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第一話

―風が枝を揺らし、薄く色づいた花弁を空へと舞い上げていく。


その様子を見上げながら、彼女は愁い顔を隠しもせず、木の下に座り込んでいた。


校庭では、部活に励む生徒達の声が響いている、その声も校舎裏のこの場所までは届いてこない。

まるでこの場所だけ切り離された空間のようだ。

青空に舞う雪のような花弁、それが地面に降り積もり、まるで絨毯のようだ。

美しいと感じる景色に心を和ませながら、雪華セツカは、瞳を閉じた・・・


唯一、安らげる場所・・・この大切な時間を壊されたくない・・・だが、それも叶えられることはないだろうことも解っていた。


自分は解っていながら何故、この場所に来てしまったのか・・・

避けて通ることの出来ない未来、同じ事が繰り返される日々から開放される時がくるのだろうか。


それだけが、そのことだけが・・・わからない・・・・



小石を踏みしめる音がする。

それは、安穏とした時間ときを終幕へといざなう、足音だったのかもしれない―



*****************


「ねえ、ユキ!」

「きゃっ!?」


後ろから友人の麻子が飛びついてきた、覗き込む瞳は隠しきれない好奇心み満ちている。

この友人は何度言っても自分ことを「ユキ」と呼ぶ、「セツカ」では他の人と一緒で嫌なのだそうだ。


「やっぱり行くの?」

「だって行かなければ失礼だし・・・でも、物好きよね」

「はあ~相変わらず真面目だね。それに自分のこと解ってないし・・・。あんな人気の無い場所、ほいほい行くんじゃないっ!行かなきゃソレが答えになるじゃないっ」


興奮し、捲くし立ててくる麻子に気後れしながら、言い訳するように口を動かす。


「自分の事くらい解ってるわよ。私はあなたと違って、普通の女の子です」

「なにそれっ私が普通じゃないというわけっ!」

「女性にモテる女は、普通じゃないわ。自分のこと解ってないのは、そっちじゃないの?」

「もおーっ可愛くない!」

「お褒め頂き、ありがとう」

「っ!!」


ふふんっと答える私に、友人が視界いっぱいに迫ってきた。

この辺りで、からかうのを止めないと本気で怒り出すかもしれない。


「まあ~、冗談はここまでにして」

「冗談っ!?また、私のことからかったの!!」


なぜかもっと怒りだした・・・どこで失敗したのかわからない。


「あぁーもう、いいわよ。でも、本当に気をつけてよね。心配してるんだから」


気を取り直した麻子が、手を振りながら、過保護な言葉を呟く。

そんな友人の言葉に苦笑返しながら、自分には「大丈夫」な理由がわかっていても答えられない。


麻子は、苦笑を返してくる友人に「やっぱりわかっていない」と思いながら、そんな顔をしてもやっぱり「綺麗だな」と思う。

腰まで届く絹糸のような黒髪は、動きに合わせサラサラと流れ、夏の制服から覗く白磁の肌は、さらにその黒髪を引き立てている。

黒曜石を思わせる少し切れ上がった大きな瞳、小さな唇は、肌とは対照的に紅を指したような赤色だ。

「美少女」という言葉があるが、まさにそれ以外の言葉では言い表せない顔立ちをしている。


だが、本人にまったく自覚がない、「美少女」らしからぬ言動をして周りを驚かせている。

なぜ、こうなってしまったのか。

普通なら周りが放っておかないと思うが、雪華に高校で出会ったときからこうだった。

何かあるのだろうが、雪華が話さない限り聞き出そうとは思わない。

はあっとため息をつき、雪華に向けて微笑む。


雪華は突然黙り込み、微笑んできた友人に怪訝な顔をしながらも、時間になるといつものように別れの言葉を告げ歩き出す。

麻子は、その後ろ姿を見送りながら、自分も汗を流すため部活に向かうのだった。


この時、二人は知らなかった・・・このときが話をする最後の時間ときだことを・・・・・


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