「マイ・ブラザー」
今日も仕事の休憩時間に映画を観ました。
巨匠ジム・シェリダンの新作「マイ・ブラザー」です。
素晴らしい作品でした。これも今年のベストワン候補です。
オチなどを楽しむ作品ではないのですが、あまり核心のことは書かないようにします。
ジム・シェリダンは日本ではそんなに有名ではないのですが、ダニエル・デイ・ルイスを発掘した「マイ・レフト・フット」、ジャイモン・フンスーを発掘した「イン・アメリカ」など発表作はアカデミー賞はもちろん、映画関係者からは非常に高い評価を受けており、新作も今までの総決算的な傑作でした。
ただ、アメリカの最近の戦争を全面的に否定・批判した内容なので、一切の賞はノミネートもされていません。(去年でいうと「縞模様のパジャマの少年」もそういう傑作でした。)
しかし、素晴らしい作品です。
「スパイダーマン」のトビー・マグワイア、「スターウォーズ」のナタリー・ポートマン、「ブロークバックマウンテン」のジェイク・ギレンホールと、比較的若い役者で、演技に定評のある三人のアンサンブルが美事!
軍人で英雄である兄、劣等感の塊の弟、そして兄の妻と幼い娘たち。ところが、兄が中東の戦争で死んでしまい、弟は兄嫁とめいたちのために尽くし、初めて生きる意味を感じ、遺族たちは弟の優しさで再生していきます。
ところが、そこで死んだとされた兄が生存していたと分かり、帰ってくるのです。三人はどうなるのでしょうね?(淀川先生風)
感心したのは子供の描き方。ジム・シェリダンの作品は子供の目に映る大人というのが一つのキーワードなのですが、子供は決してキレイ、可愛い存在でなく、時に大人を激しく批判し、大人の幸せを脅かす存在です。その人間への眼差しがすごい。そしてそれがかなりきついことを描きながら下品にならない気配りの行き届いた演出が素晴らしい。
ジム・シェリダンのもう1つのキーワードは狂気なんですね。しかし、それはサイコサスペンスみたいなあおるものじゃなく、やっぱり描き方が巧妙を極めているから観ていると本当に手に汗を握ります。トビー・マグワイアが戦場から狂人になって帰ってくる兄を演じているのですが、鬼気迫るものがあります。どこがどうと言うのは難しいのですが、例えば深夜、トビー・マグワイアが眠れずガラスのコップを何度も何度も食器棚に置いたり、出したりしているのがじんわり怖い。
最後がハッピーエンドか否かは是非、劇場で観てみて下さい!
緊張感の途切れない作品で、全く飽きが来ませんでした。エンドロールが終わるまで一人の観客も席を立ちませんでした。