困った(-_-;)
困った(-_-;)
生徒の休みが終わり、私は入れ替わりに休みモードで映画を観ております。
しかし、今日、観た作品は意外な秀作でびっくりしました。
とにかく観て欲しいのですが、今回は普通の善男善女が「えっ?」と思うような作品です。
内容が反社会とかではなく、アイドル映画だからです。AKBというグループの小野恵玲奈という子が出ています。
今回は何の賞もレビューもない作品なので、敢えて本格的に論評します。
「さんかく」という日本映画です。
東京で暮らす若いカップルのところに女の子の妹が来て、三角関係になる。こうまとめると面白くなりそうにないのですが、意外や意外、すごく面白かったのです。
成功のカギの一つはキャスティングとキャラクター作りです。
若いカップルの役は高岡蒼甫と田畑智子。ハッキリ言うとあまり美男美女じゃないけれど、演技に高い評価のある人です。これはほめる意味で言うんだけど、何か不幸とか貧しいという設定で輝く二人です。
始まって五分か十分ぐらいでアイドル映画としては変!とざわざわし始めます。高岡蒼甫のキャラクターが秀逸で、痛い車(痛車)に乗っていて、性格も悪い。そんな男しか相手にしてもらえない田畑智子の焦燥感がギリギリ伝わってくる。
そこにふらっと中学生の妹がやって来て、ダメ男はすぐ妹を好きになり、三人の力関係や精神のバランスが危うくなっていく。
ここでのアイドルの女の子が演技が上手い訳ではないですが、非常に存在感が素晴らしい。思春期の女の子の目の前の相手でくるくる人格が変わってしまう特徴を非常に上手く表している。すごい!
この後はよさそうだなと思った方は読まずに観て欲しいのですが、
結局、妹が田舎に帰った後、ダメ男は妹にストーカー行為を始め、姉はダメ男にストーカー行為を始め、非常に怖いサスペンスになっていきます。この辺、去年のアイドル映画「おと・な・り」でも岡田准一と麻生久美子のラブストーリーと思ったら主要キャストに狂人がいて、急に日常がねじまがるのですが、収拾も下手だった。それに比べるとはるかに上手く、手に汗を握ります。
ただ作品をホラー、サスペンスと宣伝しなかったのはすごくよかった。理由は後述しますが主要キャストが最後救われることを強く願いました。そして救われるハッピーエンディングです。
もう一つ、この作品が成功したのは、都会の若者の生活の描き方もすごく上手かった。日本の映画監督は大貴族出身で生活なんか描かず幻想に溶かしこむか、逆に極端に貧困を描くか、二極化しがちです。文学もそうです。前者は谷崎潤一郎、三島由紀夫などです。後者は松本清張や井上ひさしです。ところが、この作品では都会の若い子の慎ましい、でもちょっとギリギリした感じがよく描かれています。だから、この子たちが救われて欲しいと思えるのです。
最後の成功のカギは偉大なフランス文学を彷彿とさせるところがあります。子供の純粋さが大人社会を破壊するところはジャン・コクトオの「アンファンテリブル」フランソワーズ・サガン「悲しみよこんにちは」のよう。世界の崩壊の仕方はアルベール・カミュの「異邦人」
監督はその辺り、意識的にシナリオを書いたのか、無意識なのか。無意識の方が面白い。私ぐらいまでの世代はやっぱり名作は読んでおきたいという意識があったので、読んだのかもしれませんが、限られた時間と予算がサガンやカミュのような作品を作らせたと考える方が何か面白い。そう思いました。
頑張って論評を書きましたので、是非、ご覧下さい!