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狐の嫁入り(3)

 夜、夕飯を食べてお風呂に入った後、僕とキツネは僕の部屋で一緒に勉強をしていた。とはいっても、僕が一方的に教えてばかりではあったが、しかしそれも、この町へ来てキツネと仲良くなってから、変わらない事だ。

「ねえアキナ」

 ちなみに、ネコは参加してもすぐに僕の布団で寝てしまう。ツルさんは案外豪快な人らしく、分からない部分を空白のまま、それも半分ほどは空白のままにして提出してしまう。あの人を完璧と称した事は、そういう意味ではとんだ間違いだ。ツルさんの勉強に対するスタンスは、僕のような凡人に理解出来るものではない。毅然として間違いをほったらかすって、一体何を目指して何と戦っているのだろう。

「少し話がしたい」

「そっか」

 僕が力になれると思っていなかったけれど、僕が力になれるのならば、僕が何かを出来るのならば、喜んで力になろう。

「じゃあさ、上に行かない?」

「上?」

「そう。屋根の上」

 そうして僕たちは、屋根の上へと上がった。僕は一度ここに上った事があるけれど、それは、この町へ来てすぐ、入学式の前日だった。大天狗先生と一緒にここに居て、星空の下、僕はなぜ自分がここにいるのか、その話を聞いたのだ。こうして見ると本当に、もうずっとこの町に居たような、そんな錯覚を覚えるけれど、まだ一学期が終わっただけなのだ。

「屋根の上なんて、初めて上がった」

「落ちないようにね」

 キツネは、初めて上がる屋根の上に少し、及び腰になっているようだった。高所恐怖症では無いのだろうけれど、多分、足元がおぼつかない状況が苦手なのだろう。ちなみに、僕も平気な顔をしているが、実はそういうのは苦手だ。

 昔は、ジャングルジムが駄目だった。自分で握っていて、立っていても、落ちるのではないかという想像が僕を襲ったのだった。どうでもいい話だ。

「今日は星が出てる」

「うん。やっぱりこの町は星が良く見える。慣れてしまったような気がしたけれど、こうして見ると、やっぱり綺麗だ」

「ふうん………」

「この町の外だと、半分も見えないよ」

「そうなんだ」

 この町に来ていろいろな事に気がついたし、今まで見えなかっただけで世の中にはもっと多くの物が存在している事を知った。こんなに多くの星が空には隠れていた事を、僕はこの町に来なければ理解する事は無かっただろう。だからこそ、その体験は鮮烈で、他の多くの物の奥に何かが隠れている事を、僕に気付かせたのだ。

 もしかしたら、大天狗先生が話をするときに、僕をここに連れてきた事は、僕にそれを気付かせるためだったのではないだろうか。実際には、僕はそれ以前にその事に気がついていたので、その辺りが大天狗先生らしいと言えば、大天狗先生らしいのだろう。あの話自体、入学式におけるたぬきおばさんの衝撃を前にして、影に隠れてしまっているのだし。

「アキナはこの町の外にやってきて、いろいろな物語を知っているんだよね?」

「言うほどは知らないけれど、有名どころは知っているよ」

「じゃあ、私はどういう存在だと思う?」

 キツネ。

 今僕の横で、屋根の上に腰かけて星を見ながらこんな話をしている彼女。この町で最初に出来た、僕の友達。しかし、僕は彼女の物語を知らない。ネコは迷子の子猫で、ツルさんは鶴の恩返し。

 ならば、キツネは?

「私はね、アキナ。人が思い描く悪女の結晶なんだよ」

「悪女?」

 キツネに対して、全くそういうイメージはなかった。

 しかし、狐の話とはそういうものなのではないだろうか。人を化かし、惑わせる。女狐なんて言葉があるからこそ、それは女性的でもある。

「男の人を惑わせて、利用して、破滅させる。そういうイメージの結晶。尽くすふりをしてだまし、愛するふりをして騙す。それが私。偽って、騙して、何も残さない。時代に合わせて姿を変え、形を変え、それでもその在り方だけは変える事のない、敵意をもたない悪意の塊」

