エピローグ ETRNAL BLAZE
エルナが助け出されてから2日後、達也は目を覚ます。
「ここは、事務所か……」
達也が辺りを見渡すと、そこは見覚えのあるバイト先にある寝室だった。達也はとりあえず起き上がり、部屋から出る。
「あら起きたのね」
部屋から出ると達也の仕事場である店になり、仕事場の主である朱莉が声をかけてくる。
「すんません所長、俺何日気絶してたんすか」
「ざっと2日、つまり今はゴールデンウィーク3日目。良かったわね全部潰れなくて」
「本当っすよ」
達也がとりあえず1番気になる疑問に朱莉は答え、その答えに達也は安心する。しかし、達也はあることに気付く。
「所長、エルナ居ないんすけど」
「エルナならお使いついでに町を散歩させてるわ。本当はアンタが起きたらやらせようと思ってたけど、その前によく行く場所位は覚えさせた方がいいと思ってね。それと」
唐突に朱莉は達也に指を指して一言。
「エルナの戸籍、伝手頼って作っといたわ」
「マジすか」
「マジよ。このあたしに、戦闘とカラオケで70点以上取る以外に出来ないことがあると思ってるの」
「機種変えても店変えても70いかないっすからね」
「不器用で悪かったわね!」
「器用関係関係ないと思うんすけど……」
「間違ってるのはアタシじゃなくて世界よ」
「何の話をしているの二人とも……」
達也と朱莉の会話がどんどん変な方向に向かう中、エルナが事務所に帰ってきて早々にツッコミを入れる。
「あらお帰り」
「はいただいま、って達也起きたんだ!」
「おうよ、完全復活パーフェクト達也様だぜ」
「良かった……」
元気そうな達也を見て胸を撫で下ろすエルナ。そんなエルナを見て、胸の大きさと形を理解してちょっと元気になる達也。そんな達也を見て朱莉は思わず達也にバックドロップ。
「何で!?」
「何か、目つきがいやらしかったから」
そしていきなりバックドロップする朱莉にツッコミを入れるエルナ。そのままの体勢で朱莉は達也に話しかける。
「そう言えばまだアンタに言ってないことがあったわ」
「まだあるんすか」
「後二つよ安心しなさい。ひとーつ! エルナはゴールデンウィーク明けの次の週から、達也と同じ高校に通うことになったわ」
「……リアリー?」
「イエース、下げたくない奴にまで頭下げたんだから貸し1つよ。死んでも返しなさい」
「ラジャー」
「何でさっきから英語?」
英語交じりの達也と朱莉の会話に戸惑うエルナ。そんなエルナを無視して朱莉は二つ目を告げる。
「ふたーつ! 達也、アンタの両親にはアンタがここで気絶してるとは伝えたけど、気絶してる理由一切言ってないから自分で説明してきなさい」
「ウゾダドンドコードン!?」
「本当のことよ。というか仕事中の出来事ならまだしも、アンタの私事の説明までする義理は無いわ」
「確かに……!」
そこで達也はバックドロップの体勢を解いて立ち上がる。そして家に帰ろうとした所で、エルナに呼び止められる。
「待って達也!」
「何、俺今から謎の組織と戦ってたって親に言ったら、どんなリアクション帰って来るか分からなくてちょっと戦慄しそうな気分なんだけど」
「え、えっと……」
エルナはしどろもどろになりながら、恥ずかしながらも達也にハッキリと言わねばならないことを言った。
「ありがとう達也! 私、達也のおかげで助かったし必ずお礼するから!」
エルナの言葉に達也は面食らいつつも普段の調子でこう返す。
「おう、そのうち頼むぜ。具体的にはそのむ――」
達也の言葉が終わるより先に朱莉が背後に回り、見事なジャーマンスープレックスホールを決める。
「そこはバックドロップじゃないんだ……」
エルナの言葉を背にしながら、達也は起き上がり事務所を去っていく。
顔こそ怯えていた物の、その足取りはとても軽やかで、これからの日々を暗示しているようだった。