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第4話 限界バトル(前編)

 達也が通路の途中で叫んでから10分後、彼はやっとネストールの元へ到着した。


「長かった、マジ長かった! ドラ○ンボールZのあらすじもビックリな位長かった!」


 達也は叫びながらも辿り着いた部屋を見る。そこもさっきまで四天王と戦っていた部屋と同じ様に電気以外何もない殺風景な部屋だった。

 ただ1つ大きな違いとして、その部屋は広く、野球場位の大きさがあった。

 その中心でネストールが立っていて、横には鳥かごの様な檻に入れられているエルナの姿があった。

 ネストールはやって来た達也を見て話す。


「とうとう来たか、鈴木達也君。私は君を楽しみに待っていたよ」

「全然やっと感無いけどね、映像越しとはいえずっと話してたし」


 ネストールの台詞を一瞬で台無しにするエルナ。そしてそんな二人の台詞を無視して自分の言いたいことを言う達也。


「いやそんなことより、何なんだこの空間は。どう考えてもビルに入んないだろうが」


 その言葉にネストールは一瞬だけ真顔になった後、見てる達也が殺したくなる程のドヤ顔を見せてこう一言。


「ホムンクルス研究のちょっとした応用でね、空間湾曲させているのさ」

「何の応用も効かないでしょ、ホムンクルス研究が空間湾曲に!!」

「24世紀では効く」

「便利だな24世紀」


 達也が未来技術という言葉の便利さに呆れる一方で、ネストールは達也にこう話しかけた。


「さて達也君、ここまで来た以上私と君は戦うことが決定事項だ」

「当然だな」

「そして私はここから君を殺す気で行かせてもらう。生きている君を洗脳したかったがそうも言ってられないからね。ここまで来たら君を殺した後に改造し、意思の無い殺人マシーンにしてやろう」

