拓斗拓斗vsオッサン
『設定は簡単!
パーツを選び、簡単口調設定で
ツンデレキャラもメイドさんも思いのまま☆
あっというまに自分だけの「ぱーそなるがーるず」ができあがります☆』
・・・なんだこれ。
秋庭拓斗はそうデカデカと書かれた
ピンク色の箱を持っていた。
印刷されたメイドやらウサ耳やらが拓斗に笑いかけている。
良く言えば社会不適合者、
悪く言えば引き籠りの拓斗。
本来なら今頃教室で友達と談笑しているか、
全く意味の分からない英単語をノートに板書している頃だろう。
しかし社会不適合者の拓斗はその小さな社会に溶け込めず
こうしてオタクの聖地秋葉原で毎日そういった店に通っているのである。
話を戻そう。
拓斗が今手に取っている『ぱーそなるがーるず』なるパソコンソフトは
今巷で大人気のソフトである。
簡単に設定をし、ちょっと口調をいじるだけで
自分好みの女の子が出来るという訳だ。
動くのは勿論、
多少の受け答え等は朝飯前である。
――――在庫限り。
値札に貼られたシールがこのソフトを買おうか買うまいか迷っていた
拓斗の心をつついた。
思わず財布をポケットからひっぱり出す。
――――!!危ない危ない!!
明日は待望のギャルゲー発売日なんだ!
それを買ってから!買ってから買おう!
自分を制し、棚に箱を戻す。
これ以上ここにいると間違いなく誘惑に駆られるのでその場から離れた。
・・・また!また来よう!
すると。
2,3メートル程むこうにいるオッサンが動いた!
狙いは明らかに『ぱーそなるがーるず』!
・・・負けてたまるかぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!
相手は50代のオッサン!!
オレの相手ではあるまい。
平静を装い、もう一度その棚に近づく。
本当は走りたいところだが追いつかれはしないだろう。
その時、オッサンの脂ぎった顔が視界をかすめた。
何ッ!?
早い!!!
オッサンはドタドタと『ぱーそなるがーるず』に近寄っていく。
その動作で、拓斗の抗争心はメラメラと燃え上がった。
偽物の大理石の床を蹴り、軽やかに飛び上がる。
獲物を見つけたヒョウの動きでオッサンの股間を蹴りあげた。
「っはうっ!!!!!!」
――――しまった!
股間を押さえばたりと倒れたオッサンに拓斗は近寄る。
「す、すいません・・・大丈夫すか?」
オッサンは潤んだ小さな瞳で拓斗を見上げた。
にきびの痕だらけの顔がしっかと拓斗を見据える。
「・・・?」
なんとオッサンはふらふらと立ちあがった。
内股でぴょんぴょんと跳びはねながら『ぱーそなるがーるず』に手を伸ばす。
「!させるかっ!」
あまりのしつこさにうろたえていた拓斗は我に返り
オッサンのもとに走った。
ピンク色の箱を愛おしそうに撫でるオッサン。
もうだめだ―――と心の隅が弱音を吐いたが
そんな事で諦める拓斗ではない。
すりすりと箱を愛でながら立ち去ろうとするオッサンを怒鳴りつける。
「おいっ!!オッサン!!」
「・・・?何だね・・・」
続きます




