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第2話 Wild Challengerなあいつら(前編)

 達也がエルナを助け、XYZ事務所に連れてきてから3時間が経過した。本来ならば朱莉はエルナから組織の建物やそこから見える景色を聞き、それを元に組織の拠点を聞き出そうと考えていた。だがしかし


「私が捕まっていた所に窓なんてありませんでした」

「じゃあ建物に何か特徴とかないの? やたらとネバネバしてるとか」

「そんな特徴のある悪の組織は嫌っすね……」

「ラ○ブ・ア・ラ○ブのSF編のステージみたいな感じでした、転移装置とかありましたし」

「例えが微妙に分かんねえ……。というか転送装置があるのは現代編だろ」

「アンタ本当に記憶喪失なの?」


 エルナから得られる情報は、記憶喪失発言への疑念を生み、組織の情報隠蔽能力の高さを証明する事にとどまってしまった。

 それでも朱莉達は色々作戦を考えたが、最終的に面倒臭くなってきたのかこう言い放った。


「とりあえず、敵がエルナを回収したいなら刺客でもそのうち送り込んでくるでしょ。それを達也が返り討ちにして尋問、これでいくわよ。異論は認めないわ」

「了解っす。戦闘なら俺のフィールドだし」

「いいの達也? 一番きつい所押し付けられてる気がするけど」

「いいのよエルナ、達也は喧嘩と遊び以外脳のない男なんだから」

「やめてくれ所長、その言葉は俺に効く。やめてくれ」

「否定できないんだ!?」


 こうして達也達は待ちの戦術を取ることになった、のだが達也はふとあることに気づいた。これ向こうがこっちの居場所を知ってないと待ちの戦術の意味無いんじゃないか、と。そして俺達まだ昼飯食ってなくね、と。

 また朱莉も気づいた、そう言えばこの前借りたDVDの期限今日までじゃなかったか、という事に。


「「皆、外に出よう!」」


 2人の思考は何一つ一致していないが、発言だけは一致した。が、エルナはそれを阻むような言葉を口にする。


「あの、いいですか二人とも?」

「何だ」

「何よ」

「いや私が言うのは明らかに筋違いだなーって思いますけど、普通こういう場合ってなるべく他人を巻き込まない様にするものだと思うんです。外に出ていくとかして大丈夫ですか?」


 巻き込むどころか思いっきり元凶である自分が言うのはおこがましいですけど、そう後ろに付け足しつつもあまりにも他人に無頓着な達也と朱莉を見て思わず口を出してしまうエルナ。しかし、その言葉に対して返された朱莉の言葉にエルナは唖然とする。


「ああそういう心配? 大丈夫大丈夫、この町の住人にとって謎の組織との戦いに巻き込まれるとかよくある事だから」

「どんな町!?」


 朱莉が告げる事実に今までしていた敬語すら忘れるエルナ。エルナは今の言葉は真実なのかどうかを達也に聞く。


「え? いや、ちょっ……!? 今の神澤さんの台詞本当なの達也!?」

「本当本当。大体半年に1回くらいのペースでこの町の誰かが悪の組織と戦ってるらしいよ、うん」

「何でそんあ頻度で!?」

「いや知らないけど……、地脈の流れとかじゃねえの?」

「地脈!?」

「まあこの町の名物みたいなもんだよ。それに向こうの組織がこっちの居場所知らないと待ちの戦術もクソも無いし。あと腹減ったから昼飯欲しい」

「え、お昼ご飯?」

「ちょっと、あたしが外に出ようっていたのはDVD返すためよ!」

「DVD!?」


 ここでエルナは自分と二人の考えがかなり違う事に驚愕する。そんなエルナの事はさておいて達也と朱莉はこれからの予定を話し合う。


「え、DVDっすか? でもまずは飯の場所決めましょう」

「コンビニ弁当でいいでしょ弁当で、安上がりにするわよ」


 とても謎の組織に狙われている少女を匿っているとは思えない会話をする始末。そんな二人を見てエルナは凄く微妙な表情をしながらこう問いかける。


「そんな馬鹿話置いといてコンビニ行くわよ」

「馬鹿話!?」


 馬鹿話扱いされるのは凄く納得のいかないと、態度でありありと示すエルナ含め3人は、事務所から出て近所のコンビニへ向かう。そして、特筆すべきこともないままあっさりとコンビニに到着した。

