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テンプレ展開に嫌気がさした男のお話  作者: J.K.バカナンジャー
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今回の被害者は誰かってこんな小説を読まされる君だよ

読むのか……まぁいいけど。

 まずプロローグだけど、何の前触れもなく目の前に神様がいるパターンと、暴走トラックに轢かれるパターン、どっちが読みたい? どっちも嫌だって? わかるよ、僕だって嫌だね。でもここ、そういう小説投稿サイトだからさ、テンプレ通りにしないと、読者が読んでくれないんだ。みんな、ここで一回、中指立てておこう、わかるね?


 ならってことで、「トラックに乗った神様が居眠り運転で主人公を轢き殺した」ことにしよう。意味が分からないって、そう言われても、僕にだって意味が分からないよ。でもこうしなきゃ、神様が主人公に土下座で謝る描写が書けないじゃないか。この神様、トラックに乗ってなにしてたんだろうとか、神様でもはいれる保険ってあるのとか、ナンセンスな考えはよしてくれ、主人公が死ねばなんだっていいんだよ。これで異世界への片道切符が手に入ったんだ。ああそうだ、神様だけどね、実はもう、二度と、この小説には出てこないんだ、まぁ、画面にツバはいて落ち着いてくれ。


 そうだ忘れてた、主人公の名前ね、そんなの、無いよ、初めから、考えてすら。画数とか姓名判断とか、そういうのをなにも考慮してない、ただカッコイイだけの名前にすればいいんだけどね。あの、頭空っぽにして付けましたーっていう恥ずかしい名前ね、あれ、嫌いなんだよ、僕ってやつは。あ、でも、ハーレム要因の女の子の名前は考えておいたほうがいいかな、ちゃんと。名無しが嫌っていう読者は、主人公の名前のところに、自分の名前を入れて、自分がにゃんにゃんする姿でも想像しなよ。それでいいだろう? どうせ他の小説ではそうやって妄想してるんだろう? あのさ、スゲーむなしくないか? そっか、余計なお世話か。


 異世界の設定とか、テンプレ通り、つまり、君たちがもう読みまくって食傷気味な、剣と魔法のファンタジー、これでいこうと思うんだ。もう飽きた? もっと違う異世界を見たい? それは無理な話だ。仮に、異世界物を本気で書こうとするなら、たとえば、マクニールの「世界史」を題材にしたファンタジー二次創作を書かなくちゃならなくなる。名付けて「異世界史」。つまりだ、僕が言いたいのは、本気の異世界小説を書くって事は、世界を一つ作るのと同じなんだ、どうぞ君が書けばいいさ、僕は絶対にNOだね。そんなわけで、テンプレ異世界に主人公が向かうわけだ。チートとかいっぱい貰っちゃってね。僕ならプロローグで、神様と、異世界転移と、チートと、ハーレムって単語が出たら、もうそこでブラバするけど、君たちはヨダレ垂らしながらがっつくんだろう? 違う? そりゃ失礼。


 はじまり方は、赤ちゃんからでいいや、おぎゃあって泣いて、目を開けて父と母を見るんだ、母親は可愛くて、父親はイケメン、それで主人公はね、地面に叩きつけられるんだ。なぜって? 君ね、考えてもごらんよ、生まれたての赤ちゃんが、目を開けてこっちをじっと見てきたら、そりゃ、怖いよ、悪魔でしょ、ソレ。しかも泣かなかったら、もうそれ、井戸に捨てて、その赤ちゃんは無かった事にするか、協会に持っていくね。ざんねん、この物語はここでおしまいだ、両親に地面に叩きつけられて殺されるなんて、前世でどんな悪いことすればそんな結末になるんだろうね。


