文学とブーム
文学も人間の営みで、社会の一部だから、実はブームというものがある。
私が大学生のころ、十数年前はミステリーブームだった。
その時はそのジャンルに力のある書き手が集まり、文学史の中でも意味がある現象を残した。ここは一冊の本になるぐらいだが、端的に言うと、芥川賞と直木賞の間の差がなくなった。純文学と大衆文学という枠組みがかなり無効になった。
デビューの順番などははっきり分からないので、おおざっぱなまとめ方になるが大沢在昌、宮部みゆきらはミステリーなのに純文学より人間がしっかり描けていると評価された。
またさらに天童荒太、桐野夏生らは一歩進んで、ミステリーという枠を広げ、現代社会の深刻な問題をミステリーの形を借りて描いたと評価された。
ところが、ブームの渦中で彼らがそれほど評価されていたかと言うと、少しためらわれる。
またブームに便乗する出版社、編集者、評論家は多かったが、彼らの横暴さはひどかった。
しかし、ブームというものが終わってみると力のある作家はちゃんと残っているし、尻馬に乗っていたものは面白いようにいなくなっている。
今のライトノベルのブームというのはかなり長く続くかも知れないが、やはりいつかは終わるだろう。
それでも本当に力のある人はそのジャンルを続けて残っていくし、便乗しているだけの奴は何か新しいブームに去っていくだろう。
私自身は何のブームが来ようと、自分の好きなことは大事にしつつ、ブームからの刺激も大事にし、何かを書いていけたらいい、と思う。