 しかし3人がコンビニに入ろうとした瞬間――


「見つけたぞ、エルナ・クンスト!」


 エルナを呼ぶ謎の声が聞こえた。


「ついに来たわね敵組織の刺客が。達也、やっておしまい!」

「アラホレサッサー!」


 その言葉に朱莉と達也は軽くボケながら、エルナは無言で声が聞こえた方を向く。するとそこには、全身タイツに覆面を被った5人組、例えるなら戦○ヒーローのような風体の集団が横並びで立っていた。すると、その5人組の内、達也達から見て一番左の人影は何を思ったのかいきなり叫ぶ。


「女子小学生に欲情するのは平和のあか――」

「オラァ!」


 どうやら名乗り上げだったようだが、そんなものを一々聞く達也ではない。達也は近くに落ちている石を拾い、問答無用で名乗り上げている存在に投げつけた。しかし


「溶けただと!?」


 投げつけた石は人影に触れる直前に液状に変わり地面へと落下した。その光景を見ていた集団の真ん中に居る存在は高笑いをしている。


「ハーハッハッハッ、我らの名乗り口上を聞かずに攻撃してきた者は全て溶けてなくなるのだ! 今までにも攻撃してきた愚か者は5人位居たが、死ななかったのは貴様が初めてだぞ鈴木達也。褒めてやろう!」

「もう名前を知られていることに驚くより、その褒め言葉が本気で嬉しくない……!」

「という訳で聞け。聞かなければ、辺り一帯に開封済みシュールストレミングで絨毯爆撃させてもらう!」

「それ本当やっちゃ駄目な奴だからな! 場合によったらマジで捕まるからな!」


 そうツッコミを入れつつ達也は攻撃する素振りを見せない意思表示の為か、ポケットに両手を入れ、黙って集団を見ている。一方、それを見てたエルナは朱莉に向かって思わずこんなことを言っていた。


「だ、大丈夫なんですか達也!?」

「あれくらいでどうにかなるような口だけ男なら、アンタを助けるなんてアタシが言わせないわよ」


 朱莉の言葉にエルナはこれ以上何かを言うのは良くないと思い、何も言わず達也を見る。達也はエルナの視線に気づいたのか、手を振って大丈夫だと応じる。そして達也は、集団を見据えて一言。


「じゃあとっとと名乗れ覆面集団」

「いいだろう、そちらから見て左から一人づつ行かせてもらおう。ド肝を抜いてやる!」


 その真ん中の声を受け、一番左に立っている者は無言で頷き、そして名乗り上げる。


「女子小学生に欲情するのは平和の証、性癖レッド! 通称ロリコンレッド!!」

「年を積み重ねての女性、性癖グリーン! 通称熟女フェチグリーン!!」

「尻は形が重要だ、性癖レッド! 通称尻フェチレッド!!」

「女が女を好きになって何が悪いの、性癖レッド! 通称ビアンレッド!!」

「妹じゃなきゃ勃たない、性癖グリーン! 通称シスコングリーン!!」

「「「「「5人揃って! 性癖戦隊スキナンジャー!!」」」」」


 特撮ならばこの後爆発が起こりそうなほど堂々とした名乗り上げシーン。だが名乗りを受けた達也達は思わず固まり、スキナンジャー達も達也達の反応待ちで動くに動けない。そんな時間が30秒ほどたった頃、朱莉はやっと一言こう呟いた。


