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黒き弾丸と白き学園の守り巫女  作者: 藤原ミヤビ
第1篇 私立桜林学園の新入生
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第5話 模擬戦、雅の隠された力

「良いでしょう。その手合わせ、受けて立ちます。」


 その言葉に朱里先輩や生徒会、その場にいた全員が驚いた。


「いいのね?今更後悔しても遅いわよ。」


 副委員長は見下したように言った。僕に後悔はない。むしろ怒りの方が強かった。


「あなたの得意な物でいいですよ。」


 僕は吐き捨てるように言った。どんな形式でも勝てる自信があったからだ。


「じゃあ空手にするわ。」

「では10分後、準備を整えて集合。」



 生徒会側控え



「あんた本気なの!?」


 と美咲が詰め寄ってきた。


「やるしかない。素人相手って言われたから。」


 向かい側を見ると、ほぼ全員が彼女を囲んでいる。


「気をつけて。彼女は空手、組み手で全国行った人やから。」


 有沙先輩が助言する。それは少々キツイかも知れない。そこへ委員長が近づいてきた。


「雅君、こうなってしまった事、謝りたい。」


 委員長はそう言って僕に頭を下げるが、僕の返答は委員長が予想していたものとは違っていたのかもしれない。そこで十分経過のブザーが鳴った。


「謝るのはもう少し待ってください。時間ですね。行ってきます。あと玲を呼んどいて。」


 メンバーにそう言うとすぐに連絡してくれた。



「ルールは相手を戦闘不能にする、または相手が負けを認めることで勝ちとする。相手に捻挫以上の傷害を与えた場合、即刻敗北とする。いいな。両者前へ。」


 その時、気配で玲が来たことが分かった。玲は心配の色をまったく見せなかったどころか、むしろ僕の圧勝を願っていたらしい。思えば玲は僕が強い事を知っていたからかも知れない。


「自己紹介がまだだったね。私は風紀委員会副委員長、五十嵐佐奈(いがらしさな)よ。よろしく。」

「生徒会副会長、藤堂雅です。よろしくお願いします。」


 僕は深々と頭を下げる。


「礼儀はなっているのね。ちゃんと礼を重んじる人は久しぶりに見たわ。正々堂々勝負よ。」

「ええ。どっからでもかかってきてください。相手になります。」

「始めっ!」


 開始早々、佐奈さんは怒涛の連続技を繰り出してきた。が、僕は全ての攻撃を回避して反撃の隙を狙っていた。攻撃が弱くなった瞬間を狙う。佐奈さんが繰り出した拳を僕は手で掴みそのまま投げた。


「あれは、柔術!」


 投げられた佐奈さんは空中で体制を立て直しそのまま蹴りを繰り出す。まさかこの世に空中で蹴りを出す人がいるとは。周囲に僕を応援する人は誰もいない。皆が佐奈さんを応援していた。


「雅が劣勢か?」


 明日香先輩はそう見るが、


「確かにマスターが劣勢に見えるかも知れません。ですが、佐奈様には焦りが見えます。攻撃が当たらないからです。焦りは命取りになります。焦れば焦るほど自分のペースが崩れて相手に隙や弱点を露見させてしまう恐れがあります。マスターはそれを狙っているのでしょう。」


 さすが。玲の言うことは正しかった。

 佐奈さんは、筋はいい。手数で相手に攻撃の隙を与えず無力化する。一発一発が重く、当たっただけでも結構なダメージだ。でも、その攻撃が当たらない、当たらなかったときの対処をしていない。

 どんどん佐奈さんの周囲の応援の声が小さくなることに気がつく。


(くっ、何で当たらないの!?もういい、畳み掛ける!!)


 と思った佐奈さんは順に正拳(せいけん)裏拳(うらけん)掌底(しょうてい)を繰り出した後そこから連続蹴りを浴びせた。


「セイァ!!」

「ぐっ!」


 僕の防御は簡単に破られ体は壁にたたきつけられ、そのままうつぶせに倒れた。


「ぐはっ!!」

「雅!!」


 周囲から歓声と悲鳴が上がる。


 生徒会メンバーが心配そうな声を出すが息をするので精一杯な僕にその声は届くはずはない。心配そうな顔が少し覗くだけだった。

 

頭が痛い。意識が朦朧としていて視界が揺れる。何か変な感じだ。視界もなかなか定まらない。


「なかなか。でもマスターはそんなので倒せませんよ。」


 僕は少しよろけながら立ち上がった。周囲がまた驚きでざわついた。血を吐いてしまったので畳にポタッポタッと血が垂れる。


「そんなっ!?ありえない!これを受けて立っていられた人なんていないのに!!」

「…なかなか楽しませてもらいました。お礼に僕の本気をお見せします。」


 僕は冷たい殺気を放った。その場にいた全員が寒気を覚え、中には気分を悪くした人もいるらしく口元を覆い、吐き気を堪えている。

 その殺気はまるで幾多の人間を殺してきた殺し屋のようだったらしい。

 僕は佐奈さんの方へゆっくりと歩いて行く。一方佐奈さんは足がすくんでいるのか一歩も動くことができない。


藤堂流(とうどうりゅう)柔拳(じゅうけん)第三式(だいさんしき)(れい)(かた)手刀(しゅとう)真刀(まがたな)》」


 僕はそう呟くと一気に間合いを詰めて首の頸椎辺りに手刀を打ち込んだ。

 その一発を受けグラッと倒れた佐奈さんを間一髪腕で支えた僕は彼女をゆっくり床に寝かせた。そして僕もダメージから片膝をついた。


「そ、そこまで!!」


渡辺先輩の慌てた声が周囲に響き、玲や生徒会メンバーが駆け寄って来た。


「お疲れ様でした、マスター。お怪我は?」

「ああ、問題ないよ。なかなか手強かった。」

「立てますか?」

「何とか。」


 玲は僕を支えながら立たせてくれた。それを見て委員長が言った。


「勝者、藤堂雅。」


 だが、誰も喜ばなかった。いや、誰も喜べる状況ではなかったと思う。

 先程の殺気を浴びて笑顔でいれる人はあまりいない。一人、玲を除いては。

それに加減したとはいえ、手刀で頸椎辺りに相当な衝撃を与えたのだ。下手をしたら…。

 その時、佐奈さんが目覚めた。目の前にいた一人が彼女に駆け寄る。どうやら見る限り異常はないみたいだ。


「うぅ…私は。そうか。私負けたんだ。あなた強いのね。ただ者ではないわね。それにあの殺気…あなた何者なの?」

「それに関しては私がお答えしましょう。」


 と言ったのは玲だった。


「私のマスター、藤堂雅様は…普通の高校一年生です。ただ根本的に違うものが一つありますが。」

「玲、今はここでストップだ。」

「かしこまりました。マスター。」


 僕はそう言って止めた。僕の鋭くも恐れを知る目を見た玲はすぐに黙ってくれた。

 その眼を見て、会長は僕が何か重い秘密を持つ事を知ったのだった。

ここまでお読みくださり誠にありがとうございます。雅は藤堂流唯一の継承者で免許皆伝。実力は計り知れません。凄いですね。次回はやっとプロローグで出てきた敵が学園に襲来します。次回お楽しみに。

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