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第1話 愛のままにわがままに少年は巨乳美少女を愛したい

 ここは日本のとある町貌巣町(けいおすちょう)、人工数万人程度のごく普通の街である。

 これと言った名産は無いが、この町には1つ大きな特徴がある。それは、他では見ることが難しい、もしくは出来ない不可思議現象や異常存在が集いやすいのだ。そのせいかこの町には他の町と比べて奇人変人が集いやすい。その事を忌み嫌い出ていく貌巣町出身者も居れば、逆にそれを望んでやってくる移住者も居るが町は概ね問題なく回っている。

 そして今日はゴールデンウィーク初日。変人が多くてもこの部分は世間一般の例に漏れないのか、この町にもゴールデンウィークを喜ぶ高校2年生の男子が居た、名前は鈴木達也。

 達也はこう考えていた。

 今日はせっかくの休み、バイトも今日は入れてないし古本屋にでも行って何か漫画でもまとめ買いするか、そしてその後は家でゆっくり読書するぞ。

 そんな風に脳内で今日の予定を立てながら、家のドアを開けた所で


「うおおおおおおおおおおおおお!」


 ドアの鍵も閉めず走り出した。だがこれはこの鈴木達也の習慣という訳では無い。いや、正確に言えばこのレベルの奇行は割とよくある人間なのだが今回に限って言えば違う。何故彼がこんな事をしたか、その答えは達也の目線の先にある。

 達也の目線は前ではなく少々上に向いていた、そしてその先にあるものとは。


「親方、空から女の子が!」


 空から落ちてくる何かだった。しかし、少女かどうか、更に言うなら生物かどうかは達也から見ても分からない。当然だ、空から何か落ちてくることが分かっても、それが正確に何なのかを理解できる人間はいないだろう。

 しかし達也は女の子だと確信していた。その理由は達也が今叫んでいる。


「空から降ってくるものと言えば、植木鉢か野球ボールか女の子って相場が決まっている! そして形状は植木鉢でも野球ボールでもねえ! ならば答えは一つ女の子、可能性を一つ一つ潰して最後に残ったものがどんなにありえなくても真実ってホームズでも言ってたしな! つまりあれが美少女であるのは確定事項! 全くいつの時代のアニメだよ空から女の子なんてよ、テンション上がってまるでキャンプファイヤーみたいに燃えてくるぜ!」


 物語が始まって3つ目の台詞とは思えないレベルでツッコミ所満載の長台詞を、走りながら叫ぶ達也。その後もそれと同じレベルの妄言を吐きながら走る事2分、達也は何かの落下点に辿り着く。


「ゴホッ、オゲッ、ウゲホオッ!」


 物凄いレベルでむせながらだが。まあ2分も走りながら叫んでいれば当たり前である。しかし達也は根性で耐えて、落ちてくる何かを受け止めた。

 それは信じられない事に達也の妄言通りの美少女だった。年は達也と同じくらい、白いワンピースが良く似合い、透き通るような銀色の長い髪を持ち、誰もが見れば思わず見返すと言っても良いほどの美貌だ。そして全体的に細身でありながら付くべき所にはしっかり肉が付いていた。

 達也は少女を見て思わず呟く。


「え、何このパーフェクトな美少女。どこぞのヒロインか何か? じゃあ俺が主人公かヒャッホウ! さようなら平凡かどうかちょっと判断が難しい日常、こんにちはラノベ的な非日常!俺は昔よく居たやれやれ系主人公みたいなこと言わねえからな!」


 そんな事を言った後達也は気づいた。


「ヤバイ、この子が可愛すぎて今まで気づかなかったけど腕超激痛走ってる。リニアモーターカーも真っ青なレベルで走ってる」


 しかしそれほどの衝撃が会ったにも拘らず、少女には傷一つ付いていない。


「うん、これはあれだな。空から降ってくる女の子には傷がつかないというお約束に違いない。流石お約束、流石ター○Aのお兄さん! どうせなら俺の腕のダメージも0にしてくれればいいのに!」