「何生温いこと言ってんだか」


 ネストールの殺す気で行くという発言に達也は呆れた様な口調で返す。


「こっちは最初からお前を殺す気で来てんだよ。エルナ助ける為にな」


 その達也の言葉に今度はネストールが呆れた様に返す。


「エルナ・クンストは私が作ったホムンクルスで私の物だ。自分の物をどう扱おうと私の勝手だとは思わないか?」

「はっ、いずれは恋人にしようっていうホムンクルスを物扱いか。そんな風に恋人を物扱いするような奴は、ぶっ殺されてもしょうがねえよな!」


 この台詞と同時に、達也はネストールに飛びかかった。



 ◆



 達也はネストールに飛びかかるとう同時に懐からピアニカを取り出し、振りかぶる。

 それを見たネストールがした発言は、達也とエルナにとって意外なものだった。


「君は缶ジュースサモンナイトを得意としている様だが、実は私も使えるのだよ」

「何だと!?」

「え、ネストールも使うの!?」

「缶ジュースサモンナイト!」


 ネストールが地面に手を叩きつけると、缶ジュースサモンナイトの効果で地面が光を発する。そしてその光の中から現れた物に、達也とエルナは目を奪われた。

 ネストールが呼び出したそれは一輪車だった。小学校で使われることの多い車輪が一つしかないあの一輪車だ。


「一輪車だと……?」

「また変な武器出てきた……」


 ネストールが呼び出した一輪車が達也のピアニカを受け止める。それを受けて達也は慌てて着地し、ネストールから距離を取った。


「馬鹿な、一輪車でピアニカを受け止めただと!?」

「文字だけ聞いたら意味が分からないよ」


 達也の言った言葉に思わずツッコミを入れるエルナ。

 そんな2人を見て、ネストールは忠告する様に語りかける。


「この一輪車ブレードを、オリハルコンで出来たピアニカごときと一緒にされては困る」

「ああ、そのようだな。一体なんだその武器は?」


 その達也の言葉に気をよくしたネストールは、一輪車ブレードの性能を得意気な態度で解説しようとする。


「この一輪車ブレードは遥か昔、紀元前6000年前にあったとされる超古代文明と敵対した、天上の神々が作りだしたとされ」

「話長えよ!!」


 達也はネストールをピアニカで殴り飛ばした。


「質問しておいてこの対応!?」


 達也の突然の凶行を見てエルナが叫ぶ。

 一方、ネストールは殴り飛ばされ地面に倒れながらも達也に問う。


「どういう……つもりだ……」


 その問いに達也は返答する。


「うるせえ、お前の武器解説なんてどうせフレーバーテキストなんだよ! そんなもんにこれ以上無駄な尺取られてたまるか!!」

「超理不尽だよその言い分!」


 達也の理不尽な言動にツッコミを入れるエルナ。

 しかし達也は話は終わりだとばかりにピアニカを構え、ネストールに向き合い一言。


「茶番は終わりだ。てかもう終わってくれ、長すぎる」

「そりゃ四天王戦からずっとだけどさ……」

「そういう訳だから行くぜネストール、六文銭はちゃんと持ったか!?」

「六文銭!?」

「そっちこそ! オボロスちゃんと持っているな、カローンが二百年待たすことになるぞ!」

「ギリシャ神話じゃないんだから!」

「そんな冥王星の衛星みたいな奴に会う機会なんざねえよ!」

「さっきから会話の内容がなんかマニアック!」


 こうして、戦いは再開された。


「死をくれてやろう!」


 再開と同時にネストールは達也に向かって走り出す。それを見た達也もまた同様にネストールに向かって走り出す。

 やがて二人が互いに射程距離内に入ると、達也がピアニカを振りかぶり攻撃する。それをネストールは一輪車ブレードで受け止めて鍔迫り合いとなる。

 その状態が10秒ほど続いたかと思うと、達也はピアニカを手から放して落とし、左に避ける。それによりネストールは体勢を崩し、隙が生まれる。

 生まれた隙を狙い達也は殴り掛かる。だがネストールは足を前に出して踏ん張ることでこれ以上体勢を崩すことを回避し、そのまま達也の脇腹にエルボーを喰らわせた。


「ぬお――――っ! じゃなくてぬわ――――っ!」

「意外と余裕あるね!?」


 達也は吹き飛ばされて悲鳴を上げるものの、宙返りをすることで姿勢を整えて着地する。