「完全にフルハウス……!」


 その一言がきっかけかどうかは定かではないが、エルナも後に続いて叫んだ。


「いや色被りもそうだけど、それよりスキナンジャーって何!? 何その異様に堂々とした変態宣言! 後なんで通称まで名乗るの!?」


 エルナの叫びに対し真ん中、尻フェチレッドは得意げにこう答えた。


「ふん、我らはその身に背負った運命故に定職に就けなかった者の集まり」

「それ性癖関係無いよね?」

「故にこの名は我らの反逆の意志を示す物、異常性癖を悪と呼ぶ世界へのな!」

「気は済んだか?」


 力強い尻フェチレッドの叫び。

 その叫びはエルナと朱莉を少しだが圧倒し、仲間のスキナンジャー達を鼓舞していた。

 しかし、達也にそんなものは通じない。達也はいつの間にか何処からともなく取り出したロケットランチャーを構え


「GO TO HELL!」


 躊躇なく発射した。その放たれた弾丸は、一部の情けもなくスキナンジャー達を消し飛ばす為に爆炎を上げる。やがて爆発は終わり炎は消え、スキナンジャー達の姿が見える。するとそこには、倒れ伏したシスコングリーンの姿があった。


「大丈夫かシスコングリーン!」


 その姿を見た尻フェチレッドは慌ててシスコングリーンの元へ駆け寄り肩を揺らし、他の仲間は必死にシスコングリーンに呼びかける。


「しっかりしろシスコングリーン!」

「あなた結婚した妹と間男でいいから関係もつまで死ねないって言ってたじゃない!」

「スタイル抜群でエロいんだろ!? 性格も凄い良いんだろ!? そんな妹に彼氏出来た時黒魔術頑張って覚えてたじゃないか! あの時の事思い出せよシスコン!」

「頑張れ頑張れ絶対立てるって気持ちの問題だから!」

「み、皆……」


 仲間たちの声援を受け立ち上がろうとするシスコングリーン。しかし達也は無情にも攻撃の手を緩めずに


「もう一回攻撃するドン!」


 ロケットランチャーをもう一発発射し、スキナンジャーを爆炎で包み込んだ。やがてそれが消えると、今度こそシスコングリーンは起き上がることは無くなった。それを見て達也は何を思ったのか、エルナにこんな事を問いかけた。