 え、だめ? 流石にもうちょい話を続けろって? 仕方ない、じゃあこうしよう、「生まれたばかりの赤ちゃんが目をギョロっと開けてこちらを見ている、その声は泣くのを止め、その眼には明らかな知性が宿っていた。この子はきっと……とんでもない天才児になるぞぉ!」、これでどうだ、いいだろ。最後とか、無理やり笑顔を作って、悪魔に見えるわが子を信じる、そんな姿が見えるね。この両親、ぜったいに今夜は泣いてると思うよ。主人公なんて最初からいなかったら、みんな幸せだったのにね。そもそも、本来生まれる筈だった人格って、どうなったのかな? 神様が主人公用の器を用意したとか、そういう気の利いた事前に伝える文章がなかったら、完全な人格の乗っ取りだね。考えてもみろ、こういう転生の仕方って、この小説投稿サイトじゃよく見かけるけど、じゃあ、聞くけど、神様の不注意で死んだ主人公が、異世界に行けるとして、主人公が異世界でする「大量虐殺」や、「遺伝子ばら撒き」って、神様的にセーフなの? 仮にだ、神様の管轄とは違う世界だからセーフって言うなら、異世界の神様からしたら、とんでもない爆弾を寄越されたようなものじゃないかな? 僕なら、主人公をけしかけた神様に対して、抗議なり、衝突なりしてしまうだろうね。だからこそ、考えればわかること、最初から主人公を行かせるべきじゃないんだ。異世界に。


 残念ながら、この主人公は来てしまった、異世界へようこそ、望まれない子よ。まずはおっぱいをたくさん吸っておっきくなろうね。まぁ、おっきくなるのは下半身なんだけどね、ほんと、気持ち悪い。実際におっきくならなくても、おっぱい見て赤ちゃんが喜ぶのはまぁいいさ、食事だからね。だが、主人公の場合は性欲でよろこんでいるフシがある。これってね、この主人公が喜んでるんじゃない、そういう描写を書いてる作者に、そういう幼児退行授乳プレイの趣味があるんだ。ロリコンじゃないと言いながら、ロリキャラばかり出したりロリキャラをメインヒロインにする小説と似てる。もう一度言おうか、きもちわるい。画面に中指立ててファックと言っておく。


 生まれた家は貴族にしておこう、なんでか知らないけど、このサイトで異世界物を書く時は貴族転生がウケるからね。いち作者として言わせてもらえれば、中世ヨーロッパ風の世界で、貴族社会の事を「その世界になぞらえた形で」真面目に書こうとしたら、僕なら難しすぎておしっこちびっちゃうね。


 それで、次男だから貴族にならなくて済む系の描写があったら、もうそれ貴族じゃなくていいだろと、おしっこびちゃびちゃパンツを、書いた作者に投げつけたい、僕はそう思う。設定グダグダ、描写めちゃくちゃ、それでも貴族設定ってだけである程度の読者は付くんだ、貴族に憧れでもあるのかな、みんな。ただ。そうだな、領地改造系を書きたいならわからなくもないんだ。しかし、これも作者目線で言わせてもらうと、本気でおしっこ、いや、うんこもらすレベルで書くのが難しい。そもそも、色んな分野の専門知識を狂いなく網羅しているその脳味噌、前世ではよほどの天才学者だったのでしょうね、主人公は。あ、これ皮肉ね。どうせあれだ、作者がネットでテキトーな単語を検索して、内容コピペして少し手を加えてるだけだから。わかるかい、今ね、僕は酷い目をしてこれを書いてるよ。


 主人公が農家で、歴史家で、農業の歴史を細かく知っているっていう設定なら、まぁ農業革命する小説を書けばいいよ。大概、戦争にまで出しゃばって、天才軍師みたいに活躍するんだけどね、だから感想で指摘されるんだ、そしてどうにか取り繕おうとして、結局また設定を指摘されるんだ。それを見て僕たちのような、観覧席でホットドック食って屁こいてるような視聴者は馬鹿笑いしてるんだよ。そこまで考えて、そうならないような真面目な内政物を書くなら、設定の下準備がたいへんなのは、わかるよね。下手にテキトーに書くと、お前はこの小説に親でも殺されたの? ってぐらいの勢いで噛みついてくるからね、そういうのを毒者っていうらしいんだ。飼い慣らせないから注意ね。感想で毒者を見つけたら、少し厳しめに反論しておけばいいよ、どうなるかは教えられないし、もし仮に、どうなっても、僕の責任じゃないから。