 着地したと同時に達也は、缶ジュースサモンナイトでさっき落としたピアニカを回収するが、ネストールはまたも向かっていく。

 それを見て達也はあることに気付く。


「接近戦しか出来ないのか……?」


 だったらこれだ、と達也は思い缶ジュースサモンナイトを発動させて、ある物を呼び出す。


「喰らいやがれ。破壊をもたらす鉄槌の矢、リコーダーアロー!」

「また楽器!」


 そう、達也が呼び出したのはソプラノリコーダーの形をした矢だったのだ。それも1本や2本では無く20本近くある。

 リコーダーアローは達也が命じるとネストール目がけて飛んでいく。


「ふん、こんな物で私が止められると思ったか馬鹿め」


 ネストールは飛んできたリコーダーアローを鼻で笑いながら、一輪車ブレードを振り弾き飛ばす。

 その光景を見て今度は達也が鼻で笑った。


「はっ、馬鹿めはこっちの台詞だぜ!」


 その言葉と共に、リコーダーアローは爆発した。


「何で爆発するの!?」

「今のはただのリコーダーではないのか!?」


 そしてエルナとネストールは、リコーダーが爆発するという異常現象に驚愕する。

 それを見た達也は得意気に語る。


「リコーダーアローはその名の通り、避けられて命中が不可能になったら勝手に自爆するんだよ!」

「どこがその名の通り!?」

「そう言う事だから喰らってくたばりな!!」


 達也は再び缶ジュースサモンナイトを使用、リコーダーアローをに10本程召喚してネストールに放つ。

 しかし、ネストールは動揺することも無くこう言い放った。


「ふん、その矢は回避すればダメージが増えるのだろう。だったらこうするまでだ!」


 その言葉の後、ネストールはリコーダーアローの元へ走り出した。そして大きく腕を広げ、更に反復横跳びを加える事で、全ての矢に当たることに成功した。

 その光景にエルナはドン引きして言葉を失い、達也も軽く引きながらネストールに問う。


「……どうだネストール、リコーダーアローの味はよ?」


 しかし次の瞬間、ネストールは何事も無いかのように笑い始めた。


「フハハハハハ、どうやら当たった時は普通に刺さるだけようだな! ならばこの私を殺すことは出来ん!!」

「何で普通に当たった方がダメージ少ないの!? 武器として間違ってない!?」

「そんな、矢が刺さったら痛い筈だ……」

「私今凄い頭の悪い言葉聞いてる気がする」


 達也の驚愕を尻目に、ネストールの高笑いは続く。


「ハハハハハハ、私も四天王やグローズと同じく改造人間なのだよ。そのおかげで矢が刺さっても問題無い!」

「いい加減にしろよお前!」


 ネストールの話を聞いていた達也が、なぜかいきなり怒り出した。エルナは人間を改造するという行いに怒りを覚えたと思ったが、実際は違った。


「改造人間改造人間って、平成ラ○ダーが改造人間NGな理由知ってて言ってんのかよこのクソ野郎!」

「よく分かんない理由でキレた!」


 達也の言葉にネストールは高笑いを交えながら得意げに説明する。


「いや、改造しているのは遺伝子だけだから。よって大丈夫だ、問題ない」

「いわゆる遺伝子組み換え人間か……」

「遺伝子組み換え人間!?」

「通称ミュータント・ヒューマンズ」

「ヒューマンズいらなくない!?」

「今秋公開予定」

「何が!?」

「隙を見せたなネストール宣伝部長!」

「宣伝部長!?」


 達也は缶ジュースサモンナイトを発動し、三度リコーダーアローを呼び出し攻撃する。

 ただし今度は量を4倍、つまり80本程を呼び出して発射した。

 そして達也は言い放つ。


「ネストール、お前がどれ程のヨコトビストであろうと、この数のリコーダーアローを体に受けるのは不可能だぜ!」

「ヨコトビストって何!?」

「ならば――」


 達也の言葉を聞いてネストールは一輪車ブレードレプリカを体の右斜め下に降ろす。

 そして――


「ふんぬっ!」


 思いっきり振り上げた。

 それにより強い風が起こり、リコーダーアローは軌道を変えられネストールに届かない場所で自爆した。

 しかし自爆した瞬間、達也はあらかじめ呼び出しておいたスピア・ザ・スペースシャトルをネストールに投げる。

 だがネストールは飛んできた槍を、右肘と右膝で挟んで受け止めた。