 だから偽物。

 だから、キツネは例外なのだ。旧式でありながら、常に時代の最先端でもある。分化することなく、積み重ねられた概念。

「猿が人間のなれの果てだって話は、もう聞いた?」

 うん。

 ああはなりたくないと、そう思ったものだ。

「あの人たちがああなったのは、私のせいなんだって。私がたぶらかして、堕落させて、騙して、偽って、そしてあの人たちは人間ではなくなった」

 猿は、人間に近いから。人間から理性を取り払ってしまえば、非力な猿に過ぎないのだから。

「だから私は、あなたに会ったその日に、あなたをそうしてしまおうとした」

「………もしかして、わざとだったの、下着姿?」

「そう」

 でも、それは結局上手くはいかなかった。僕の方が悲鳴を上げて、キツネが誘惑するよりも前に、キツネを怒らせてしまったから。

「本当に、本当に信じられない。特別でもないのに、普通では無かったなんて。人の下着姿を見て、悲鳴を上げるなんて」

 信じられない。

 キツネはそう言った。

 どうやら今でも、あの時の事に対して思う所があったようだ。

「本当に腹が立ったから、せめてこの家に居たくないと、そう思わせてやろうと思ったわ」

「それにしては、やり方が可愛かった気がするけれど」

 本気で、僕がこっくり荘に居たくないと、そう思わせたいのならば、もっと何か出来たはずだ。人を化かす狐ならば、あの程度の事ではあまりにも手ぬるいだろう。

「嫌がらせをして、無視をして、それでもあなたは気にしていないようだった。無神経に人に声をかけて、何とか友達になろうとするばかり」

 そうして、猿がやってきた。

「あの日私があんな醜態をさらしたのは、別に裸を見られてからではないの。だって、下着姿で誘惑するくらいだから。あの日あんな醜態をさらしたのは、私がどんなに醜い存在なのか、あの猿たちがわたしに教えたから」

 狐は人を堕落させ、惑わし、騙し、何一つ残さない。そんな事を知ることも無くそうしようとしていたキツネは、事実を突き付けられて、自分を知った。

 堕落させて、騙して、何一つ残さない存在は、本当に愛される事はない。

 愛は、永遠だから。

 愛された存在は、愛した存在は、ずっとそれを忘れないでいられる。

「私が生まれたのは、あなたが生まれたのと同じ年で、間違いなくわたしが堕落させようとしたのはあなただけだった。けれど、私以前の私は、数多くの人間を騙してきた」

 猿たちは人間に近いから、それを見ていて、覚えている事が出来る。そしていつの日か、自分自身もまたかつて人間であり、何が自分を堕落させたのかを、知る。

「私がそれを知らなかったのは、本当に愛された事がないから。お父さんはお母さんが人間だった事を覚えていて、それは、本当に二人が愛し合っていたから」

 それは、残酷な現実だ。

 それしか知らなかったキツネは、自分が何も残していない事を、自分が何も残せない事を知った。何も残さず、何も成さず、ただひたすらゼロからやり直し続ける存在。それは、人がいたとしても、生きているとは言えない。人が回す物語の中で、ただ一人、意思をもたない歯車と変わらない。

「そしてあなたは、私のために猿に立ち向かった」

 実際に立ち向かったのは、大天狗先生とたぬきおばさんだ。しかし、それだって、僕がそう決めなければ、僕がそれを選ばなければ、そうならなかった。

 僕は無力だったけれど、無意味では無かった。実感はなくても、こうまでいろいろな事が身の回りで起こってしまえば、何となく理解できる。人が見ていないと、人が手を差し伸べないと、人が動かないと、物語は動かない。人がいないと、物語は始まる事ができない。

「その理由が、私には分からなかった」

 多分それには、理由が無かった。理由は要らなかった。

「理由は分からなかったけれど、今でも理由は分からないけれど、それでも、自分のために怒ってくれた事が、嬉しかった」

 誰かが何かをしてくれる事は、嬉しい。

「だから私も、これからそうしようと思った」

 嬉しいから、相手にも嬉しく思って欲しいから、相手に何かをしてあげたいと思い、願う。

 ああ、これもまた、一つの物語だ。ありふれていても、誰かがそう願い、そう思う事は、物語の王道だ。思いやる心は、誰だって抱く事が出来るから。

「あなたに嬉しく思って欲しかったし、あなたに幸せを感じて欲しいと思った」

 だから、たぬきおばさんを手伝って料理をした。

 きっとそれだけが、キツネの知っている、純粋な行為だったのだ。相手を思いやって料理をしていたたぬきおばさんを知っていたから、だから、僕のためにそれをしようとした。

「最初は上手く出来なくても、あなたは喜んでくれた」

 人に思いやられる事は嬉しいから、僕は嬉しかった。人にやさしくされる事が、僕は純粋にうれしかった。まるで自分も、家族の一員であるような、そんな気がしたから。ありきたりな毎日は、僕には眩しいばかりだった。

「そしてあなたは迷子の子猫を拾った」

 その出会いも、キツネとの出会いと変わらない。物語の始まりは、人がいなければならない。ネコに出会うのは、僕以外には居なかった。だったら、迷い続けるかもしれなかった迷子の子猫を拾う事は、決して悪い事ではない。