 くだんない話はもういいか、どこまでいったっけ、ああそうそう、主人公の貴族設定だ、もうこれは仕方ない、生んだ女が貴族の女だったから主人公も貴族なんだって、そう、これは決まっている事なんだ。同じく貴族の次男、これも運命で決まっている事なんだ。仮にもし長男設定で進めるなら、2歳から内政がんばる事になるからね、主人公はあれかな、2月29日に生まれたのかな? 4年に1回しか誕生日が来ないとかそういう設定なのかな? ほんと、参っちゃうね。


 主人公が2歳になったらやる事っていえば、そうだね、立ち上がる練習じゃなくて本を読むんだよね、すごく早熟なんだぜ、異世界の赤ちゃんって。魔法の練習もしなくちゃね、歩き回って本読んで流暢に回る舌で魔法を勉強する2歳児は、とても優秀なんだ。紙に日本語で文字を書いたりもしちゃうんだぜ、もうそのままいやらしい絵を見ながら自慰をし始めても僕は驚かないよ。


 異世界と言えばステータスとか最近流行ってるけど、これこそ僕の嫌いな言葉なんだ。小説を書きやすくする良いスパイスを見つけたみたいだけど、それがハバネロだって気づいてる人が皆無なのが、僕がそういった小説を馬鹿にする理由さ。無意味なステータスの羅列で文字数稼ぎをしているのが、このサイトのランキングを無意味なものにしている原因なのさ。2ちゃんねる形式の小説よりも嫌いだね。どちらも性質の悪さは似ているが、つまり、僕にはそれが頭に来ちゃうんだよ。


 ヒットポイント1万あろうが、現実的に考えれば、脳味噌破壊されれば死ぬ。数値には何の意味もない。レベルが上がって数値が上昇して喜べるゲームみたいに、考えが軽く見えるんだよね、そういうの。腹痛と下痢便で神様に祈っているときの僕は、少なくとも毎秒ダメージ100は食らっている感覚があるが、別に死ぬこたぁーない。僕が聞きたいのは、虫や草や微生物のステータスはどうなっているのかって事さ、これは意地悪な質問だけど、重要な問題なのはわかるだろう? ちなみに僕には分からない、だから僕には答えられない。主人公にはステータスが見えているという設定にしておくが、これはテンプレ的に付けておかなければならないだけで、僕の趣味じゃない。


 主人公が5歳になったら、いよいよ魔物の討伐に向かったり、剣術の稽古をしたりするらしい、テンプレ的にはそうなってるから僕もそういう流れで書くよ。最近じゃ、この段階でヒロインを1人ないし2人は囲っているのがデフォだから、手の速さに驚くね。その場合、奴隷か、幼馴染か、魔法か剣術の先生かでメインヒロインの枠が分かれたりもする。冗談のような話、ケモ耳奴隷少女、ロリ幼馴染、巨乳の魔法先生、スレンダー剣術先生、ついでにもう1人奴隷の美少女を囲っていたりする作品が本当にある。主人公がヤバイっていうより、こんなゴリ押しハーレムを書ける作者の脳味噌が凄い。漫画にしろ小説にしろ、登場人物の管理ってかなり大変なのにそれを苦にもしないハーレムローテーションを築き上げるのはある意味で才能と考えて間違いない。そういう作品の方が読者が熱中して読む傾向にあるっていうんだ、もう意味が分からない。


 ここらで主人公像を整理しよう。貴族の次男として生まれ現在5歳、チートを持っており魔法と剣術の勉強をしている、奴隷を2人所持しており幼馴染と仲が良い、ステータスが見えている。