 原理不明の現象をそんな戯言で流しながら、達也はこれからの事を考える。そしてさっきまでは空から降ってくるヒロインという非現実に酔っていたが、冷静に考えるとこれヤバくないかという事に気づいた。何せ達也は叫びながらここまで走ってきたのだ。それを目撃している人も当然いるだろう。達也自身はともかく問題はさっき受け止めたこの少女だ。達也は当然の如く面識など一切ない。そしてそれは達也を知るこの町の他の住人も同じだ。さて、見知らぬ少女を抱えた知っている人間を見て普通は何を思うだろうか。


「つ、通報される!?」


 ヤバイ、マジでヤバイ。さっきからヤバイしか使えない程語彙力落ちてる位ヤバイ。でもこの娘見捨てられない。そう思った達也はとりあえず少女を抱えてこの場を去ろうとした所で


「辿り着いたぞ!」


 という叫びを耳にした。

 なんだなんだ、と達也が思っている間に叫んだ本人とその叫びを聞きつけた10人くらいの集団がやってくる。そして、茫然とした達也と気絶している少女を取り囲んだ。

 その集団は異様だった。何故ならば全員の姿形が一致しているからだ。その集団は、中肉中背の黒いスーツを着た男達だ。これだけならば葬式に行く途中のサラリーマンとでも言えるかもしれない。しかし彼らはサングラスをしていた。

 そして達也はこう考えた。黒のスーツにサングラスを掛けている奴は全員悪党だ、と。明らかに偏見である。


「おい貴様、その女をこっちに渡せ」


 そんな達也の内心も知らず、集団の一人の男が話しかけてきた。それは一般人ならば気圧されてしまうような威圧感を見せる話しかけ方だった。しかし達也は一般的とはとても言えない存在だ、なので気圧される事もなくこう返答した。


「なんだお前ら、奴隷商人か何かか」

「開口一番に無礼だな貴様!」


 達也のあまりにも失礼な発言に思わず怒る男。まあ初対面の人間に人買い扱いされれば当たり前と言えば当たり前だが。

 そんな状態を見かねて集団の別の男が口を出す。


「我らは奴隷商人ではない、だがしかし我らにはその女が必要なのだ」

「必要って何にだよ?」

「それは言えぬ、言えば機密漏洩をした事になり死ぬぞ。我らと貴様が」

「お前らも死ぬの!?」


 男の発言に思わずツッコミを入れる達也。スパイか何かじゃない限り、機密を漏らしてクビになる事があっても死ぬことは無いだろう。よってこいつらはまともじゃない、以上QED。

 そういう事にした達也は少女を一旦地面に置き、立ち上がってこう言った。


「悪いがお前らにこいつは渡せねえな。機密漏洩で殺されるとかどう考えてもまともじゃなさそうだし」


 その言葉に集団は嗤う。まるでそれを待っていたかのように。

 集団はなんの躊躇もなく暴力を行使しようと懐から銃を出し、達也に突きつける。


「おお怖い怖い、年頃の高校生に銃なんて突きつけるなよ。PTSDになったらどうするつもりだ? 通院代と慰謝料きっちり払ってくれるんだろうな?」

「ふん、強がりもそこまで来ると大したものだ。だがこれは脅しじゃない。5秒だけ待ってやる、その女から離れろ」

「5秒もいらねえよ、これからてめえらをぶちのめすのに1秒もかからねえからな」


 銃を突き付けられた状態で受けた脅迫にも屈せず達也は余裕を崩さない。その余裕に多少戸惑う様子を見せつつ銃を突きつける集団を尻目に、達也はポケットに手を突っ込み何かを出す。出したそれは麺だった。茹でていない麺の一本だった。


