び込んで行った。
僕は両側ヒップホルスターに銃を二丁、ブレザーの中にショルダーホルスターがあり、そこにリボルバーを一丁装備している。銃撃と格闘術で敵を討つ。中近距離型だ。調整と装備を変えさえすれば遠距離も可能だ。
会長は腰に結んだ帯に太刀、小太刀を差しており、一刀流や二刀流を使い分けて敵を斬る完全近距離型。
美咲はサバイバルナイフのような刃物を持っている。ナイフの腕は一級品で、投げナイフで敵を討つことも可能。しかし当たる可能性が低いので普通に近距離型。
有沙さんは棍棒、仕込み刀があり刀と根棒二つの武器が一緒になっているこちらも近距離型だ。
杏樹先輩はクローのような爪を装備している。靴にも隠しナイフが仕込まれていた。
このクロー、通常は機能しない。通常はただの手甲だ。必要な時にまるでウル○ァリンみたいな感じに前に出てくるというのだ。仕組みは分からんが手込んでるなぁ。近距離型。
神楽は蹴りを極めているらしいので、靴に隠しナイフを、手には盾と剣が一体化した小型のランタンシールドという武器を装備している。剣は細剣でシールドにすっぽり入るようになっている。これを背中にも装備しているがあまり使わない。近距離格闘型。
メンバーは武器と格闘術を駆使して、生徒を救出しながら敵を倒していく。こうして見ると中距離が僕しかいない。神楽も銃を使えるらしいが持っていない。一番僕が敵を倒していた。二丁拳銃で敵の頭を一撃で貫くからだ。ゾンビと同じだ。しかし人間の心臓辺りに核があり、そこを破壊しても止まるのだが硬い。弾の消費を避けるため、頭、電気的な物が集約されている脳の部分を狙う。勿論銃は近距離に接近されるとほとんど役に立たない。だから敵に近づかれたときは銃を持ったまま格闘術で戦わざるを得ない。
「藤堂流柔拳第五式三の形、双手《獣来》、そして第七式連の形《月兎》!」
双手突きと言われる技で敵を止め、そのまま核の部分に蹴りをお見舞いする。するとゾーンは他の物を巻き込んで後ろに吹っ飛んで行った。それを見た同じ遊撃の会長も二刀流になり、敵の首を切っていった。
「やるな雅。私も負けていられないな。はぁぁぁぁ!」
こうして1時間が経過した頃には敵は完全に沈黙していた。
「お疲れ様美咲。初陣なのになかなかやるじゃないか。」
「ありがとうございます。」
と美咲は満面の笑みを浮かべている。
一方僕は首をはね飛ばされ分離したゾーンの残骸を見ていた。
「これどうするんだろう。というか誰がこんなものを作る?」
「それが分かったらウチらも苦労しん。残骸は学校の方で回収するらしいで。」
と有沙さんが教えてくれた。そうだよなぁ。分かればすぐにそこを潰せる。
「さあ、帰るか。」
「そうね。」
この騒ぎで午後からの授業は全て中止となり緊急下校、全員今日の外出は極力控えるように言われた。僕は部屋で玲とともにテレビゲームを楽しんだ。玲もなかなかゲーマーのようで雅は苦戦した。ゲームを楽しんだ後、僕はふと玲にこう言った。
「玲、君は何者なんだ?あまり話してもいない秘密を知ってるなんて・・・。」
「・・・・・・・・・知りたいですか?」
と言うやいなや僕を押し倒し、馬乗りになった。
「れ、玲!?ちょっ何を・・・!?」
玲は顔を近づけて、僕の頬にキスした。顔を真っ赤にした僕に笑みを浮かべてこう言った。
「秘密、です。」
彼女の甘く妖美な囁きに僕は言葉を失っていた。
ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。
今回からちょこっとずつ解説を入れていきたいと思います。
《私立桜林学園》
主人公雅や、生徒会メンバーらが通う高校。人口密集地から少し離れた山の上にある。
偏差値が少し高い。寮生活。敷地面積が多く、設備もしっかり整っている学校。
雅が来る一年前ゾーンの襲来があり、その救援としてなぜか雅が呼ばれた。
《コルトガバメント》
雅が扱う二丁拳銃。アメリカのコルト社が作ったハンドガン。米軍の制式拳銃だったが今は使われていない。バリエーションが多い人気の銃であるが雅のはオーダーメイド。装弾数は10発。