「なあエルナ、俺悪役になってない?」


 達也は別に自分が間違ったことをしているとは思っていない。しかし自分が一方的に攻撃し続け、相手に何もさせないのは絵面的に大丈夫だろうか。達也はそう思った。しかし


「大丈夫、達也悪役になってない。達也主人公」

「それに相手何かドラマチックな雰囲気出してるけど所詮変態だから。社会倫理的にどうかと思うのも居るからオールオッケー」


 エルナと朱莉はちゃんと達也を励ました。そんな二人の励ましを受けて達也は自信を取り戻す。


「何かエルナは片言っぽいけどそう言うなら大丈夫だな!」


 一方スキナンジャー達は激怒した。必ずかの暴虐を働く鈴木達也を殲滅しなければならないと決意した。尻フェチレッドは叫ぶ。


「よくも我らの友をやってくれたな。あいつは、性癖グリーンはこの中で一番の若輩であったが誰よりも家族思いの男だった!」

「性的な意味ででしょ?」

「そして努力を欠かさぬ男だった。妹に彼氏が出来れば黒魔術を学び、実践し技術を高める様にな!」

「ロクなものじゃない……」

「うるさいぞ捕縛対象!」


 エルナの適切なツッコミに烈火のごとく赫怒する尻フェチレッド、その様子を見てハタラカナインジャーの仲間達はレッドを慌てて宥める。


「落ち着いて下さいリーダー!」

「あんな世の酸いも甘いも知らない小娘の戯言など気にしないでくださいリーダー!」

「リーダーだったんだ一番変態度薄そうな人が!?」


 エルナは薄々分かっていた事実だったが、ちょっと驚く。そして達也はいつまでたっても終わらない茶番に苛立ちを隠せないでいた。


「お前らいつまでふざけ続けるんだよ。お前らがそういう事してるせいで俺ボケる隙ねえじゃねえか! 俺は主人公なんだぞ、ギャグ時空だけど主人公なんだぞ」

「これがおふざけに見えるのか無感情野郎め!」

「「「絶対に許さない!」」」


 達也のその言葉に怒りを見せたスキナンジャー4人は、苛立っている故に出来た達也の隙を突き4方から達也を囲む。そして


「ブレック・ファースト・イーティング!」

「朝食食べてますって言ってるだけじゃん!」


 スキナンジャー達はそれぞれ右手を前に突きだし、そこに光の弾が構成されていく。その光は人が持つ精神のエネルギー、性欲だ。


「性欲が集まってるのそれ!?」


 そのエネルギー弾を発射しスキナンジャー達也を攻撃する。それを見た達也は右手を地面に叩きつけ叫ぶ。


「だったらこれだ!」


 その言葉が発せられた瞬間、右手が叩きつけられた地面は強烈な光を発し、その光の中から一つの小さな物体が現れる。達也はその物体を迷うことなく手に取り、一分の躊躇もなく振り回す。するとそれだけで、達也に向かっていた4つの光弾は弾き返される。


「馬鹿な!?」


 尻フェチレッドは思わず叫ぶ。しかし心は慌てていても体は咄嗟に回避を選択し、空へ逃げた。そしてそれは他の三人も同じ。自分と同じ様に回避に成功した三人を見て安心する尻フェチレッド。しかし次の瞬間


「甘すぎるんだよなぁ!」


 達也もまた飛び上がり、スキナンジャーに攻撃を仕掛ける。対象は、スキナンジャー紅一点のビアンレッド。達也はビアンレッドの元に一瞬で飛び上がり、持っていた物で殴りつけビアンレッドを地面に叩きつける。叩きつけられたビアンレッドは、一度は立ち上がろうと踏ん張ったものの、受けたダメージに耐えきれず気絶した。


「「畜生――――――!!」」


 それを見て思わず光弾を発射しようとするロリコンレッドと熟女フェチグリーン。それを見た尻フェチレッドは慌てて二人を止める。


「やめろ二人とも、奴にエネルギー弾をまた撃った所で跳ね返されるのがオチだ!」


 その言葉に2人はハッ、とした表情になり光弾を撃つ事をやめる。そしてスキナンジャー3人は達也を睨みつけながら地面に着地した。そして同じタイミングで着地した達也に向かって攻撃を仕掛けようとする。しかし尻フェチレッドが達也の持っている物体を見て様子を一変させた。


「あ、あれは……」


 それは剣と言うには余りにも小さすぎた。小さく、薄く、軽く、そして白と黒の鍵盤を持ち、そして息を吹き込む口があった。


「いやピアニカじゃん!?」


 達也が呼び出し、さっきまで武器として振るっていた物がエルナの目に留まる。そしてエルナはその持ち物にツッコミを入れた。

 そしてそんなエルナには目もくれず、尻フェチレッドは戦慄していた。それでもなお尻フェチレッドは今共に立っている、そしてすでに倒れた仲間の為に震えを堪え、絞り出すかのように叫ぶ。


