始まりはドラマの様に
暗闇に光る猫の瞳のようにまん丸の月が浮かぶ空の下、時刻を考えない大声の聞こえてくる店があります。
その名も駄菓子屋『みつや』。
「はんにんは、あなただ。」
えっ、わたし?突然態度の大きな男に指差され、神崎のおじさんこと神崎次郎はびっくりしてしまいました。
そしてパニック状態に入ったおじさんは、
「な、なな、何を根拠に、そっそんなことを、おっしゃるのですか?そこまで自信をもって言われるからには
何かし、証拠を、出していただきましょうか。」
というのに二分もかかってしまいました。
探偵の男はそんなおじさんを冷たい目で見下ろしています。
ごまかしは通じない、とおじさんが観念して自白しようとしたところで、テレビの画面が切り替わり、顔面蒼白で泣き崩れる男の姿が大写しにされます。
おじさんは、自分が飼い犬のミケのおやつのまんじゅうを盗み食いしたことがバレていないことがわかり、ほっと一息つきました。その口の周りにあんこがべったり付いていることに気がつくのは、もう少し後のことです。
「いやー、かっこよかったなあ。」
顔面蒼白で泣き崩れていた男の罪が、探偵のおやつのせんべいを勝手に食べたことだと知り、大笑いした後、おじさんは思いました。
「名探偵って、かっこいいなあ。」と。
こうしておじさんは、自称名探偵の道を歩み始めたのです。