「……何だそれは?」

「素麺、お前らが負ける武器さ」

「ふざけた事を!」


 達也の挑発としか取れない発言に怒りを覚え、引き金を躊躇なく引こうとする男達。しかし、達也は男たちがトリガーを引くその一瞬に持っている素麺を振る。


「|切れ味が鋭いだけの素麺ソーメニックスラッシャー!!」


 その言葉と共に振るわれた素麺は男たちが持っていた銃をバラバラにし、持ち主である男たちも地に伏せる事になった。


「ま、ざっとこんなもんだ」

「な、何で……、素麺でこんな事が……出来るんだ……?」


 倒れ伏していた男のうちの一人が、息も絶え絶えながら達也に当然の疑問をぶつける。しかし達也は一瞥もすることなく


「この素麺は、魂が籠っているからな」


 とだけ告げて少女の方を見る。その後ろでどういう事だよ、という声も聞こえたが達也は無視する。


「とりあえず、家に連れ込むのもアレだから、バイト先にでも連れいていくか。――お姫様抱っこじゃ流石に不味いだろうからおんぶ安定だな」


 そう言って達也は少女を背負う。すると表情が気持ちの悪い笑顔に変わる。理由は簡単だ。


「すげえ、おっぱい滅茶当たってるよ。かなりメガ盛りだよこれ! だ、駄目だ……、笑うな、堪えるんだ……」


 必死に喜びの笑みをかみ殺そうとしているが、その所為で余計に表情が気持ち悪くなる達也。その状態で達也は言い訳めいた独白をする。


「とりあえず早く運ぼう。でもその前に一旦家に帰って鍵閉めなくちゃ。いや多分親が閉めてくれるとは思うけど、でも万一の事あったら困るしな。戸締りは大事だからなうん。後あんまり振動を与えないように歩かないと、気絶してるしこの子。このおっぱいの感触を一秒でも長く味わいたいとかそういうアレじゃないからな、本当だからな! だから警察だけは勘弁して!!」


 誰に言い訳しているのか、どう考えても本心じゃない言葉を喋りながら、達也は自分の家に歩きで移動し始めた。



 ◆



 その後、たっぷり10分掛けて達也は家まで行き自宅の玄関の扉の鍵を閉め、また10分程掛けてバイト先まで歩いて行った。その際、達也は後ろに背負っている少女を通行人に見られたのだが、何の因果か通報されることもなく目的地まで到着してしまった。


「いやしてしまったって何だよ。俺のここから始まるヒーローサーガにどんだけケチ付ける気だ」


 さらりと世界観を破壊しつつ、達也はバイト先が入っているテナントのビルを見る。

 達也のバイト先の店は探偵という名の何でも屋で4階建てビルの3階にあり、仕事の主な内容は探し物から霊のお祓いなど多種多様。その店の名前はXYZ、どう考えてもシ○ィーハンターに憧れて作っただろというツッコミが入ったが、しばらくするとなんやかんやで仕事はちゃんとする店として話題になり、今ではそこそこ繁盛している。


「所長すんませーん、入りますよー?」


 ビルの階段を上りその店に到着した達也は、ノックをしつつ店の中に入る。その店の内装は来客用のソファーが2つ向かい合わせで置いてあり、その間には長テーブル、そして奥には事務用デスクが置いてある。


「ノックの返事位待ちなさいよ」


 達也が部屋に入ったと同時に中に居る所長と呼ばれた人物が返事をする。その姿は黒髪のポニーテールにスレンダーなボディ。そしてピッチリとしたスーツを着こなしている事から、まるでやり手のキャリアウーマンの様にも見える。ただし、その手に缶ビールと漫画雑誌を持っていなければの話だが。


「相変わらずおっさん臭いすね」

「誰がおっさんよ誰が。どっからどう見てもクールでビューティーで出来る女そのものでしょ」

「クールビューティーで出来る女は自分の事をそんな風には称さないっすから。そんなんじゃ結婚出来ないっすよ?」

「結婚なんて面倒くさいしー、いざとなったらアンタがあたしを嫁に貰いなさいよ」

「嫌っすよ十歳も年上の女嫁にするなんて」

「姉さん女房はゴールドで出来たわらじを履いてでも探せっていうでしょ。それに女の子にそんなこと言うと両足に縄を付けて双方に引っ張られちゃうんだぞ」

「怖っ! 可愛らしい口調で三国志の童卓が好んだ処刑法言われると怖っ!」


 そんな会話をしていると所長は、達也が実はずっと背負っていた少女の存在にやっと気づく。


「どうしたのその子?」

「いや何か空から落ちてきたんで受け止めました」

「ラ○ュタでも行くの?」

「いや飛○石持ってなかったんでル○ータ王女じゃなさそうっす」


 そう言いながら達也は少女を来客用のソファーに寝かせる。

 その少女をまじまじと見ていた所長は思わずこんなことを言った。


「何このパーフェクト美少女、白いワンピースなんか着て清楚系でも気取ってるの?」

「いや系じゃないでしょ、多分清楚すよ」

「今日出会ったばっかで話したこともない女に期待しすぎよアンタ。空から降ってこようが有性生殖である以上絶対非処女よ。やめときなさいって、アンタみたいな変態じゃ釣り合わないから」