「……馬鹿な、ピアニカで我らの必殺の一撃を何かいい感じに跳ね返しただと!?」

「何か言い回しがあやふや!」

「だって当然だろ、このピアニカはオリハルコン製だぜ」

「オリハルコン!?」

「貴様、オリハルコンとか現実にある訳無いだろ! 中二病気取りか!?」

「その発言に説得力がない……」

「誰が中二病だボケ!? こっちはそんな物とうの昔に卒業してるっつの! 仰げば尊し歌ったわ!!」

「何この会話」


 余りにも怒涛すぎるボケラッシュに思わず頭を抱えてうずくまってしまうエルナ。そんなエルナに向かって朱莉は優しく声をかける。


「エルナ、この町で生きていくコツはあるがままを受け入れる事。激流に身を任せ同化しなさい、さすればアンタは楽に生きれるわ」

「私はついていけますか、このネタまみれの世界のスピードに。いや正直無理だと思いますけど」

「そんな事ないわ。大丈夫大丈夫多分きっと大丈夫。いいのど飴探してあげるし、いい耳鼻科知っているから」

「耳鼻科ってどういうことですか!? 喉はどうあっても痛めると!?」

「それにねエルナ、達也を見てみなさい」


 その言葉を聞きエルナは達也の姿を見る。

 そこには、ピアニカを構え不敵にたたずむ達也の姿があった。

 エルナはそれを見て思わず呟く。


「何かあんなふざけた姿なのに、妙に頼もしく見える……」

「それがアイツ。ありとあらゆる理不尽を使いこなし、ギャグ補正とその場のノリでどんな難敵も打ち破る、我がXYZ探偵事務所のバイトにして戦闘要員。それが鈴木達也よ」


 その朱莉の言葉には強い信頼があった。出会って数時間程度のエルナには持つことのできないものである信頼が。

 それはいいけど、やっぱりもう少し自分が叫ばなくてもいい戦い方をして欲しい。その旨を朱莉に伝える。


「無理ね、あれやらなくなったらあいつの戦闘力10分の3になるわよ」

「微妙なスケールダウンですね……」


 しかしその訴えは無情にも却下された。

 そしてそんな話をしているとは露とも知らない達也は、目の前に残ったスキナンジャーに向かいこう話す。


「もうやめにしようぜ。こっちはほぼノーダメ、対してお前らは5人中2人が気絶。俺としてはお前らが負けを認めて、潔く組織の情報を吐くって言うんだったらこれ以上戦う理由は無いしな」


 それは降伏勧告だった。その言葉を聞いてロリコンレッドと熟女フェチグリーンは憤る。


「ふざけた事を!」

「我らの仲間を殺しておいて!」

「いや死んでねえよ、気絶してるだけだって」


 達也の冷静なツッコミも意に介せず二人は達也を睨む。その一方で尻フェチレッドは冷静にこの状況を見据え、やがて答えを出した。


「ここで負けを認め素直に情報を吐けば鈴木達也、お前は我らを見逃すだろう。だがそれは出来ない。何故なら、理由はどうあれ我らは組織に忠誠を誓い、敵を打ち払う剣になると決めているからだ!」