 貴族としての爵位やら財政状況によって見方は変わるが、美少女奴隷を2人も所持している5歳児というだけで関わりたくない。両親はこんな性欲モンスターを育てなければならないのかと思うと僕は同情しちゃうね。


 待ちに待った学園編だよ。年数をかなり端折ったけど、テンプレ的に冒険者ギルドに登録したりなぜかハーレムが10人ぐらいに増えたりありえない金儲けをしたり、なんかそういう鼻で笑っちゃいそうな出来事がなにもなかった、という事に本当はしたいけど、テンプレ的には無かった事にできない、僕の脳味噌で書いたら設定の破たんから読者に突っ込まれまくるから、ここはふわっと流す感じで書いておくよ。簡単な話、平凡な日本人だったくせに、内政チートしてたり、農業チートしてたり、軍備チートしてたり、インフラ整備してたり、いろんな凄い方々から信頼を勝ち取ったりしてたんだよ。これ書いてて鼻くそほじっちまった。もう主人公がどっかの空き地買い取って独立すればいいのでは? どうせ次男なのだから大金積めばいけるでしょ、とか思ったけど似たような理由で主人公に自治区を持たせる小説が最近増えてきてるからな、笑えねーよ。


 笑えるぐらい有名になった主人公は魔法学校でも目立つだろうね。そこで主人公は言うんだ、「目立ちたくない」ってね。僕としてはこれ以上この主人公が良い思いする描写を書きたくなくなるね。もしもこんな小説を誰かが書いていて、「ここからは貴方が代筆してください」と言われれば、僕なら「ミスミソウ」と「隣の家の少女」を足して割ったような内容にしてやりたいけど、そういうのは読者ウケしない、ああ知ってるよクソッタレ。いっそファンタジー世界に宇宙人が攻め込むSF物として無理やり軌道修正すれば一定層にはウケるけど、それは別のサイトでやれと怒られそうだ。テンプレぶち壊しだもんね。


 このファッキンな主人公は学園内で禁止されている決闘なんかしちゃうんだ、当然勝つんだろうね、この時点でハーレム12人には増えてるかな? もう勝手にしてくれ、できればそのまま性病になって苦しめ。カンケーないけど、学園編でエタる作者が多いのは知ってるかい? これ、実は原因があるんだ。バッサリ言っちゃうと、この辺りでテンプレのストックがなくなってしまうんだよ。学園編なんてテンプレの塊に見えるのに、不思議なことにね。学園編までにある程度のキャラが登場して、物語が進行している。言い換えればそう、作者の色や味が濃くなってしまったんだ。テンプレっていうのは、物語が無色透明な時期は効果的な指標になり得る、しかしだ、何十本もの「物語的な分かれ道」が出来上がってしまうこのタイミングで、テンプレでいいように進んでいたこの物語が、初めて意思を持ち、そして作者に訴えかけてくるんだ、「これからどっちに進めばいい?」と、だからさ、テンプレのみに頼っていた作者は、ここでテンプレを捨てる事になるんだ。


 テンプレという「安定して面白い話を提供してくれる地図」を失った作者は、小説を書くという事の真の恐ろしさにようやく気付くんだ。だけど諦めるにはまだ早い、普通の小説書きにはできなくて、この小説投稿サイトならではの、起死回生の手札が残されている。オリジナリティなんか無くていい、ハーレムならもうなんでもいい、「小説更新してくれりゃもうなんでもいい!」な読者をガッチリわし掴みにする方法、それは。



次回【テンプレハーレムから王道ハーレムへ!!~魅惑の学園編、かわいい娘はだいたい俺の嫁~】

安定して面白い王道ファンタジーを踏襲しつつハーレムを構築する。物語の中心はハーレムにあり!



 やったぜ!このクソッタレ!


こんな小説たちでも、このサイトからきれいさっぱり消えたら、それはそれできっと、寂しく思うんだろうね。足りているからこそ、今の現状に物足りなくなっている、贅沢なんだよ、僕っていう奴ぁ。

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