「今日出会ったばっかで話したこともない子と、ずっと前からバイトしている男に容赦なさすぎませんかね!?」

「何言ってんのよ、甘さと優しさは違うのよ。時にはネットが炎上するレベルできついこと言って打ちのめすのも優しさの一種よ」

「そんな優しさは嫌っす」


 そんな二人の会話が作用したのかどうかは不明だが、今まで眠っていた少女はついに目を開ける。

 目覚めた少女は体を起こして首を振り左右を見る。すると達也と所長の姿を見つけたので少女は話しかけた。


「あの、ここは……?」

「あら気が付いたのね、ここは探偵事務所XYZ」

「……後の無さそうな名前ですね」

「そして私は所長の神澤朱莉、そこに居るのはバイトの鈴木達也よ」

「鈴木達也だ。気軽に達也って呼んでくれると嬉しい」

「分かりました神澤さん、達也!」

「我が生涯に一片の悔いなし……!」


 少女の素直さに達也が天に帰ろうとしているが、そんな事は気にせず朱莉は少女と話を続ける。


「いくつか質問があるわ非処女(推定)ちゃん」

「何ですかその呼び方」

「まずは貴方の名前、それとこの職歴にある空白期間に何をしていたか教えてもらえるかしら?」

「履歴書なんて持ってませんよ私!?」

「まあ一部冗談よ、でも質問には答えて」

「えっと、名前はエルナ・クンストです」

「じゃあエルナ、あなたは一体どうして空から落ちてきたのかしら?」


 朱莉の質問にエルナは一瞬だけ躊躇ったが、朱莉の目を見てちゃんと答えた。


「私、悪の組織から逃げてきたんです!」

「凄い展開になってきたわね……。――というか達也はいつまで天に帰ってるのよ」


 そこで朱莉は未だ天に帰ったままの達也の後ろに立ち、腕を達也の腰に回す。そしてそのまま達也を持ち上げ、自ら後方に倒れこむかのように反り返り達也を床に叩きつけた。

 見事なバックドロップである。


「何するんすかいきなり! 俺じゃなかったら大怪我っすよ!」


 そして問答無用で攻撃を受けた達也は朱莉に抗議する。しかり朱莉はそんな抗議などどこ吹く風だと言わんばかりの態度でこう宣言した。


「安心しなさい、あたしは問題になら無さそうな相手にしか暴力を振るわない主義よ」

「最低の主義だ! ――別にいいけど」

「いいんだ……」


 いきなり探偵事務所の所長がバイトに向かってバックドロップを決めたあげく、それを喰らった当人が平然と受け入れるという状況を見て、エルナは逃げ出してきた場所を思い出し自分はここに居て大丈夫なのかという疑問をようやく抱く。

 しかし、話はそんなエルナの思いなど無視して先に進んでいく。


「しかし悪の組織ねえ……。本当は孤児院だったりしない?」

「その二つ間違えないと思うんすよ俺」

「ま、間違いありません! 隣の部屋でたまに悲鳴が響いてました!」

「多分歯の治療をしてたのよ」

「歯の治療!? ……いえそれだけじゃありません! その悲鳴あげた子に次の日会ったら納豆になってました!」

「多分歯の治療よ」

「何の治療にもなってませんけど!?」


 なぜか頑なに歯の治療にしたがる朱莉にツッコミを入れ続けるエルナ。そんな様子を見て達也は朱莉の思惑に気づいた。


「面倒臭いんすか、所長」

「まあ、無償で悪の組織と戦いたくはないわね。あたしは特撮ヒーローじゃないの、普通の探偵なの。そこのバイトが仕事外でヒーローやるのは勝手だけど、あたしは興味ないわ」