「そうかよ、じゃあ全身全霊でぶちのめしてやる!」


 その言葉と共に達也は構え、そしてまだ立っているスキナンジャー達も同じく構える。しかし、次の一言は達也を驚愕の海に沈める。


「ロリコンレッド、熟女フェチグリーン、合体だ!」

「合体ですかリーダー!?」

「分かりました、やってやりましょう!!」

「え、何? 合体?」


 達也は、敵の集団からあまりにも予測不能な言葉が飛び出し、あっけにとられてしまう。

 しかしスキナンジャーはそんな事を考慮する義理はない。尻フェチレッド、ロリコンレッド、熟女フェチグリーンの3人は空へ飛び上がり


「不労の心を胸に!」

「己の性癖を正義と信じて!」

「どんな敵にも立ち向かう為に!」

「「「合体!」」」

「……何かちょっとかっこいい気がしてきた」

「そうかなぁ……?」

「というかその演出必要?」

「多分必要っすよ、多分だけど」


 スキナンジャーの合体台詞をちょっとかっこいいと思う達也。それに対し正直同意できないエルナ。そして演出は必要なのかという疑問を口に出す朱莉。

 3つの言葉が渦巻く中、残った3人のスキナンジャーは1つに混じり合っていく。やがてそれが完全になり、1人の戦士となった。



 ◆



 その姿は合体する前と大して差は無かった。まるで戦隊ヒーローの様な風体は何も変わっていなかった。

 ただし中身は変化していた。頭数こそ減ったものの威圧感は上昇し、達也達にさっきよりもパワーが上がっていることを示している。

 しかしシルエットこそ大した差は無い物の、現れた戦士のデザインの色の比率は2:1で赤と緑で別れていた。

 その部分にエルナは思わずツッコミを入れる。


「何か色の配分バランス悪くない!? 普通1:1にすると思うんだけど!」

「デザインに関しては当局は一切関与しておらぬ」

「急に政治家みたいな言い訳を……」


 デザインにツッコミを入れるエルナとは裏腹に、達也は小さく笑みを浮かべながらボソリと呟く。


「へえ、さっきよりはましな勝負が出来そうな強さになったじゃないか」

「達也……」


 相手の強さが増しても余裕を崩さない達也の姿を見て安心したかのような態度を示すエルナ。


「達也!」


 しかし、そんな達也に朱莉は声をかけた。


「何すか所長?」


 達也は朱莉に返事をし、朱莉の方へ顔を向ける。達也の顔は不満が浮かんでいる。

 しかし、朱莉はそんな達也にこう告げたことで達也は恐怖した。


「アンタのさっきの台詞、悪役っぽかったわ」

「マジすか!? 俺の主人公度下がってる!?」

「向こうがピンチの時に覚醒っていう主人公っぽい事したから猶更」

「マジかよ……」

「それそんな重要!?」


 達也と朱莉の重視するポイントがおかしい会話に思わず叫ぶエルナ。


「達也、今からでも遅くないから主人公っぽい台詞言いなさい」

「え、今からっすか?」

「多分大丈夫、今からでもリカバリー効くから」

「え、えっと……、どうしよう?」

「お願い敵に集中して! 私が言うのも何か間違っている気がするけど!」

「いい加減にしろ貴様――――っ!」


 達也達のあまりにも敵をないがしろにした会話に怒り狂う戦士。戦士は達也に向かって一直線に突っ込み、真っ直ぐ拳をぶつけてくる。しかし達也は、持っていたピアニカを咄嗟に盾にすることで何とか防御した。