「あなたへの好意を隠す事がないネコに、嫉妬した」

 真っ直ぐに、寂しがりな人間の傍に寄り添うネコは、嫌いなものにはあっさりとその烙印を押す。傍にいること自体、ネコにとっては好意を示し続けているという事だ。

 嫌いな人間の布団で、眠ったりなんかしない。

「あなたに恩返しをするためにツルさんがやってきた」

 誤解の末に、話の腰は折れたけれど、それがあったからこそ、今ここに彼女はいる。別れはいつだって辛いものだから、一緒にいる事の出来る現実は、決して悪いものではない。彼女にとってこの毎日が幸せなものならば、決して悪いものではない。

「あなたのために何でもできるツルさんに、嫉妬した」

 キツネがやりたかった事は、ツルさんが出来る事だった。誰かのために何かをする事は、ツルさんにとって当たり前だった。

 それは。誰かに何かをさせる事がルーツだったキツネとは、正反対だ。

「あんな風になりたかったけれど、あんな風にはなれなかった自分に、絶望した」

「そんなの………」

「私はツルさんじゃないし、ツルさんにはなれない。けれど私は、ツルさんのようになりたかった。私が持っていた私は、今の私にとって、要らないものしかもっていなかった」

 愛されるよりも愛したい。本当に生きているのなら、その証が欲しかった。

 何かを目指し続けた偽物は、本物を前にして挫折して、膝をついてしまった。

「こんな事をあなたに言っていること自体、以前の私と変わる事のない、偽りからくる行動なのかもしれない」

「それは、それだけは、そんな事はない」

 僕は言った。

「誰かのために何かをしたいのは、僕だって同じだよ。

 キツネの知らない今までのキツネが、たとえ、キツネが言うような、猿が言うような存在だったとしても、それはもう、昔のことであって、過去の事であって、何一つ残さなかった、終わってしまった物語だ。

 何一つ残らなかったとしても、そこに物語があった事だけは消えない。たとえ本当に愛してこなかったとしても、愛されてこなかったとしても、今僕は君を大切だと思っている。大天狗先生も、たぬきおばさんも、ネコも、ツルさんも、君を大切に思っている。

 キツネが本当に、なりたい自分にはなれなかったとしても、キツネがしてくれた事が、僕は本当にうれしかった。作ってくれるお弁当が、本当にうれしかった。

 だから………」

「だから、これからも大切に思ってくれる?」

 キツネは、自嘲するような顔で、僕の言葉をさえぎって、そう言った。

「私があなたの幸せを、今まで奪っていたとしても、そう言える?」

「なんだよそれ。どんな事があっても、何があったとしても、そんな事はないよ」

 奪われたものなんかない。奪われていた物なんかない。

 僕は幸せで、だからこそ、キツネを大切に思っている。キツネが何かを奪う存在だったとしても、今のキツネにそんな事は関係ない。

「あなたの両親をわたしが奪っていたとしても、そう言える?」

「いや………意味が分からないよ。奪うも何も、僕の両親は、僕の本当の両親では無かったし、僕の妹ではなかった妹の両親だったんだ。奪われる以前に、僕に両親なんていない」

「どうしてあなたがここにいるのか、あなたがどうしてこっくり荘で暮らしているのか、あなたがどうしてこの町に呼ばれたのか、考えた事がないわけではないでしょう。この町に来るときに、自分の本当の両親が迎えてくれる事を想像しなかったわけではないでしょう? そして、だからこそ私は、あなたを堕落させてしまおうと思った」

 自分の家族を、守るために。そんな身勝手な事を思ったのだと、キツネは言った。

 僕の本当の両親が僕を迎えてくれる想像を、僕もしなかったわけでは、無い。キツネを自分の妹と疑う程度には、想像して、期待していた。

「でも、あり得ないだろ」

「何が?」

「だって、たぬきと天狗から人間が生まれるなんて、そんな事」

「人が猿になるのなら、たぬきになってもおかしくない」

 あり得ないとは言えない。

 たぬきおばさんのルーツ。それを想像しても、思いつかなかったけれど。

 狸と天狗からキツネが生まれるよりも、人を産んだ母親が狸になる方が、あり得るのではないだろうか。

 げんこつ山の狸さんには、母親がいた。母狸のルーツがそこにあっても、おかしくなんかない。女の天狗は、まだ存在していないから、キツネを足して、こっくりさんの家族になった。

 だとしたら本当に、僕は、本当にここにいるべきだったのかもしれない。

「私が、あなたの両親を奪っていた。今だって奪っている」

 僕を堕落させる事に失敗して、逆に僕の事を大切に思ってしまった。だけど、僕は何一つ気がつかなくて、結果的にキツネの目的は果たされ続けてしまったのだ。キツネの家族は、守り抜かれて、僕の家族が奪われ続けている。

 僕は、何を言うべきなのだろう。

 そんなものはいらなかったのだと、そう言えるほど、僕は強くない。ネコが寄って来る程度には、寂しい人間だから。後から思えば、自分が孤独であったと気づくべきだったと思う程度には、愛されていない人間だったから。

