第42話 女装!?スタフェスの助っ人
「-以上がこの企画の概要です。」
教室の至る所から惜しみない拍手が送られる。今僕らは臨時に開かれた生徒議会で新企画の発表を終えたところだ。静かに聞いていたクラス代表の生徒達が興奮した様子で拍手している所を見ると、バンドをやっている人達が多くを占めるのだろう。当初は学級発表の概要説明だけのはずだったが、決まったとなったら発表ということで急遽準備した。
その勢いでクラス代表生徒からの賛成をもらい、スターライトフェスティバル開催が決定された。これから本当に忙しくなるなと思いながら会長とともに一礼した。
その翌日。クラスのクラス委員長から学級企画とスターライトフェスティバルの概要が説明され、そのままクラス企画を考えることになった。
「なあ、雅はどうするんだ?」
「どうするって言ってもなぁ。多分僕はスタフェスで忙しくなるし、展示の方が良いんじゃないか?」
「もう略してんのかよ・・・。展示なぁ。確かに楽だし当日自由だしな。」
後ろの席の西城と話しているうちに黒板には展示や販売、劇と案が次々上がっていた。しかし、クラス企画でやりたい案の種類が多く、話し合いは難航した。
しかし渚のたった一言ですぐにクラス企画が決まる。これが全ての始まりだった。
「雅って女装させたら可愛くなりそうだな・・・。」
クラスの空気が一気に静まる。だが女子からなるほど等の声が上がり、さすがにそれはダメだろうと反論する男子を鋭く目で制した。このままでは僕の女装という精神的に苦痛な企画に決まってしまう。すかさず僕は席を立ち反論する。
「待ってくれ!僕の意見はどうなる?男子全員に女装させるとでも言う気か?」
男子全員が大きく頷く。男子全員の女装は流石に終わる。誰も僕らのクラス企画に足を運ばないだろう。気持ち悪いから。
「だったらこういうのはどう?普通にメイド喫茶をやってその中に女装した男子が一人含まれています。その子を当ててください。当たったら代金全てチャラ。それで良くない?」
良いわけないだろ!そんなことを言い出したのは詩島絵里香、クラス委員長だった。
こいつらグルか!と思ったときには時既に遅く、男子からの賛成を受けた絵里香は決定を宣言した。助けてという思いで那月先生を見るとこちらもため息をつくだけで何も言わなかった。逃げ場はない。クラス企画はメイド喫茶(一名女装)ということで満場一致で決定した。
「どうした雅?まるでこの世の終わりみたいな顔してるぞ。」
「明日香、私にはあしたの○ョーの燃え尽きたよを思い浮かべるんやけど。」
「先輩方、雅のライフはとっくにゼロです。やめてあげてください。」
「いや、いいよ美咲。もう逃げ場はないんだ。」
メタいネタをかます先輩二人を止める美咲。何だかいつになく美咲が優しく見えた。
「一体何があった?」
「クラス企画でメイド喫茶に決まったんですけど、女子の中に一人雅が女装して入ることになったんですよ。授業後が掃除でよかったです。使い物にならなかったんで。」
「藤堂、覚悟を決めろ。やるしかないんだ。止めれなかった責任はあるが。」
簡単に言ってくれる。というか責任感じてるなら異議一つ唱えても良いだろ。…だが決まった以上それを覆すのは困難だ。腹を括るしかない。
「はぁ。分かりました。やればいいんでしょ、やれば。」
「そうだ。その意気だ。そんなことより――」
「那月ちゃん、そんなことよりって酷くない?ねぇ。」
僕のツッコミ虚しく先生の話が続く。
「今日から全員、バンドの練習に入ってもらう。お前らは強制だ。あのバンド大会の提案者、つまるところ言い出しっぺだからな。」
「しかし先生、楽器は私達弾けませんよ?」
そうだ。ここにギターやドラムをやっていた人はいない。代わりに刀などの凶器を持っていた危ない連中だ。だが企画を考案したということでエントリーされたのだ。強制的に。
「だから強力な助っ人を紹介する。ついて来い。」
那月先生に連れられてやってきたのは軽音部の部室。ここはたまに抜き打ち検査と称して僕がたまに訪れる場所だ。無論このことは会長は知らない。那月先生にはバレてるだろうけど。戸の向こうには仲良くティータイムを楽しんでいる女子生徒達が見えた。まさか放課後にティータイムを楽しむ人がいるとは。完璧にけい○んだな。
「お前ら入るぞ。」
先生が入ると軽いノリで挨拶する軽音部員達。だが生徒会の面々が入ると軽いノリから徐々に重い空気が流れはじめた。
「今日から桜林祭までの期間、生徒会の面々にギターやドラムを教えてやってほしい。藤堂は何度か訪れてはギターやらドラムやらやっていたらしいから良いとして…」
やっぱりバレてた。苦笑いする僕に会長の冷たい視線が突き刺さる。それを知らないふりしてそそくさと定位置に座る。那月先生は話を続ける。
「その他の面子は全くの素人だ。まだ時間があるからある程度はできるようになるはずだが、お前達もスタフェスがある。無理だけはするな。」
了解と返事をする部員。とりあえず僕がギターを弾いてみるとメンバーからは感嘆の声が上がっていた。その僕のギターの音に上乗せするように違うギターの音が鳴る。音の鳴った方を向くとそこには長い髪を一つにまとめた小さな女の子。目の色が那月先生と同じだ。
「腕を上げたわね。藤堂雅。」
「貴方に比べたらまだまだですよ。篠宮先輩。」
という好敵手的な会話をしながら音を響かせる僕とその女の子。そのセッションを聞き付けてか部室の周りには生徒や先生達が群がっていた。二人で何曲か弾き終えると見ていた人達から大きな拍手が巻き起こった。
「すごいな、雅。」
「本当に。何処でギター覚えたのよ。」
「というより、そこに居てはる女の子は誰?」
その質問に那月先生がため息をつきながら前に出てくる。
「紹介しよう。軽音部ギター&ボーカル担当の篠宮葉月、強力な助っ人というわけだ。」
「ん?ちょっと待って。この子“篠宮“って言った?」
「そうだ…。この篠宮葉月は私の妹だ。」
部室全体に僕を除くこの場にいる全員の驚きの声がこだましたのだった。




