第44話 ダブルブッキング、打ち合わせとメンバーの誘惑!?
ダブルブッキングに上手いこと対処することは不可能に近い。ならば方法は二つ。
一、どちらかを断る。これなら僕の体力、精神力はギリギリ持ちこたえることができるが、どちらかに迷惑がかかる。それは僕にとっても相手にとっても嫌なことだ。
二、どちらかに遅れていく。僕の体力、精神力はほぼ死ぬことになるが、相手との約束は果たせる。考えることなく僕は後者を選んだ。とりあえず、キラに電話する。
「もしもしお兄ちゃん、どうしたの?」
「悪い、キラ。執事指導、ちょっと遅くなるけどいいか?」
「いいよ。まだみんな衣装に着替えてないし。」
「悪い、助かる。なるべく早く行くから。」
「オッケー。じゃあ後で。」
「ああ。みんなに伝えておいてくれ。」
と言って電話を切り、全速力で生徒会のみんなが待つ軽音部部室に向かった。
「どうですか?練習の方は順調ですか?」
入ると、会長がプロのギタリスト顔負けのギタープレイをしていた。あれ?その担当って僕じゃなかったっけ?さらに美咲がベースランを完璧に行い、杏樹さんはドラムの譜面に自分のアレンジを施し、有沙先輩はもともとピアノが弾けたので肩慣らしが終わったのかガチでキーボードを弾いていた。神楽先輩はというと・・・何処からか持ってきたのか金髪のカツラとサングラス、帽子を被って某有名DJの真似をしていた。一応の操作方法は覚えたらしいが。というかこの短時間でどれだけできるようになったんだよ!葉月先輩スゲーな!
「というか打ち合わせするんでしょ?」
「ああ。今回このスタフェスにエントリーしたグループが結構居て一日におさまりきらない可能性が出てきた。いくら後夜祭があるとはいえ、正直全部のグループの発表は無理だ。そこでオーディションをすることを考えてる。」
「オーディションですか。そこでふるい分けをすることにしたんですね。」
「オーディションといっても予選リーグみたいなものだ。」
オーディションと予選リーグは違うと思うが。
「どうする?」
「どうすると言われても。風紀委員の仕事もありますし。」
「あ、そのことなんやけど雅君は生徒会に専念してほしいそうよ。当日は見回りに参加してもらうらしいけど。」
ということはスタフェスや喫茶の方に専念できるってことだな。
「とりあえず予選オーディション、参加バンドは100グループあって・・・100!?」
100グループも参加希望のグループが居るっていうのか!?さすがにこいつらを全部出すのは無理だ。オーディションって言っても時間がかかりすぎる。
「どうした?あ、スマン。言ってなかったな。生徒会、軽音部を含めて全100グループだ。思ったより参加が多くてな。書類選考という手も考えたんだが、やっぱり音を聞いた方がいいと思ってな。」
ぐぬぬ・・・。会長の言ってることは分かる。さすがに音も聞かずに合格にして、全然ダメでしたじゃ話にならない。
「分かりました。予選オーディション、場所は体育館で100グループを一週間かけて選考するというのはどうでしょう?」
「皆、異論はないな。」
はぁ。これで執事指導に行けると安堵していたのだが、
「ちょっと待って。機材はどうするの?」
美咲の純粋な質問に答えなければ行けなくなった。
「ギターは自分のものがあるから、アンプとコードだけ、ドラムはいちいち動かせないから1セットスタンバイさせる。キーボードは・・・」
「出したりしまったりできるから、キーボードを置く台座だけ用意すればいい。」
さすがは葉月先輩。僕のアイコンタクト一つでちゃんと対応してくれる。
「放課後にしか時間はとれんだろうから、使わない時は隅やどこか、器具庫などに置いておけばいい。わざわざ部室から運んだりするのは大変だからな。」
「では、そうしよう。有沙、悪いが手配を任せてもいいか?」
「ええで。ウチに任せとき。」
「頼む。それでは打ち合わせは終了だ。」
とりあえず、打ち合わせは終わったので、足早にキラの元へ向かおうとした。しかしここでも僕をキラの元へと行かせてはくれなかった。
「雅!どうだった?さっきのギタープレイは!」
会長が構ってきて動けない。腕をホールドして、無意識に胸を押し付けて。顔真っ赤にしている僕を見てニヤニヤと笑みを浮かべるメンバー。会長も含む。
「ウチのキーボードも良かったやろ?」
「はぅあ!?」
有沙先輩のね、柔らかいモノがね、左腕に当たってるんですよ。僕の顔は一瞬で真っ赤になった。それを見てムッとした顔を浮かべた会長はホールドする力を強くしだした。それを見た美咲他のメンバーも僕の背中に乗ったり、前から抱きしめて来たり、ちょっと神楽先輩、シャツの裾を引っ張るのやめてください。
「姉さん、彼ってこんなにモテているのか?」
「九条が藤堂の事を異性的に好きというのは知っていたが、他の者もにわかだが好意はあるみたいだな。」
篠宮姉妹から不穏な会話が聞こえるが、美少女五人に全身を拘束されて動けない。あえて聞こえないフリをした。その拘束を解いたのはスマホの着信だった。
「あ、もしもしお兄ちゃん?皆準備出来たから。」
メンバーの視線が僕に突き刺さった。