「嘘、あんなタイミングで飛んできた槍を受け止めた!?」

「鈴木達也君は不意打ちが少し不得手なようだね」


 リコーダーアローを囮としたスピア・ザ・スペースシャトルでの遠距離攻撃。それを見破り防いだネストールは達也に対し見下した評価をする。

 しかし


「そうでも無いぜ!」


 達也はネストールが槍を受け止めたと同時に空中に跳び、ネストールが槍を受け止めたころには既に射程圏内に入っていた。

 ネストールは咄嗟に一輪車ブレードで防ごうとするものの、達也のピアニカの方が早くネストールを殴り飛ばす。


「鯖ぁ!」

「鯖!?」


 殴られたネストールは体勢を崩し、隙が生まれる。


「一富士、二鷹!」


 そこに達也は更に2回攻撃。


「三寒、四温!」


 またも2回攻撃。


「五目御飯に、姉三六角!」


 そして最後の2回攻撃で、ネストールは地に倒れ伏す。それを見て達也は一言。


「これぞ我が奥義、三連殺よ」

「6回攻撃してたのに……」


 そして言い放たれたネストールは、達也の言葉を無視しながら懸命に立ち上がる。しかしその足は震え、誰が見ても立つのがやっとにしか見えない。それは達也も例外ではない。


「どうしたネストール、そんな西○カナみたいに震えてよ。俺に嬲り殺される為に立ち上がったのか?」

「そういうこと言うから悪役っぽくなるんじゃないの?」

「……きでんのけんとうはたたえるが、もうかちめなんてないぞー」

「もういいよ達也は悪役っぽいこと言うキャラで。無理に正義の味方っぽくしなくても大丈夫だから」

「大丈夫? 俺のこと嫌いになったりしない?」

「しないから」


 エルナの言葉に無言で喜ぶ達也。その喜びの余り、唐突に変なダンスを目の前に居るネストールを無視して始める始末。

 そのダンスを見ながらネストールは不敵に笑いつつ告げる。


「鈴木達也君、どうやら私1人では君に勝てない様だ」

「だったらどうする、降伏でもするか? 殺すけど」

「降伏すら許さないんだ!?」


 達也の非道な一言に思わず反応するエルナ。それに対する達也の対応は冷静そのものだ。


「いやだって、あいつが降伏したところで夢を諦めるとは思えないしさ。そして諦めない限りエルナの命は危ないままだぜ」

「それは、そうだね」


 達也の淡々とした指摘によって、エルナがネストールの殺害を受け入れ始めるが、当のネストールは不敵な笑みを崩さない。

 その理由は次の一言で分かる。


「私一人では勝てない、だから援軍を呼ばせてもらおう。缶ジュースサモンナイト!」

「なっ!? この状況で援軍になるほどの予備戦力があるのか!?」


 ネストールは右手を地面に叩きつけ缶ジュースサモンナイトを発動し、達也はその行為でなくこの状況で呼べる物があることに驚く。

 しかしネストールが呼び出し、現れた物は達也にとって意外な存在だった。


「お呼びですか、ボス?」


 そこに現れたのはメッセンジャーの少女、グローズだった。達也はその姿を見て驚きながらも端的な事実を告げる。


「そのグローズって奴は、俺が見たところスキナンジャー1人にすら及ばない様に見える。そんな奴1人来たところで死人が無駄に増えるだけだぜ!」

「確かに君の言うとおりだ、1人ならばな」


 ネストールの意味深な言葉に疑問を覚える達也だが、次の瞬間信じられないことが起こる。

 グローズが2人、4人、8人、16人、32人と倍々式で増えていくのだ。

 その様子をネストールは得意気に叫ぶ。


「1人では無駄に死体が増えるだけ。ならば10人なら、100人なら、1000人ならどうだ? 君を殺すことが出来るとは思わないかね!?」

「これがグローズの能力……!」


 達也はグローズの増殖能力、そして昼には空を飛ぶ姿を見たという事実を顧みて、結論を出した。それは――


「グローズは忍者なのか!」

「何でそうなるの!?」


 達也の出した結論に即座にツッコミを入れるエルナ。たが達也は冷静に、冷静に馬鹿な反論をする。


「だって考えろよ、陰分身して空飛んだら大体忍者だろ?」

「いや忍者はそんなことしないって絶対!」

「……とあるSF作家はこう言った、人間が想像できることは人間が必ず実現できると。つまり、24世紀では空を飛び影分身する忍者が実現したと考えれば妥当じゃないかと思うんだ」