 でも、今は、それでも今は違うのではないだろうか。寂しい人間で、孤独な人間で、愛されていない人間だったけれど。

 キツネと同じように、キツネと出会うまでそんな人間だったけれど。キツネと同じように、今は違う。

「奪われてなんかいないよ」

 僕は言った。嘘偽りなく、思ってもいない事を言わず、率直に思っている事だけを、ただキツネに、自分の意思を伝えるために。

 今までも、今だって、奪われてなんかいない。

「大天狗先生はキツネのお父さんで、たぬきおばさんはキツネのお母さんだ。本当の親子じゃないなんて、最初に会ったその日に気がついたけれど、僕はそう思ったんだ。

 本当に、大天狗先生とたぬきおばさんが僕の両親だったとしても、今はもうそんな物、君にとっての君のルーツと同じ、僕にとって要らなくなったルーツなんだ。僕は確かに寂しい人間で、孤独な人間で、愛されていない人間だった。それでも、そんなものは、この町に来て、入学式の前日に君と友達になった時から、満たされてしまっているから。

 寂しくないし、孤独じゃないし、キツネが思いやってくれている。大天狗先生も、たぬきおばさんも、ネコも、ツルさんも、思いやってくれている。皆に僕も何かをしてあげたいと、そう思えるようになったんだ」

 誰かに何かをしてもらうと嬉しくて、だからこそ、誰かに何かをして嬉しく思ってもらいたい。幸せは、一人では持ち切れないから。本当の両親がどうとか、そんな事実が今更出てきたとしても、そんなのはもう、活かしきれない設定のように、余計なものになってしまった。

 大天狗先生は大天狗先生であって、父親ではない。たぬきおばさんもたぬきおばさんであって、母親では無いのだから。

 奪われるまでも無いし、今までだって奪われてなんかいなかった、この町に来るまでは、育ててくれた人を本当の両親と信じていて、それだけで満たされていたから。

「キツネはツルさんでは無くても、それでも僕にとって、この町で最初にできた友達だ。それだけは、この先誰に出会っても変わらない。どんなにツルさんの作ってくれるご飯がおいしくて、僕がどんなにツルさんに感謝していても、キツネが作ってくれたお弁当が嬉しかった事は変わらない」

 キツネのために何かをしたいと願った事が、変わったことなんかない。大切だと思えるものを見つけたから、それを守っていきたいと思った事は、この先ずっと変わらない。

「キツネが僕の両親を奪っていたなんて、そんな事は筋違いだし、たとえそうであったとしても、僕がキツネを大切だと思う事は変わらない」

 大切にして欲しいなら言われるまでも無く大切にしているし、思いやって欲しいなら今だって思いやっている。愛して欲しいのなら、嫌というほど愛してやったっていい。出会った瞬間から、一目惚れしているようなものなのだから。

「本当の、本当に?」

「本当に、本当だ」

 指切りしたって構わない。

 誓うような神様なんて持っていないから、もしもキツネにそんな物がいるのなら、それに誓ったって構わない。まあ、キツネにそういう風に思われるその神様に、嫉妬しないとは言えないけれど。

「君が僕を大切に思わなかったとしても、僕は君を大切に思っている」

「私があなたを大切に思わないなんてことはあり得ないけれど、そうだったら嬉しい」

 小指と小指を絡めて、指切りをするように。手と手を繋ぐには、僕たちの関係はまだ早すぎるから、そうして、僕たちは誓いあった。

 僕の知らない今までのキツネが、どんなに偽りで、堕落して、嘘ばかりの愛されていない存在だったとしても。何一つ残してこなかった存在であったとしても。

 それでも、僕たちのこの誓いに、偽りも嘘も存在していない。この先僕たちが何一つ残すことが無かったとしても、この誓いだけは残るだろう。

 僕のこれまでの人生は、確かに寂しくて孤独で愛されていなかった。けれど、そんなものは今となっては、意味がない事だ。もしもこれまでの人生が、こうしてキツネと出会い、弧狗狸荘に住んで、大天狗先生や、たぬきおばさんや、ネコや、ツルさんと出会うためにあったというのなら、それだけで十分だ。

 その後この事は、あまりぺらぺらとしゃべる事ではない。僕たちはしばらくその場で、普通の友達がそうするように、当たり前の事を喋って、そうして屋根から降りた。

「おやすみ」

「うん、おやすみ」

 今日、僕たちの関係が何か変化したわけではないけれど、そのつながりは強くなった。キツネの悩みが解決したのかどうかも分からないけれど、少なくとも、キツネの抱いていた罪悪感のようなものは和らいだのだろう。

 そして、僕たちがお互いに抱いていた、自分の立場に対する漠然とした不安感もまた、和らいだのだろう。

 多分今は、それが精いっぱいで、それで十分だ。



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