 防御しながら達也は叫ぶ。


「なあちょっとだけタイムくれ、今いい感じの台詞思いついたからさ!」

「断固拒否する」

「そこを何とか頼むよ。今なら浄水器と食器乾燥機もつけて税込、手数料込みで39800円にしとくから」

「何かテレビショッピングになってない?」

「お得ね」

「いやお得とか言ってる場合じゃありません」

「浄水器も食器乾燥機もいらぬ、我が望むは貴様の命だ!」

「やべえ、何かかっこいいかも!」

「浄水器と食器乾燥機のせいで台無しだよ!」


 それでも達也は何とかピアニカを振るい、戦士を弾き飛ばすことで何とか距離を取った。

 その隙に達也はさっき思いついたいい感じの台詞を言う。


「いかにお前達が力を高めようとも正義の刃は悪を貫く! どうすか所長、いい感じでしょ?」


 今の自分の台詞はなかなか良かったはず、そんな思いをこめて達也は朱莉を見る。


「もうリカバリーは無理、あと句読点なしで早口なのもダメね。それとセンスが古い」

「容赦ねえ!」

「センスはともかく後は妥当な評価だよ!」


 そんな会話をしていようとも戦士は容赦なく達也に攻撃を仕掛ける。その攻撃を達也は必死に避けつつ、ある事に気づいた。


「おいお前、名前名乗れよ!」


 そう、合体した戦士は名前を名乗っていなかったのだ。


「何!?」


 そして、あまりにも突然すぎる名乗りの要求に思わず驚く戦士。その反応を見て、朱莉も言葉の追撃を加える。


「そうよ、あたし達アンタの事なんて呼べばいいのよ! 合体して現れた戦士だからがっちゃんって呼んでもいいのかしら!?」

「す、凄く似合わないうえに安直……」

「ぬぅ……」


 突然な上に今一つ目的が見えない相手の名乗り要求に困った様な声を出す戦士、そして数秒程考えた後戦士は達也達にこう告げた。


「合体した我らは一時的な存在、故に名などない。どうしても呼称が必要なら無銘とでも呼べばいい」

「やべえ、ちょっとかっこいいかも。俺も今度名乗る機会あったらそう答えようかな。無銘って何か女ウケ良さそうだし」

「名無しって名乗ってるよそれ!」

「しかもそんなのかっこいいって思う女少ないわよ、多分」


 自身のセンスが女性陣に酷評されちょっと凹む達也。その隙をついて無銘は達也にエネルギー弾を撃つ。


「無駄無駄! そんななまっちょろい攻撃が俺に通じるかよ!」

「そういう事言ってるから悪役っぽくなるんじゃ……」


 その光弾を達也は当たり前の様に弾き返し、不敵な表情を見せる。


「ならばこれはどうだ?」


 その言葉と共に今度はエネルギー弾を数十発単位で連発する。


「グミ撃ちかよ……」


 そう言いながら達也は持っているピアニカを必死に振るい、無銘が打ち出した光弾を跳ね返し続ける。


「ぬおおおおお、スパーキ○グシリーズでよくやった光弾跳ね返し!」

「何でアンタはいちいちネタがちょっと古いのよ」


 そんな朱莉のツッコミを背に受けながら達也は必死に跳ね返す。そして全ての弾を跳ね返したと同時に


「跳ね返せるからといって油断したな鈴木達也!」

「しまった、今までの攻撃は罠か!」


 いつの間にか近づいてきた無銘の突撃を喰らい、達也はノーバウンドで吹き飛ばされコンビニの自動ドアに突っ込みドアを突き破って中に叩きこまれた。


「達也大丈夫なの!?」

「というかよく今までコンビニに被害いかなかったわね……」


 それを見て心配する様子を見せるエルナと、コンビニへの被害を気にする朱莉。そしてそんなエルナを見て朱莉は思ったことをはっきり言う。


「アンタ、ヨハンヨハン言ってた3期の十代みたいになってるけど大丈夫?」

「いきなり何の話ですか!?」


 一方、コンビニに叩きこまれた達也は多少の傷を負いつつも平然と立ち上がる。


「痛えなあ、もう」


 達也は体をパンパンと叩き埃を落とす。そしてそんな達也を見ていたコンビニの店員は平然とこう告げた。


「お客さん、ガラス代の弁償を要求します」

「平然と立ち上がってる俺が言う事じゃないけど、心配しろよお前」


 達也の正論を店員はフン、と鼻で笑い当然のような顔で答える。


「この町でそんな正論が通じるとでも? それとも腐抜けているのですか?」

「通じると思ってねえし腐抜けてもねえけど、お前が勤めてんのは一応客商売だろうが」

「そういった過剰なサービス要求が、過労死を生み出す元凶だと貴方は考えないのですか!」

「過剰なサービスじゃねえだろこれ」


 その言葉の後、達也はハンカチをポケットから出しそこに唾を吐く。その唾は赤く、達也は自分が口の中を切っていることを理解するがそれを気にせず無銘の方へ向く。

 そして店員にこう告げた。


「それとな。俺をここにぶち込んでコンビニに被害を出したのは、あの中途半端な配色の覆面野郎だ。弁償ならそっちに言ってくれ」

「かしこまりもっこり」

「こいつ殺してえ……」


 達也は店員に一瞬だけ本気の殺意を覚えたが何とか堪え、無銘の元へ走り出した。

 そして達也は叫びながら無銘の元へ突貫する。


「やってくれたなこの野郎!」

「タフな男だな鈴木達也!」


 達也がピアニカを振るうも、無銘は左腕でそれを受け止める。そして無銘は空いている右手で達也に殴りかかった。


「甘えよ!」


 しかし達也はピアニカから咄嗟に手を放し、屈むことで無銘の攻撃を回避する。

 そして屈んだ状態で拳を構え、無銘にアッパーを叩きこんだ。


「貴様ぁ!」


 無銘は達也の攻撃で空へ飛ばされるも、空中で体を捻じる事で回転し倒れる事もなく無事に着地する。

 それを見た達也は一言。


「予想通り、ましな勝負が出来ているな」

「貴様……」

「だがこれ以上勝負を長引かせるのは無しだ。遊んでいるのも悪くは無いが、エルナにこれ以上心配かけるのもアレだし、何より弁償するのはお前だとはいえ、コンビニにこれ以上被害を与えるとこの店来れなくなりそうだし」