「その頑なさは何!?」


 達也が謎の拘りを示している中、グローズの内1人がネストールにこんなことを言った。


「ボス、私忍者名乗ってもいいですかね?」


 その言葉にネストールはなんて事なく普通にこう返す。


「君が私の部下として働くなら、君が何を名乗ろうと君の自由だ」


 ネストールの言葉にグローズは嬉しそうにしながら達也に呼びかける。


「じゃあ私忍者名乗ります。達也さーん、忍者ですよ忍者! 女忍者ですよくノ一ですよ!」


 その言葉を聞いた達也はグローズの内1人を殴り飛ばした。


「何で!?」

「てめえなんか忍者じゃねえ!」

「しかも凄い手のひら返し見せてきた!」


 忍者じゃない、その言葉を聞いた殴られたグローズとは別のグローズが赫怒の如く猛る。


「私達改造人間に忍者を名乗る自由を与えないなんて、達也さんは何様ですか!?」

「そんなことはどうでもいい! 俺が怒ってるのは女忍者とくノ一を同一視してることだ!」

「……ど、どういう意味ですか?」


 達也の怒気に圧倒されながらも、グローズは必死に問いかける。


「いいか。くノ一はな元々女忍者の意味で使われていた言葉じゃなくて忍者がハニートラップ要因に使う部下の隠語でしか無かったんだ」

「そうなんだ……」

「そして女忍者なんて現実にはほぼ存在しなかったんだ! だからお前は――」

「ちょっとは居たなら私名乗ってもいいんじゃないですかね?」


 達也の言葉を遮ったグローズの言葉。その言葉で達也の怒気は一瞬で収まってしまった。


「あ、あれ……? そうなる……、のかな?」


 その反応を見て、グローズはここぞとばかりに達也を責めたてる。


「私傷つきました! 凄い傷つきました! これは慰謝料払ってもらわなきゃ許せませんね!!」


 この言葉の直後、達也はグローズを殴り飛ばした。


「口で勝てないから暴力!? 間違いは認めようよ!」

「俺とお前達は戦う宿命にある」

「そして無理矢理誤魔化そうとしている!」

「上等です。これで私にもあなたを殺す理由が出来ましたよ達也さん!」

「今思ったけど、敵も味方殺意溢れすぎて怖い」

「「「慣れろ」」」

「そこで敵味方問わず一致団結!? これが人と人が分かりあうってことなの!?」


 変な部分で敵と味方の意志が一致したところで、達也とエルナはあることに気付く。グローズの集団が部屋を埋め尽くすほどに数を増やしているということに。


「凄い増えてる!」

「あの忍者談義の隙に増やしたのか……。なかなか策士だな」

「いやこれ達也が無駄話振ったせいだよね」


 エルナの正論を無視して達也は手近なグローズの腕を握る。


「秘技、人間台風!」


 そしてグローズを握ったままコマの様に回り始めた。そして回転が速くなるにつれて風が強くなり、やがて台風と称されてもおかしくないほどの強風を生み出す。

 その強風の中心で、高笑いしながら達也は叫ぶ。


「ハッハー! グローズを部屋に敷き詰めてリコーダーアローを封じたつもりか知らないが、その程度でこの鈴木達也を無力化したと思い上がるなよ!」

「流石だ達也君……、だが君こそ思い上がらない方がいい」


 達也の叫びにネストールは冷静な言葉で返す。その言葉の意味を達也は理解できない。

 それから3分後。


「三半規管!」


 と達也が叫び、握っていたグローズの腕を放しそのまま別のグローズの集団へ投げつける。そして投げつけられたグローズは爆発し、周りを巻き込んで消滅した。


「何で爆発!?」

「何アレ怖い」


 そして達也とエルナは爆発に驚愕していた。


「何で達也が知らないの……」

「多分ミシャグジ様のおかげだな……」

「それ祟り神! うかつにネタにしちゃダメな奴!」


 その刹那、達也とエルナは信じられないものを見る。


「馬鹿な、アリ○ール……。じゃないありえない」

「どんな言い間違いなのそれ」


 さっきグローズが爆発した場所から、グローズが再び現れたのだ。それも同じ数では無く、明らかに爆発する前より多い数が。


「予想以上の増殖スピードだ。まさかエネルギー源でもあるのか?」

「達也君は目の付け所が良いね」

「何?」


 達也としては適当なことを言ったつもりだったのだが、ネストールになぜか目の付け所がいい扱いをされちょっと戸惑う。


「戸惑ってるんだ……」

「さて、そんな達也君に問題だ」

「問題? コイ○ングの素早さ種族値は80だぜ」

「そんなことは問わない。それよりも疑問に思わなかったかな、エルナ・クンスト以外のホムンクルスについて」

「エルナ以外のホムンクルス……? はっ、まさかニーナとアレキサンダーをキメラに!」

「鋼の錬○術師!?」

「全然違う」


 達也の懐かしい言動を冷たくあしらい、ネストールはため息をつく。そして答えを見せようとした所で、エルナが口を開く。


「まさか、他のホムンクルスをエネルギー源に!」

「そのまさかさ」

「何でそんなことを!?」


 エルナの叫びには悲痛なものが籠っていた。しかしネストールはそれを無視した態度で答える。


「必要がなくなった上に、ランニングコストも掛かるからね。処分ついでに有効活用させてもらっただけのことさ」

「なんてこと……!」


 ネストールの非道な行いに声も出ないエルナ。だがその意思は達也に引き継がれる。


「実験材料だのエネルギー源だの好き勝手しやがって!」

「……率直に聞くが、私の行いはモルモットなどを使った動物実験と何か差があるのかね? モルモットならよくて、人型をしていれば駄目な道理があるなら教えて欲しいものだ」


 ネストールの口から出た言葉は、エルナからすれば決して受け入れられないものだ。しかしその問いに達也は、


「何か違う!」

「そこははっきりして!!」


 凄く適当な答えを返した。当然エルナは叫び、ネストールは納得できず達也に説明を求める。


「いや、その何かを説明して欲しいのだが」


 その問いに達也にキレた。


「うるせえ、そもそも俺はエルナを助けに来たんであってお前の行動の是非を問いに来たんじゃねえ! そんなもんの答えなんか用意してるか!!」

「ふざけるな、明確な主張も無く私の道を阻むか!!」

「主張ならある、お前の是非は知らねえが女の子無理矢理監禁するのは間違いなく悪。それを阻むことに誰が異議を唱えるんだ?」

「そこだけ抜き取れば確かに正論だな……」


 達也の答えに一定の理解を示すネストール。

 しかし彼は次にエルナを指差し問う。


「ならばエルナ・クンスト。私が造り出したホムンクルスに、君と同じ存在を燃料にする事の是非を問おう!」

「そんなの決まってるよ」

「ほう?」


 迷い無い返答にネストールは驚きつつ、エルナの答えを待つ。


「……未だに自分がホムンクルスという事に戸惑ってる。でも達也が言ってくれた、だからどうしたって。なら私は人間として生きていたい」

「生意気な口をききますね……」


 エルナの言葉に苛立ちを見せるグローズ。そのグローズを達也は銃で頭を吹き飛ばす。


それを尻目にエルナの話は続く。


「そんな私と同じ存在を、未来を生きたくなるかもしれない存在を燃料扱いするような人が、正義であるわけがない! 正義であってたまるか!!」


 エルナの言葉が終わる。それに達也は迷うことなく賛同した。


「安心しろエルナ、お前やお前と同じ奴の未来を阻むそんな悪党は、この俺鈴木達也がぶっとばしてやるよ!!」

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