 朱莉の無情ではあるものの正当な主張に思わず言葉が出ないエルナ。そこに朱莉はさらなる追撃をしかける。


「それにエルナ、アンタさっきから組織の脅威は伝えてるけどアンタ自身の事名前以外何も聞いてないんだけど」

「そういえばそうだな、せめて3サイズくらい――」


 達也のその言葉と同時に朱莉は後ろに回り、またバックドロップを決めて黙らせる。そして朱莉はエルナを睨む。


「で、どうするの? 3サイズはともかく年齢とか住所位は言ってもバチは当たらないわよ多分」

「あ、あの私……」


 そこでエルナは口ごもる。しかし、その程度で朱莉は睨むのをやめずエルナを睨み続ける。そして


「組織に捕まる前の記憶が、無いんです……。一般常識とはありますけど……」


 衝撃の事実を口にした。


「「マージーでー、マジーでー?」」


 そして朱莉といつの間にか起きてた達也は、S○Cのマ○ー2のCMみたいなノリでマジでを繰り返していた。



 ◆



 その後所長とバイト二人は30秒程マジでと言っていたが、流石に冷静になり真面目に話を進める事にした。


「しかし記憶喪失か……。何というか、不思議な気分になるな。こう、いけない事を教えたいというか」

「そういう衝撃の設定を序盤でバンバン出さないで欲しいんだけど、こっち消化しきれないじゃない」

「私に言われましても……」


 訂正、冷静だったが真面目に話は進めていなかった。しかし唐突に朱莉は宣言する。


「まあいいわ、その組織が壊滅する位まではこの事務所を隠れ家に使わせてあげる」

「いいんですか? さっきまで私の事あんなに疑ってましたのに」


 そこで朱莉はエルナを見てこう言った。


「いや、あたしマジでマジで言いながら気づいたのよ。アンタが嘘ついてようと傷つくのあの馬鹿だけだって事に」

「思った以上に自己中心的な理由!」

「それにアンタにかまけて達也にバイトサボられると面倒だし」

「何かそう聞くと、神澤さんが達也の事好きみたいですね」

「それは無いわ。……それは、ないのよ」


 軽い冗談のつもりだったのだが、思った以上に本気のトーンで返事され微妙な顔になるエルナ。そこに達也が話に入ってくる。


「そうだぜエルナ、所長が俺の事好きなんてありえないさ。所長は金持ちにしか興味ないからな」

「そうね、アラブの石油王あたりが私という究極の美に全財産はたいてくれると嬉しいわね」

「凄いこの人……、自分の事究極の美って言った……」

「慣れろ、俺は慣れた」

「一応言っておくけど、本気で言ってないわよ」

「ですよね」

「まあそれはそれとして」


 そこで朱莉はエルナに指を指して、唐突にこう質問する。


「ここまで話してなんだけど、アンタ私達を信用できる?」

「」

「所長、いきなり何てこと言うんすか!? エルナが俺達を疑う理由なんてないでしょう!?」


 何も答えないエルナに変わって反論する達也。

 それを聞いた朱莉は達也の頭に右腕を回し


「アンタが何の説明も無しに連れてくるから、エルナに対してアタシが気を回すはめになってるのよ!!」


 そのままヘッドロックを決めた。


「普通に考えたらエルナから見て信用する要素無いでしょアタシ達!!」

「ぎゃあああああああ! すいませんっす所長―――――――――!!」

「アタシに謝ってどうすんのよ、エルナに謝りなさいエルナに」

「ごめんエルナ。でも大丈夫、俺達大丈夫だから! だから信じて!!」


 達也の言葉を聞いてエルナは朱莉にありのままの思いをぶつけた。


「すみません、正直胡散臭いです」

「でしょうね」

「なぜだ!?」

「坊やだからよ」

「いや、坊やは関係ありませんけど」


 そこで朱莉は達也をヘッドロックから解放し、エルナに向きなおる。


「まあ思うところはあるでしょうけど、とりあえずはここに居なさい。1人でいるよりは安全よ。いざとなったら肉盾くらいに思いなさい、達也を」

「俺だけ!?」


 朱莉のその言葉にエルナは少し考えて


「あ、ありがとうございます」


 不安は残るもののとりあえず、ここに居ることにした。

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