プロローグ
「ハアハアハアハア」
俺は息を切らせながら全力で逃げている。
HP〈ヒットポイント〉を回復させるアイテムであるポーションは十分にある。持てるだけ持った。
だけど回復なんて意味が無い。必要性皆無だ。こいつの一撃は今現在レベル2である俺の最大HP×15は軽く超えるだろう。
普通はありえないのだ。ありえるはずがない。
《レベル99のスライムが始まりの村から100mの距離もないところで出現するなんて。》
「この最強スライムだけで世界征服できるんじゃないか魔王!」
心の底からそう叫び、凄まじい速度で追いかけてくる青い物体から、必死の思いで逃げ回る。
その青い物体が木にぶつかるたびに鈍い音をたてながら、ドスンっと木が倒れていく。
たまったもんじゃない!
「おい、何で追いかけてくるんだよ!俺、お前に特に何もしてないだろ。このクソスライム野郎。」
すると頭の先端部から白い煙をいきおいよく吹き出した途端、青い物体は赤い物体へと変貌した。
《クソスライム野郎》
この言葉がどうやらスライム様の逆鱗に触れたらしい。
「オレっちはクソスライムなんかじゃな〜い!」
「はあ、喋った!?」
その魔物とは思えない可愛いらしい声が聞こえた瞬間、目で確認できないほどの速さの体当たりは俺の腹部に命中した。
重い瞼を上げるとそこは始まりの村である《ルリード村》の小さい宿屋のベッドの上だった。
「はぁ〜。ゲートインしてからすぐに残り蘇生回数2になっちまった〜。幸先悪いなーこれは。」
5の扉の中の世界[ミランストガリア]は剣士や武道家、魔道士など100を超える職業の中から自分の職業を選び、自分のレベルを上げていき、最終的には魔王を倒せばクリアだ。
しかし普通のRPGとは違い、魔王は絶対4人以下では勝てないという。
最前線で冒険を進めている、ゲートの中の世界をクリアするためだけに政府から派遣された通称ゲート騎士たちが中ボスに15人で挑んだが11人宿屋送りにされ、1人はゲームオーバーになり現実世界へ強制退場させられたらしい。
それほどボス級は強力なのだ。
始まりの村の周辺で宿屋送りさせられてる俺はゲートクリアに貢献できるかどうかの心配ではなく、強制退場の方を心配せざるを得なくなった。
ただそれはあのチートスライムのせいなのだが…。
いまだに比較的温和な性格のはずのスライムが襲ってきた理由が分からない。
それに何故レベル99だったのか、気がかりである。
「しかしあのスライム喋ったよな?」
1番気になることを口に出し、記憶の中を探ってみたがこのアインストガリアで喋るスライムがいるだなんて聞いたこともない。
「あっもう時間か…。」
と急いで荷物をまとめて、代金を払い宿屋を出た。
朝日が眩しい。近くで鳥たちが鳴いている。
思わず俺は現実世界のことを思い出した。
─2020年6月10日、地球上の国々の首都に14個の扉が突如現れた。各々の扉には1~14までの数字が大きく赤い字で書かれている。またどこの国も形状は等しく14個の白い扉が半径100mの円をつくっていて、その円の中心にはこれも赤い文字で《全ての扉を制覇せよ。》とだけ書かれている。
そしてどうやらゲートは繋がっているらしく、日本のゲートから入ってもアメリカのゲートから入っても全く変わらないらしい。
最初はゲートインすることにリスクがあるかもしれないと考えた日本政府は約1000人のゲート騎士を派遣させた。するとおよそ10分後ゲートから人が出てきた。その人は中で2日程度過ごしたが、その間にに4回死んでしまって、世界から退場させられたという。
その後何日かたってから、その人はもう1回同じゲートに入ろうとしたが、入れなかった。
扉が出現してから一ヶ月が経つ頃には、現実の世界とゲートの中の世界は行き来自由なこと、ゲートの中で過ごす時間=現実世界で過ごす時間×300ということと、4回死んだら2度とそのゲートの中には戻れなくなることが正式に判明された。
そらで死なないリアルな冒険ができるということで、
多くの人が利用するようになった。
1の扉の世界[ファイターキング]
この世界では武器は一切使用不可で自分の体だけで戦い、5年に1回行われる[キングオブファイター]というトーナメントで優勝者を決め、その優勝者が賞金をかけてファイターと勝負し、100人抜きすればクリアだ。
2021年の夏の初め頃、この世界をロシア人の男性がクリアし、2の扉が開いた。1の扉から中にいる人達が出てきた。またゲートの中で人々が稼いだ金は換金されて、持ち主のものとなった。
それを知った世界中の人達は歓喜し、ゲートブームが訪れた。その後2、3、の扉はそれぞれ半年もしないうちにクリアされ、2022年7月25日の昨日4の扉もついにクリアされた。
高校2年の夏休みで暇をしていた俺、朝田夜は5の扉は初期から入り込もうと、両親に許可を貰い、宮城からはるばる東京へ行き5の扉の世界[ミランストガリア]の攻略に参加したのだ。─
宿屋から出た俺は親友である相原爽真との待ち合わせ場所である、武器屋に向かって走った。
これから始まる俺の冒険に希望と期待を持ち。
─ 俺の新たな物語が動き出す ─