「まるですぐにでも倒せるかのような言い分だな」


 その無銘の言葉に達也は不敵な笑みを浮かべながらこう返す。


「倒せるさ。――缶ジュースサモンナイト!」


 そして達也は不敵な笑みを浮かべたまま、また右手を地面に叩きつける。そしてそれを見ていた無銘はある事に気づいた。


「缶ジュースサモンナイトだと……!? はっ、まさかあのピアニカがいつの間にかその手に持っていたのもそれがあっての事か……!?」

「今頃気付いたのか、間抜けな合体戦士」


 そして気づいた無銘に対して達也が行った事は嘲笑、どうして気づかなかったんだという意思を篭めた侮蔑。だがそれに憤る事は無銘にはできない、何故なら達也の言うとおりだから。

 一方、そのやりとりを見ていたエルナは朱莉に尋ねる。


「あの、缶ジュースサモンナイトって何ですか?」

「あ、それ聞いちゃう? ひょっとしてあたしのポジション解説役にしようとしてる?」

「そんな事ありませんよ」

「冗談よ。そんなことあたし思って無いから。でも簡単な説明しかあたし出来ないわよ」

「それで構いませんよ」


 エルナはそう言って朱莉に話を促し、朱莉はそれを受けて話し始める。


「缶ジュースサモンナイトはその名の通り、って言っていいのかはちょっと分かんないけど召喚術。実在さえしていれば何でも呼び出せる技よ。それが例えこの世界の物で無かったとしてもね」

「……チート能力ですね」

「あ、能力じゃなくて技術よこれ。だからエルナ、アンタでも覚えようと思えば覚えられるわよ」

「へえ、そうなんですか」


 じゃあ覚えてみようかな、エルナそう呟いたが次の朱莉の発言で翻す事になる。


「でもこれ自在に使いこなすの凄い大変よ。最低でも1300回以上使用しないと狙った物呼び出せないし、最初の頃なんか1回使うたびに1500円以上掛かるし」

「どんな召喚術なのか全くイメージ出来ない上に地味にお金掛かる……。しかもそれで狙った物出せないなんて……」

「だからあの技習得してるのこの町でも数人単位よ」

「それでも数人は使いこなしている人要るんですね」

「まあ、便利と言えば便利だし。でこれ覚えたい?」

「やめておきます」

「賢明ね」


 エルナの決断を朱莉は認めて、二人は達也と無銘の戦いを見る事に意識を戻す。

 そして達也は缶ジュースサモンナイトで二つの物を呼び出した。

 一つは箒。学校の掃除時間で使うであろうあの箒だ。そしてもう一つは――


「小さいスペースシャトルの模型……?」


 達也の呼び出したものを見た無銘は思わずそんな言葉を漏らす。手に持てるほどのスペースシャトルの模型、そんなものをどうして呼び出したのか彼には理解できない。

 そして次の瞬間、達也はまたも理解のできない行動をとる。


「合体!」


 達也はそう叫び、箒の柄の先をスペースシャトルの模型の尻に突き刺す。そして箒を構え、突き刺したスペースシャトルの方を無銘に突き付け、達也は一言。


「完成、スピア・ザ・スペースシャトル!」

「語呂悪っ!」


 達也の言葉と共にエルナのツッコミも響いたが、それは無視された。そして、無銘は達也が手に持つ武器を見て思わず尋ねる。


「何だ、それは……?」

「フッ、スピア・ザ・スペースシャトルを知らないのか? まあ俺も知らないけどな」

「じゃあそれ結局何なの!?」


 達也の言葉にエルナはツッコみ、無銘は唖然とする。そして達也は無銘の隙を突き、止めを刺しにかかる。


「必殺、シャトル・ザ・レインボー!」


 その言葉と共に達也はスピア・ザ・スペースシャトルを振るい、無銘に攻撃する。振るわれたスピア・ザ・スペースシャトルは、箒の柄の部分が無銘の顎に激突し、無銘を気絶させた。


「スペースシャトル関係なかった!」


 そして達也の攻撃で無銘が気絶したと同時に、無銘が元の尻フェチレッド、ロリコンレッド、熟女フェチグリーンの3人に戻った。

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